子供室(読み)こどもしつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「子供室」の意味・わかりやすい解説

子供室
こどもしつ

住宅内で子供のために設けられた個室。子供1人1人に設ける場合が多いが、複数で共用することもある。子供室は、遊び、勉強し、寝る場所であるだけでなく、友達を招き入れる部屋でもある。

 住宅に子供のための部屋あるいは建物を用意することは、歴史的にみると、平安時代の寝殿造において、男子には寝殿や対屋(たいのや)の中あるいは廊の部屋が、女子には独立した対屋が与えられたのが早い例であろう。中世には、嗣子(しし)を独立した建物である小御所(こごしょ)(内裏(だいり)では東宮〈春宮〉御所ともいう)に住まわせる場合が、内裏や将軍家のような上層階級では多かった。近世の内裏では、東宮御所のほかに若宮御殿、姫宮御殿を建てる場合がしばしばみられる。

 子供室の名称で都市住宅に子供のための個室が用意されるようになるのは、生活改善運動が盛んになり、家族本位の住宅ということが叫ばれるようになってからで、大正から昭和の初期である。当時の洋風住宅に子供室が設けられるようになったのが早い例であろう。当時の考え方では、独立自治の精神を養成することを目的に、欧米の例に倣って子供室をつくり、勉強ができるように仕向け、かたづけなども自分でできるような生活習慣をつけるべきであり、またある程度の年齢に達したのちは、男女の部屋を分けるのがよいとされている。このような子供室に対する考え方は、引き続き現在に至るまで主流を占め、小学校の中学年ごろから子供室を与え、中学生ごろから、遅くとも高校生になったら個室を与えたいとされているが、近年子供室を親が管理できない家庭が出てきて、このような場合に子供の非行が増えてきたことから、子供室を開放的にして親の目の届くようにつくる(とくに幼児から小学生は母親の目の届く場所に)、子供が複数の場合には共同の子供室とするなどの試みがみられるようになっているが、大勢は従来どおりの個室の子供室である。

 子供室の面積は、1人当り3畳程度必要であり、個室として板敷き椅子(いす)座式の子供室をとる場合には、6~8畳程度の広さで、ベッド、勉強机と椅子、洋服だんす、整理だんす、本棚などの家具を備えたいとされている。子供室の機能は、子供の成長とともに変化するうえに、共同の部屋の場合には、成長したときに個室に分けることも考えておかなければならないので、家具などを固定せず、将来を見越してフレキシブルに考える必要がある。

[平井 聖]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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