安芸太田(町)(読み)あきおおた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「安芸太田(町)」の意味・わかりやすい解説

安芸太田(町)
あきおおた

広島県の北西部、山県(やまがた)郡にある町。2004年(平成16)山県郡の戸河内(とごうち)、加計(かけ)の2町と筒賀村(つつがそん)が合併して成立。町域は太田川の中・上流域の山間部に展開し、山林面積の比率が高い。西は県の最高峰、恐羅漢(おそらかん)山(1346メートル)など中国山地の分水界をもって、島根県と境する。国道186号、191号、433号が通じる。南部を中国自動車道が走り、戸河内インターチェンジがある。集落は太田川本流域のほか丁(よおろ)川、滝山(たきやま)川、筒賀川、寺領(じりょう)川、柴木(しわぎ)川などの支流域にも点在。国指定特別名勝の三段峡柴木川)をはじめ、滝山峡(滝山川)、深山(みやま)峡(滝山川支流深山川)、竜頭峡(筒賀川支流三谷(みたに)川)などの景勝地があり、町域西部は西中国山地国定公園に含まれる。基幹産業は農林業と観光で、木工品、寺領地区などで生産されるシブガキの祇園坊柿、コンニャクイモシイタケ、川魚などが特産。キャンプ場や冬季のスキー場などレジャー施設も多い。諸河川沿いの道は古くから山陰地方と瀬戸内地方を結ぶ要路で、その要衝の加計は一帯の商業の中心地であった。江戸時代、森林資源に恵まれた戸河内地区では鑪製鉄(たたらせいてつ)が盛んに行われ、産鉄は薪炭、紙、木材、木製品など現町域の特産品とともに、加計と広島城下を結ぶ太田川舟運を利用して移出された。1954年(昭和29)、国鉄(現、JR)可部線が布(ぬの)駅(現、広島市阿佐北区)から加計駅まで、1969年には三段峡入口の三段峡駅まで延伸したが、2003年に可部駅(広島市安佐北区)―三段峡駅間は廃止。吉水園(よしみずえん)は江戸期の鉄山経営で財をなした加計隅屋佐々木氏(加計氏)が1781年(天明1)に建てた山荘に造成された廻遊式の庭園。2001年(平成13)に竣工した滝山川の温井ダム(ぬくいだむ)(アーチ式ダム)は堤高156メートルを誇り、ダム湖の龍姫(りゅうき)湖の周辺は観光スポットとなっている。また、廿日市市境の立岩(たていわ)ダム(発電専用、1939年完成)から坂根(さかね)間の太田川本流左岸にある押ヶ垰(おしがたお)断層帯は、国指定天然記念物。面積341.89平方キロメートル、人口5740(2020)。

[編集部]


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