子どもの歯列矯正(読み)こどものしれつきょうせい

家庭医学館 「子どもの歯列矯正」の解説

こどものしれつきょうせい【子どもの歯列矯正】

●子どもの咬合異常(こうごういじょう)とその弊害(へいがい)
 子どもの咬合異常を放置しておくと顎骨(がくこつ)の発育をはばみ、骨格系の異常をひきおこし、あごの機能の異常をも誘発(ゆうはつ)しかねません。したがって、なるべく早めに処置しなければなりません。
 あごの機能の異常は、咀嚼(そしゃく)や発音がうまくできない、あごがゆがむ、むし歯ができやすい、歯周組織(ししゅうそしき)の病気や顎関節症(がくかんせつしょう)をおこしやすい、外見が悪くなり心理的な障害(審美感(しんびかん))などの悪影響をもたらす可能性があります。
 混合歯列期(こんごうしれつき)の咬合異常には、永久歯(えいきゅうし)の生える部位の不足(萌出余地不足(ほうしゅつよちぶそく))による個々の歯の位置異常に起因するものが多くみられます。上顎(じょうがく)と下顎かがく)の発育速度や発育様式は同じでなく、上顎骨の発育は下顎骨よりも遅く、しかも12歳ころまで続きます。
●正しいかみ合わせにするために
 乳歯列期(にゅうしれつき)から永久歯列期(えいきゅうしれつき)にわたり、正しい調和のとれた永久歯咬合を導くために行なわれる処置が咬合誘導(こうごうゆうどう)です。これは、長期間、同じ処置をするものではなく、発育期の節目に発育の変化に応じて行なわれます。なぜなら、子どもの年齢によって、それぞれつぎのような特徴が現われてくるからです。
 6歳まで
 この時期は乳歯列期から第1大臼歯(だいいちだいきゅうし)の萌出期(ほうしゅつき)です。乳歯咬合を維持し、あごの関係を正常に保ち、正しい位置に第1大臼歯を導くことが重要ですから、むし歯の処置、正しい歯の位置関係を保つ処置(保隙処置(ほげきしょち))、反対咬合の処置などが必要になります。
 7~8歳
 この時期は前歯の交換期です。切歯(せっし)の正常な配列を目標に、切歯の異常萌出を処置します。
 9~11歳
 この時期は小臼歯(しょうきゅうし)などの側方歯群(そくほうしぐん)の交換期です。側方歯群が正常に交換するよう、また、第1大臼歯が正常に咬合するよう維持します。
 12歳以降
 12歳を過ぎると永久歯列期に入ります。この時期になると多くの歯の歯根しこん)が完成するため、本格的な矯正が可能になります。
●矯正でなぜ歯が動くのか
 矯正というのは、ワイヤーやバネの力を利用して、歯や顎骨を目的とする位置へ人工的に移動することです。この人工的な力が矯正力(きょうせいりょく)です。
 歯は、あごの骨と直接結合しているわけではありません。歯と顎骨との間には、歯根膜(しこんまく)という線維性(せんいせい)の組織があり、座ぶとんのようなはたらきをしています。歯に矯正力がかかると、歯根膜の細胞が圧迫される骨を吸収し、引っ張られた側の骨には新しい骨を添加して歯根のすき間を一定に保つようにします。その結果、時間差はありますが、歯は、上にも(挺出(ていしゅつ))、下にも(圧下(あっか))、横にも(歯体移動(したいいどう))動くことになります。
●矯正治療に時間がかかるわけ
 強い力をかければすぐに動きそうですが、骨より先に歯が吸収したりするため、ゆっくりと緩やかな力をかけて動かすので時間がかかるのです。また、動かされた歯はある期間、固定(保定(ほてい))しておかないと、もとの位置にもどります。保定期間は、歯と歯根膜と骨の関係が落ち着くまでの期間のことで、1~2年かかるのがふつうです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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