子宮がん(読み)しきゅうがん

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「子宮がん」の解説

子宮がん

 子宮がんは、子宮の入口付近のくびれた部分にできる子宮けいがんと、子宮の本体部分にできる子宮たいがんに分けられます。

 発生率としては2対1くらいで頸がんのほうが多いのですが、近年、体がんの占める割合が増えつつあります。

●おもな症状

 頸がん、体がんとも初期は無症状のことが多く、進行に伴い、不正性器出血、ピンクや茶褐色おりものなどがみられます。頸がんでは、性交時の接触出血があることもあります。体がんでは、ほとんどの例で不正性器出血がみられています。

〔子宮頸がん〕

①子宮頸部細胞診(擦過細胞診)

  ▼

②腟鏡診(クスコ診)/腟拡大鏡診(コルポスコープ診)/腫瘍マーカー

  ▼

③超音波/CT/MR /PET-CT

  

〔子宮体がん〕

①子宮内膜細胞診

  ▼

②子宮内膜組織診/腫瘍マーカー

  ▼

③超音波/子宮鏡検査

  ▼

④CT/MR /PET-CT

子宮頸がんは内診と細胞診でだいたいわかる

 子宮頸がんは、検診が普及した影響もあり、集団検診などで早期で発見される率が高まっています。一般に30歳以上が検診の対象になっていますが、20歳代でも必要性があるといわれています。

 最初は、検診でも実施されている子宮頸部細胞診(擦過さっか細胞診→参照)を行います。綿棒やブラシを用いて子宮頸部をこすり、細胞を採取して病理検査を行います。

 細胞診でがんが疑われたら、腟鏡診ちつきょうしん(クスコ診)や腟拡大鏡診(コルポスコープ診)を行ってさらに精密に調べ、異常があればその部分の組織を採取して病理検査をします。

 腫瘍マーカー(→参照)は、頸がんにはSCCなどが使われています。その他、必要に応じて腹部超音波(→参照)や腹部CT(→参照)、MR(→参照)などを行います。

子宮体がんは組織診と画像診断が有効

 子宮体がんでは、細いチューブやブラシを子宮の奥のほうに入れて子宮内膜細胞を採取し、病理検査を行います(子宮内膜細胞診)。細胞診でがんが疑われたら、少し大きめに組織を採取して調べます(子宮内膜組織診)。

 腫瘍マーカーは、体がんの場合はCEA、CA125などが使われています。その他、がんの広がりや進展の具合を調べるには、経腟超音波(腟口から小さなプローブを挿入して行う)やMR、CTが有効です。内視鏡の一種である子宮鏡を用いることもあります。

 体がんでも出血がみられないこともあるので、無症状でも45歳を過ぎたら検診を受けることがすすめられます。

出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

食の医学館 「子宮がん」の解説

しきゅうがん【子宮がん】

《どんな病気か?》


 子宮(しきゅう)がんのうち、子宮の入り口付近で発生するのが子宮頸(しきゅうけい)がんです。若い女性でもみられるのが特徴で、出産年齢が若く、出産回数の多い人、性交渉の相手が多い人などに、高率で発生するといわれています。
 一方、子宮体(しきゅうたい)がんは子宮の内部(体部)に発生するもので、その要因は、閉経後の50~60歳代に発生する人が多いことから、女性ホルモンが影響していると考えられています。高齢出産、妊娠・出産の有無、月経不順(げっけいふじゅん)卵胞(らんぽう)ホルモン投与の有無などが、リスクファクターといえます。
 いずれも初期症状はほとんどなく、進行すると不正出血(ふせいしゅっけつ)や悪臭をともなうおりものがみられるようになります。定期的に健診を受け、早期発見・早期治療がたいせつです。

《関連する食品》


○栄養成分としての働きから
 米国がん協会の発表では、子宮頸がんはカロテンビタミンCの不足が原因にあげられています。ニンジンピーマンなどの緑黄色野菜、パパイアやイチゴなどを積極的に摂取しましょう。
〈女性特有のがんにはDHA。子宮体がんは脂質をひかえる〉
 また、子宮体がんは、欧米の女性に多くみられるがんでしたが、近年は日本人女性でも増加がみられることから、食生活の欧米化が原因ではないかと考えられています。動物性脂質をひかえ、ビタミンやミネラルを多く摂取しましょう。
 そして、女性特有のがんを防ぐ効果があるといわれているのがDHAです。サバやサンマ、イワシなどで、たっぷりと摂取しましょう。

出典 小学館食の医学館について 情報

知恵蔵 「子宮がん」の解説

子宮がん

大きく子宮頸部の頸がんと子宮体部の体がんに分けられ、両者は発生要因の上でも、治療の点でも異なっている。子宮頸がんは著しく減少しつつあるが、子宮体がんは増加傾向にある。頸がんと体がんでは診断方法、治療方法が異なる。頸がんの原因としてヒトパピローマウイルス(HPV)が挙げられている。一方、体がんのリスク因子として女性ホルモン(エストロゲン)がある。頸がんは集団検診などで早期に発見されることが多いが、体がんは発見されにくい。自覚的には、頸がんの場合は性交時の接触出血、体がんの場合は閉経後の不正出血がある。治療は子宮摘出術が基本。さらに進行していれば、放射線、化学療法が行われる。5年生存率は約70%.

(黒木登志夫 岐阜大学学長 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

家庭医学館 「子宮がん」の解説

しきゅうがん【子宮がん Uterine Cancer】

◎発生部位により2つに分類
 一般に、子宮がんといわれるがんは、発生する場所によって2種類に分けられます。図「子宮がんの発生部位」に示したように、子宮頸部に発生するがんを子宮頸(しきゅうけい)がん、子宮体部に発生するがんを子宮体(しきゅうたい)がんといいます。日本人の子宮がんのうち、80~90%が子宮頸がんです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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