官話(読み)かんわ(英語表記)guān huà

精選版 日本国語大辞典 「官話」の意味・読み・例文・類語

かん‐わ クヮン‥【官話】

〘名〙
① かつて中国で、官界上流社会に用いられていた標準語、公用語北京および北方諸省の北京官話南京および江蘇江西安徽省の南京官話、湖北湖南四川省西方官話の三種がある。北京官話が最も流通しており、現在の共通語の母体となっている。
風俗画報‐八八号(1895)漫録「尚満語を用ひて官話(クヮンワ)を用ふること甚だ稀なり」
② 一般に、公用語、標準語のこと。
国語のため第二(1903)〈上田万年〉内地雑居後に於ける語学問題「其外国語が〈略〉所謂官話とならんとする趨勢なるにもかかはらず」

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デジタル大辞泉 「官話」の意味・読み・例文・類語

かん‐わ〔クワン‐〕【官話】

官衙かんがで用いる言語の意》かつて中国の官界・上流社会で用いられた標準的言語。北京ペキン南京ナンキン・西方の諸官話がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「官話」の意味・わかりやすい解説

官話 (かんわ)
guān huà

中国語の中で,比較的広範囲に通行した北方語,とくに北京語をかつて官話と呼んだ。ときには北方諸方言をあわせて官話と呼ぶ場合もある。17世紀に華南に渡来した宣教師が,土俗の方言のほかに役所での公用語など,当時の北方共通語を〈マンダリンMandarin(官話)〉と名づけた。

 清朝になると漢民族を征服した満州人は首都北京のことばをならい,それを官話としてその普及をはかった。華南の各地に〈正音書院〉を立て,《正音摂要》《正音咀華》などの手引書がつくられた。民国に入ると,国語運動がおこり,官話にかわって〈国語〉という名称が生まれるが,北京官話,官話の名称は依然として使われた。人民共和国が成立してからは,北京官話は〈普通話〉へと成長した。

 広義の官話は,現在の北方方言をいい,漢語方言の中では最も通行範囲が広く,使用人口も最も多い。一般には以下のように大きく四つに分ける。(1)華北方言(北方官話) (a)河北,(b)東北,(c)山東,(d)胶東,(e)河南,(f)淮(わい)北。(2)西北方言(西北官話) (a)山西,(b)関中,(c)寧甘。(3)西南方言(西南官話) (a)川貴,(b)湖北,(c)雲南,(d)桂北。(4)江淮方言(下江官話) (a)淮南,(b)皖南,(c)南通
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「官話」の意味・わかりやすい解説

官話
かんわ
Mandarin

中国における官吏の公用語の意味。唐末北宋に現在の北京官話の祖型をとり,金元の北京首都時代を経て広まった共通語に,明清時代につけられた名称である。のちにクオユー (「国語」) ,さらに現在ではプートンホア (「普通話」) と呼ばれるようになったが,官話の名称も外国人の間などで依然使われることが多い。漢語地区の4分の3,人口の 70%を占める官話音系は次の4つに下位区分される。 (1) 北方官話 (河北,河南,東北三省,山東,内モンゴル) 。 (2) 西北官話 (山西,陝西,甘粛,青海など) 。 (3) 西南官話 (湖北,四川,雲南,貴州など) 。 (4) 下江官話 (安徽,南京,揚州など) 。 (2) と (3) をまとめ,3分することもある。-p,-t,-k,-mの消失,濁音声母の消失,韻母の単純化,軽声の増加などを特色とする。中国語標準語の根幹をなす北京官話は,さらに,r化,そり舌化の現象が目立つ。

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百科事典マイペディア 「官話」の意味・わかりやすい解説

官話【かんわ】

北京官話

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普及版 字通 「官話」の読み・字形・画数・意味

【官話】かんわ

公文書の用語。

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