安倍文殊院(読み)あべもんじゆいん

日本歴史地名大系 「安倍文殊院」の解説

安倍文殊院
あべもんじゆいん

[現在地名]桜井市大字阿部

安倍山崇敬すうきよう文殊院と号し、華厳宗。法人名は文殊院。崇敬寺・安倍寺ともいう。本尊文殊菩薩は「和漢名数」に「本朝三文殊大士、奥州永井、丹州切戸、和州安倍山」とみえ、現京都府宮津みやづ市の智恩ちおん(切戸の文殊堂)などとともに日本三文殊の一で、俗に「知恵の文殊さん」とよばれる。「東大寺要録」末寺章に、「崇敬寺 字安倍寺 右安倍倉橋大臣之建立」とあり、阿倍氏の氏寺として建てられ、東大寺の末寺であったと考えられるが、旧寺地は現在地の南西三〇〇メートル、俗に仲麻呂屋敷なかまろやしきとよばれる地にあったとみられ、阿倍寺跡として国指定史跡。伽藍配置は塔を左(西)側、金堂を右(東)側とした法隆寺式伽藍配置であったと考えられる。講堂跡推定地の西方中世の瓦窯跡が五基検出されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「安倍文殊院」の意味・わかりやすい解説

安倍文殊院
あべもんじゅいん

奈良県桜井市阿部(あべ)にある華厳(けごん)宗別格本山。当院は安倍倉橋磨呂(くらはしまろ)(阿倍内麻呂)の創建といわれ、もと安倍寺崇敬寺と称し、華厳宗と真言宗を擁していた。盛時には法隆寺式伽藍(がらん)配置の壮大さであったといわれるが、栄枯盛衰し、明治時代に文殊院と改称し、今日ではその面影をしのぶだけになった。快慶(かいけい)作の本尊文殊菩薩(ぼさつ)は7メートルもあり、脇侍(わきじ/きょうじ)4像とともに国宝。京都府の天ノ橋立(あまのはしだて)切戸(きれと)の文殊(もんじゅ)(智恩寺)、山形県の亀岡(かめおか)文殊堂とともに日本三大文殊の一つとして、古来より多くの参詣(さんけい)者がある。

[眞柴弘宗 2015年6月17日]


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