定住圏(読み)ていじゅうけん

改訂新版 世界大百科事典 「定住圏」の意味・わかりやすい解説

定住圏 (ていじゅうけん)

1977年11月に閣議決定した第3次全国総合開発計画(三全総)は,〈大都市への人口と産業の集中を抑制し,一方,地方を振興し,過密過疎問題に対処しながら,全国土の利用の均衡を図りつつ,人間居住の総合的環境の形成を図る〉ための方式定住構想)を打ち出した。そして81年度から,定住構想の具体化である全国40地域のモデル定住圏の計画がスタートした。これは,新全総(新全国総合開発計画,1969)にも含まれていた広域生活圏形成の考え方が,時代の要請に従ってクローズアップされた構想ともいえる。また国土レベルでの定住圏域の新しい考え方として〈流域定住圏〉を提言し,都市・農山村を含む一つの流域を広域生活圏として取り上げたことも特徴である。

 定住圏に先立つものとして1969年以来,自治省の指導により始められた広域市町村圏は,全国2947市町村を336圏域に再編した。そして,生活の均質化・都市化の全国的拡散に対応しにくくなった生活圏の立直しを図って成果をあげた。それは,国土面積の93%,35.4万km2に及び,全国的な生活の均質化・都市化に対応した国土レベルでは初めての新戦略であった。とくに,広域市町村圏事業のなかでの道路整備費の比重は高く,70年以降は連続して50%以上を占め,世界でも有数の道路ネットワークを整備した。そして,81年には1世帯1台を超えるマイカーが国土の隅々まで走りまわった。しかし,国土庁は第4次全国総合開発計画作成の過程で,84年6月,従来の成長社会を失速させる異常な高齢化社会の到来を予告し,広域市町村圏の成果を踏まえて,〈人生80年の時代〉に即した生活圏の仕組みの変革を急ぐべきだと警告した。定住圏のテーマは,高齢化社会に生きる市民たちの,息の長い生活設計が可能になるような身近な社会制度をどう作り上げるかが焦点となってきた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「定住圏」の意味・わかりやすい解説

定住圏
ていじゅうけん

1977年(昭和52)に策定された定住構想を具体化するために考えられた生活圏のこと。都市、農山漁村を一帯として、山地、平野部、海の広がりをもつ圏域で、全国はおよそ200ないし300の定住圏からなる。新全国総合開発計画(新全総)で強調された「広域生活圏」ないし自治省(現総務省)の「広域市町村圏」にほぼ対応している。第三次全国総合開発計画(三全総)においては、まず生活圏のもっとも基本的な単位として、50ないし100程度の世帯からなる「居住区」を考え、これが複数集まってコミュニティの基礎となる「定住区」が形成され、さらに定住区が複合して「定住圏」を形づくるとされた。モータリゼーションと情報化の進展が生活圏を広域化させつつある。政府はモデル定住圏として40圏域を選定したが、その平均人口規模は25万人で、整備の基本方向としては、就業機会の拡大、教育・文化の向上、健康・医療の確保が強調されている。

[伊藤善市]

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世界大百科事典(旧版)内の定住圏の言及

【地域開発】より

…公害反対を中心とする住民運動,地価高騰そして石油ショックが,この巨大開発の進行を止めた。(4)定住圏開発方式 過密過疎問題の深刻化や公害の多発は,国民の目的意識を成長から福祉へとかえた。〈地方の時代〉や〈文化の時代〉といわれるように,人口の地方への定着が始まり,自然や歴史的環境と共存する経済の発展が求められるようになった。…

※「定住圏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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