官窯(読み)かんよう

精選版 日本国語大辞典 「官窯」の意味・読み・例文・類語

かん‐よう クヮンエウ【官窯】

〘名〙 中国宮廷御用窯。宋代のものが、最もすぐれた作品を焼出して有名。狭義には南宋時代のものをいう場合も多い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「官窯」の意味・読み・例文・類語

かん‐よう〔クワンエウ〕【官窯】

中国で、宮廷で用いる陶磁器を製造した政府陶窯。また、そこで焼いた陶磁器。狭義には、すぐれた作品の多い宋代の青磁をさす。日本では江戸時代藩窯がこれにあたる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「官窯」の意味・わかりやすい解説

官窯
かんよう

政治支配者が築いた陶窯。殖産興業を目ざす官窯と、高級な美術性の高い宮廷御器(ぎょき)を焼造する官窯とに大別される。陶業がもっとも進歩した中国において、官窯の性格はいちばんよく表れているが、古代の官窯はすべて不詳である。現今、官窯を問題とする場合は、御器を焼く官窯であり、宋(そう)代の官窯が中心テーマとなる。その始源は五代の後周(こうしゅう)王朝の柴窯(さいよう)と目されているが、その実体は不明。大中祥府9年(1016)記銘のある『薛英(せつえい)行程録』には、遼(りょう)の国内に官窯が設けられていたという記事があり、それ以前に開かれていたのであろう北宋の官窯に倣って、遼にも官窯が築かれていたと思われる。北宋官窯窯址(ようし)は不明であるが、南宋時代の官窯は、都のあった杭州(こうしゅう)に開かれた。烏亀(うき)山の山麓(さんろく)に郊壇下官窯が発見されているが、文献のいう修内司官窯址はまだ判明していない。宋代の官窯は青磁窯であったが、明(みん)代になると江西省の景徳鎮(けいとくちん)窯に永楽年間(1403~24)に官窯が設けられて、白磁、染付、色絵を中心として作陶され、清(しん)朝も1680年(康煕19)に景徳鎮に官窯を開いた。朝鮮半島では李朝(りちょう)時代の広州窯(京畿道(けいきどう)所在)が正しい官窯であり、日本では江戸時代になって鍋島(なべしま)藩が築いた大河内(おおかわち)窯をはじめ、各藩の藩窯が官窯にあたる。

[矢部良明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「官窯」の意味・わかりやすい解説

官窯 (かんよう)
Guān yáo

一般に民窯に対するものとしての官窯は,権力者,政府などが管理した陶窯のことで,中国の景徳鎮官窯をはじめ,韓国の広州官窯,日本の鍋島藩窯など,さまざまの性格のものがある。狭義の官窯は,宋時代に宮中の御用品としての青磁を焼いた,いわゆる宋官窯のことで,北宋官窯・汝窯(汝官窯)・南宋官窯(修内司窯・郊壇窯)がこれに当たる。その製品は中国の最もすぐれた青磁として喧伝され,竜泉窯その他でさかんに模倣が行われた。これを受けて鎌倉・室町時代の日本でも官窯青磁が珍重されたが,釉面にひびがあることがその特徴と考えられたことから,官窯が転じて釉のひびを〈かんにゅう(貫入)〉と呼ぶようになった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「官窯」の意味・わかりやすい解説

官窯
かんよう
guan-yao

中国宮廷直属の陶磁窯。宋代の官窯が優秀な陶磁器を焼いたことで著名。北宋代には汝窯 (じょよう) があり,多く青磁が作られた。南宋代に入って浙江省杭州に修内司窯郊壇窯が築かれた。景徳鎮窯は北宋代から築窯されているが,明・清代まで存続。日本でも平安時代の猿投 (さなげ) 窯,江戸時代の各藩の御用窯がこれに類する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の官窯の言及

【陶磁器】より

…唐三彩は8世紀の初めに集中的につくられ,中唐以降は姿を消すといわれるが,晩唐,宋代に三彩として継承されていく。
[宋,元]
 晩唐,五代には越州窯で〈秘色青磁〉といわれる良質の青磁をつくり上げ,五代十国の一つ呉越の銭氏王室に〈貢瓷〉として銭氏の保護の下に官窯的色彩をもった窯となった。またこのころ越州窯青磁は重要な輸出陶磁として日本や朝鮮,東南アジア,西アジアに広く輸出された。…

【民窯】より

…民間人が営利を目的に築いた窯で,庶民の需要をみたしたものをいい,官窯に対する呼称である。しかし〈民窯〉の名が実際に使われるようになったのは,昭和初年,柳宗悦らが民芸運動の中で用いて以来で,柳らによれば,用に即し,かつ大量生産が可能な素朴な造形と低廉な価格の,日常雑器を焼造する窯に限定された。…

※「官窯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android