安房峠(読み)あぼうとうげ

精選版 日本国語大辞典 「安房峠」の意味・読み・例文・類語

あぼう‐とうげ アバウたうげ【安房峠】

長野・岐阜両県境の峠。焼岳南側にあり、江戸時代は、飛騨山脈を横断し松本高山を結ぶ道として利用された。標高一八一二メートル。

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デジタル大辞泉 「安房峠」の意味・読み・例文・類語

あぼう‐とうげ〔アバウたうげ〕【安房峠】

長野・岐阜の県境、焼岳と安房山との間にある峠。標高1812メートル。松本高山とを結ぶ古い交通路で、国道158号が通る。

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日本歴史地名大系 「安房峠」の解説

安房峠
あぼうとうげ

標高一八一二メートル、安房山(二二一九・四メートル)と白谷山(二一〇九メートル)の鞍部にあたり、長野県側なかと岐阜県側平湯ひらゆを結ぶ峠。正保年間(一六四四―四八)国絵図には平井ひらい峠とある。「信府統記」(享保九年)「松本ヨリ飛騨高山ヘノ道程」の山道の条には「平井峠」とあり、同「他境順廻百首」には「穂高嶽猶西みなみ焼たけや信濃たふげは飛騨へ越し口」「越し口や平湯峠は飛騨のかたしなの峠と大野かはなり」とあって、飛騨側からは「信濃峠」とよんでいたことが知られる。一方、やけ岳の北側に中尾なかお峠がある。この峠は天保六年(一八三五)以後使用されるようになったのであるが、中尾村の下にあたる神坂かんさか村の名をとって神坂峠ともよばれており、近世初頭にも使われていた。

安房峠
あぼうとうげ

乗鞍のりくら岳とやけ岳の間にあり、上宝村平湯ひらゆと長野県南安曇みなみあずみ郡安曇村とを結ぶ峠。標高一七九〇メートル。中世には、北陸諸国から鎌倉へ行くのに神通じんづう川・高原たかはら川をさかのぼって神坂かんさかから信州へ抜ける中尾なかお峠越、または平湯から信州大野川おおのがわ(現安曇村)へ抜ける安房峠越のルートがあり、鎌倉街道と称されたという。永禄二年(一五五九)六月下旬、武田晴信(信玄)の将飯富三郎兵衛・甘利左衛門・馬場民部助三名が飛騨討入りした道は、安房峠越であったという(飛騨編年史要)

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百科事典マイペディア 「安房峠」の意味・わかりやすい解説

安房峠【あぼうとうげ】

長野・岐阜県境をなす飛騨山脈中の焼岳乗鞍岳の間にある峠。標高1790m。江戸時代には正保国絵図に平井峠とあるほか,信濃峠とも称された。岐阜側の平湯温泉と長野側の中ノ湯や上高地を結ぶ国道158号が通じ,1997年には安房トンネルが開通し,中部山岳国立公園中の観光ルートとして重要。
→関連項目平湯[温泉]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「安房峠」の意味・わかりやすい解説

安房峠
あぼうとうげ

長野・岐阜県境にある峠。通年通行できる唯一の北アルプス横断有料自動車道(安房峠道路)が峠の下をくぐる。上高地(かみこうち)の西部にそびえる焼岳(やけだけ)と安房山の鞍部(あんぶ)にあり、標高1812メートル。近世までは越中(えっちゅう)(富山県)の海産物を信濃(しなの)(長野県)に搬入するルートであり、道は安房山頂の南にあったが、1938年(昭和13)車道が北側につくられ、1965年に国道158号に指定された。峠には地蔵の石像が祀(まつ)られ、茶店がある。紅葉は絶景で、北東に穂高(ほたか)の連峰を望み、長野県側の眼下は数百メートルの峡谷をなす。長野県側は曲折が多く11月下旬から4月下旬までは通行止めになるため、トンネルで抜けるショートカットの安房峠道路ができた。観光的にはすばらしい眺望の峠である。峠の長野県側に中ノ湯、岐阜県側に平湯(ひらゆ)の両温泉がある。

[小林寛義]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「安房峠」の意味・わかりやすい解説

安房峠
あぼうとうげ

飛騨山脈の焼岳乗鞍岳の間に位置する峠。標高 1812m。長野県松本市と岐阜県高山市の境にあり,近世までは野麦峠とともに信濃と飛騨を結ぶ飛騨街道の重要な山越え地点をなした。当時は安房山 (2219m) の南側を道が通ったが,明治以後は北に回るようになった。 1934年には自動車の通行が可能になり,国道 158号線が開通。 1997年には約 4.4kmの安房トンネルが開通し,安房峠の通年通行が可能となった。峠下には長野県側に中ノ湯温泉,岐阜県側に平湯温泉がある。中部山岳国立公園に属する。

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改訂新版 世界大百科事典 「安房峠」の意味・わかりやすい解説

安房峠 (あぼうとうげ)

飛驒山脈の焼岳と乗鞍岳の間の山稜上にある峠。標高1812m。信濃・飛驒両国を結ぶ古くからの交通路で,長野県上高地中ノ湯温泉と岐阜県平湯温泉との最短通路として1938年自動車道が開通した。国道158号線が通り,同山脈横断バス道路として重要であるが,冬季は峠の交通が途絶するため,1989年から始められた安房トンネルの工事は97年12月に完成し,冬季も通行可能となった。
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