子葉(読み)しよう(英語表記)cotyledon

翻訳|cotyledon

精選版 日本国語大辞典 「子葉」の意味・読み・例文・類語

し‐よう ‥エフ【子葉】

〘名〙
① 子のこと。
江都督納言願文集(平安後)六・源中将願文「婦節不渝。雖松茂栢悦之貞、子葉遅生」
種子植物の発生段階で最初に出る葉。種子の中で形成され、胚の一部分をなす。形は普通の葉と異なる場合が多い。単子葉植物では一枚双子葉植物では二枚、裸子植物では数枚みられる。
※具氏博物学(1876‐77)〈須川賢久訳〉二「葱、椰子の如く内部より生長する種類草木は其種実必一個の子葉より成れる者なり」

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デジタル大辞泉 「子葉」の意味・読み・例文・類語

し‐よう〔‐エフ〕【子葉】

種子が発芽して最初に出る葉。はいの一部分で、普通の葉と形の異なるものが多く、単子葉植物では1枚、双子葉植物では2枚のものが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「子葉」の意味・わかりやすい解説

子葉 (しよう)
cotyledon

種子植物の胞子体個体発生において最初に形成される葉で,一般に2番目以後に形成される葉と異なった性質をもっている。単子葉類では1枚,双子葉類では2枚の場合が多いが,双子葉類には1枚のものから数枚のものまで例外的な場合もある。裸子植物では2~12枚と種によってさまざまであり,シダ植物の第1葉は第2葉以後と基本的に変わらないうえ,休眠状態で種子の形をとらないので子葉とはいわない。種子植物では子葉の次に出る葉をふつう第1葉とよんでいる。

 子葉の数のちがいが単子葉類,双子葉類のような高次の分類群の名前にまで使われているので,この性質は系統的に重要なものと誤解されることがあるが,体制上の位置だけで定義されているものなので,数,構造,機能などは種や分類群によって変化がみられるし,単子葉類のように,どの部分が子葉に相当するかさえ確定していない場合もある。

 種子の栄養貯蔵器官として胚乳などの発達する種子では,子葉は種子内では目だたず,発芽後発達して緑色となり,同化作用も行う(イネ,コショウ)。一方,クリ,マメ科植物,アサガオの場合はいわゆる無胚乳種子で,栄養分は子葉に貯蔵されているために,子葉が特別の形態や機能を示す。この場合,子葉は種子内でよく発達し,発芽に際しても速やかに子葉が展開して独立生活を始める。無胚乳種子において子葉がつくられる過程や,発芽に際して,子葉内の物質代謝過程にふつうの葉にみられないような現象のみられることが報告されている。

 種子の発芽に際して,双子葉類では,まず胚軸以下の部分が伸び,続いて胚根が伸びていくが,子葉は根の伸びはじめたときにはまだ種子中にあり,胚乳などから養分を吸収するものではまず種子内で大きくなって伸びていく。単子葉の場合もまず根が出て定着し,子葉が胚乳などの養分を吸って大きくなって伸長してくる。子葉が展開してから胚芽が伸びて第1葉がつくられるが,子葉と第1葉の間を子葉上茎epicotylという。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「子葉」の意味・わかりやすい解説

子葉
しよう

裸子植物および被子植物の胚珠(はいしゅ)内で発達中の胚が最初につくる葉。受精卵は初めに未分化な組織塊を形成し、この組織塊からまず子葉が分化する。その後、子葉の基部に茎の頂端分裂組織ができ、子葉以後に出る普通葉はすべてここからつくられていく。子葉の数は、裸子植物では2個が対生するか、数個が輪生するが、被子植物である双子葉植物では2個が対生、単子葉植物では1個となる。ただし双子葉植物のセツブンソウコマクサシクラメン、ヤブレガサなどの子葉は例外的にただ1個であるため、「擬似単子葉」とよばれる。なお、2個が対生する子葉はとくに目だつため、日本では古来から「双葉(ふたば)」として親しまれている。

 子葉を形のうえから普通葉と比べると、いくつかの点で違っていることが多い。たとえば、普通葉に鋸歯(きょし)があっても子葉にはないか、目だたないものが多いし、子葉が複葉となることもほとんどない。また、サボテンのように普通葉が刺(とげ)状など特殊な形になる場合でも、子葉の形は他の植物のものとあまり違いがない。このほか、子葉の特徴としては普通葉よりも厚いことが多い、単子葉植物の子葉は多くは棒状で、扁平(へんぺい)ではないなどがあげられる。

 子葉の機能としては、(1)子葉の中には多少とも栄養が貯蔵されていて、これを茎頂や根端に供給すること、(2)発芽の前後に内胚乳などの種子の栄養組織から養分を吸収すること、(3)普通葉が展開するまでの間、光合成を行うこと、があげられる。子葉によってはこの三つの機能を果たす場合もあるし、いずれかが欠ける場合もある。マメ科の子葉は半球形に肥厚して多量の栄養をもっており、これが種皮の外に出ることはないし、イネ科の子葉は特別に胚盤とよばれており、内胚乳の側面に張り付いて、もっぱら栄養を吸収する働きを果たしている。

 また、ユリ科やツユクサ科の芽生えでは、子葉は屈曲しており、光合成を行うが、その先端部は種皮の中に入っていて、ここから栄養を吸収する。

[山下貴司]

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百科事典マイペディア 「子葉」の意味・わかりやすい解説

子葉【しよう】

種子植物の個体発生で最初に形成される葉をいい,種子中で胚の一部を形成。数,形,生理学的な機能は種によって異なる。原則として双子葉類では2枚,単子葉では1枚だが,例外も多い。裸子植物はさまざまでマツでは6〜8枚。普通,イネ,カキなど胚乳のある種子では子葉は小さく,クリ,マメなどの無胚乳種子では,発芽の時に利用される貯蔵物質があって大きい。また,発芽時に子葉が地中に残るもの(エンドウ),地上に出るもの(インゲン,イネ,カキ)がある。なお,子葉は普通葉と形が異なる場合が多い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「子葉」の意味・わかりやすい解説

子葉
しよう
cotyledon

植物体の発芽で,最初に生じる葉。種子植物では種子内の胚にみられる。単子葉植物では1枚,双子葉植物では通常2枚である。例外的に4枚,異常的に3~5枚,また癒着して1枚のこともある。裸子植物では概して多数の子葉 (たとえばマツは6~12枚) をもつ。また子葉はしばしば貯蔵器官になっていることもある。ことに無胚乳種子のものに著しい (たとえばくり,豆類) 。

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栄養・生化学辞典 「子葉」の解説

子葉

 種子植物が発生するとき,最初に形成される葉.

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