学習障害児(読み)がくしゅうしょうがいじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「学習障害児」の意味・わかりやすい解説

学習障害児
がくしゅうしょうがいじ

知的発達の全般的な遅れによらない、学習上の特異なつまずきやすさや習得困難をもつ子供に対して用いられる概念学習障害learning disabilitiesの頭文字をとってLD児ともよばれる。知的能力と学力水準との乖離(かいり)からとらえる相対的学業不振と類似する部分もあるが、その背景に中枢神経系の機能障害、つまりは認知障害を想定した発達障害ととらえる点で異なる。「学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。」(1999年の文部省「学習障害に関する調査研究協力者会議」定義より)。

 この用語は1960年代になってアメリカを中心に使われ始め、わが国でも1990年(平成2)ごろから文部省(現文部科学省)を中心に本格的な検討に着手、2000年ごろから、学校教育場面における学習障害の判断・実態把握と特別な教育支援の対応についての動きが各地で始まった。学習障害児には、社会性能力や協応運動能力などの習得困難を重複したり、注意欠陥多動性障害attention deficit hyperactivity disorder(略称ADHD、注意力と集中力が欠如し、多動性、衝動性の目だつ者に対して用いられる医学上の診断用語)などの障害を合併する事例が多くみられることから、これらの面にも十分に配慮した教育的措置が必要であるとされる。

[上野一彦]

『上野一彦・牟田悦子編著『学習障害児の教育――診断と指導のための実践事例集』(1991・日本文化科学社)』

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