孵卵器(読み)ふらんき(英語表記)incubator

翻訳|incubator

精選版 日本国語大辞典 「孵卵器」の意味・読み・例文・類語

ふらん‐き【孵卵器】

〘名〙 定温器の一種で、鶏卵人工孵化用に開発されたもの。孵化器。
食道楽‐秋(1903)〈村井弦斎〉一九五「近頃は米国製の新式孵卵器(フランキ)を用ゆる」

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デジタル大辞泉 「孵卵器」の意味・読み・例文・類語

ふらん‐き【×孵卵器】

鶏卵・魚卵などを人工的に孵化させるための装置温度調整・換気回転など、必要な条件を保つようにしたもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「孵卵器」の意味・わかりやすい解説

孵卵器 (ふらんき)
incubator

人工的に卵を孵化させる装置。人工孵化は前4世紀ころからエジプトで行われていたが,最近の養鶏業の発展は,母鶏に抱かせてかえす自然孵化では賄いきれない規模となったため,孵卵器を用いた人工孵化は養鶏業に必須の技術となった。孵卵器の機能は,天然の母鶏の動作を模倣するもので,卵に対する給温,適当な湿度を保つこと,新鮮な空気供給,ときおり卵の回転を行うことの四つの機能を果たすものである。構造上,平面式と立体式に分かれるが,平面式は400個以下を収容する小型のもので,産業的に使用されるのは1000~数万個を収容できる立体式のものである。熱源としては,昔は木炭や石油・ガスなども用いられたが,現在は電熱を利用し,サーモスタットによって,38℃に保つよう調節される。湿度は水盤と換気孔により調節され,50~60%に保たれる。換気のための換気孔が設けられているが,立体式のものでは,内部温度を均一化するための電動式の扇風機が換気も促進する。卵の回転を行う転卵は,平面式の場合は1日に4~6回手で行うが,立体式のものでは棚状の卵座がタイムスイッチで自動的に角度を変えて,いっせいに行うことができる。大型の立体式孵卵器では,孵化用卵座が別に設けられていて,入卵後18日に達した卵はここに移して,21日目の孵化を待つ。孵卵器は数台以上を1ヵ所に集めて管理する場合が多いが,孵卵室あるいは孵卵舎は日光直射気温・湿度の急変のない新鮮な空気の入る乾燥した場所に設けることが望ましい。孵卵器は入卵する数日前から温度を調節し,故障個所などのないよう入念に点検するとともに,十分な消毒を行うことが必要である。
人工孵化
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「孵卵器」の意味・わかりやすい解説

孵卵器
ふらんき
incubator

鳥類の卵を入れて人工的に孵化させる装置をいう。一般に利用されている孵卵器は鶏卵用のものである。中国やエジプトでは2000年以上も前から原始的な孵卵器で人工孵化を行っていた。現在の改良された孵卵器には平面式と立体式があり、どちらも母鶏の抱卵時と同様な条件をつくりだす。平面式は小形で100~500卵ほど入卵するもので、立体式は1000~数万卵まで収容できる。平面式、立体式ともに器内には、卵座、温度調整器、湿度を保つための水盤、孵化用発生座などがある。平面式は卵座は一段しかないが、立体式は棚状に多数の卵座があり、大形のものは孵卵区と発生区が別室になっている。種卵は卵座上に鈍端を上にして斜めに並べる。孵卵温度は37~38度Cが最適である。立体式は送風機または枠型の空気攪拌(かくはん)器で器内温度を一定に保つが、平面式はこの装置がなく上方から輻射(ふくしゃ)熱で加温するので下端のほうが上端より温度が低くなるため、立体式より約1度C高くする。器内の湿度はそれほど厳密でなく水盤によって最適相対湿度である40~70%の範囲に保たれる。孵卵中は換気をよくし、酸素濃度は空気と同じ21%ぐらい、二酸化炭素は1%以下に抑える。また卵殻膜に胚(はい)の絨毛(じゅうもう)膜が付着して胚が死亡するのを防ぐため転卵を行う。平面式では1日に4~6回手で行い、立体式では1日に8~10回卵座ごと手動または自動的に40~45度ずつ回転させて転卵させる。18日目に孵化用発生座に移して21日目に孵化させる。

[西田恂子]

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百科事典マイペディア 「孵卵器」の意味・わかりやすい解説

孵卵器【ふらんき】

鶏卵を人工的に孵化させる装置。器内の上方から放射熱を与えて孵化させる平面式と,電熱ヒーターにより器内の空気を暖めて,扇風機で空気を攪拌(かくはん)して器内の温度と湿度を均一に保つ(卵を入れたわくの回転により転卵も自動的に行う)立体式がある。現在は後者が普通で,日本では1万個ほどの卵を収容するものが多い。
→関連項目養鶏

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栄養・生化学辞典 「孵卵器」の解説

孵卵器

 →インキュベータ

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世界大百科事典(旧版)内の孵卵器の言及

【保育器】より

…胎外の自然環境では生存の難しい未熟新生児や幼弱病児,外科手術後の新生児に,乳児期のある期間,生存可能な環境を与えるために,保温,隔離,監視することを目的として考案された装置。
[保育器の歴史]
 早産児は体温調節機能が未成熟で,保温に気をつけないと生存が難しいことは古くから気づかれていた。そこで,二重の壁の間に温湯を通じて保温する装置などが作られたが,現在の保育器の原型となったのは,1880年にフランスの産科医タルニエEtienne S.Tarnier(1828‐97)が考案したものであった。…

※「孵卵器」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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