精選版 日本国語大辞典 「婀娜」の意味・読み・例文・類語
あ‐だ【婀娜】
① たおやかで美しいさま。なよやかで、なまめかしいさま。
② (女性の)色っぽく、なまめかしいさま。特に、近世末期には、粋な感じも含んでいった。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「諸事婀娜(アダ)とか云て薄化粧がさっぱりして能(いい)はな」
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三・一三齣「何がといって一日増に仇(アダ)になるおめへを他人中(ひとなか)へ手放して置(おく)が気になってならねへ」
③ 物事が色っぽく洗練されているさま。
※洒落本・通言総籬(1787)二「めりやすの本をもらって参りした。〈略〉いっそあだでようすよ」
[語誌](1)「婀娜」は、「曹植‐洛神賦」(文選)に見えるように、漢語起源の語であり、原義は、たおやかで美しいさまを表わした。日本の文献では中古以降用例が見られ、中世まではほとんど漢語本来の意味を保って用いられていた。
(2)近世後期になると、特に女性の色っぽくつやめかしいさまを表わすようになった。為永春水などの手になる人情本は、婀娜の世界を基調とする戯作と言われ、二〇歳代半ばも過ぎ、苦労人としての人情の機微を十分に弁え、垢抜けした色っぽさを湛えた「年増女」がその典型であった。
(3)「婀娜」と「いき」は意味的に重なっているが、「いき」を特に視覚面からとらえた美意識が「婀娜」である。近代に入ると、「美しいといふよりは仇っぽくて、男殺しといふのは斯ういふ人を謂ふのかと思はれた」〔二葉亭四迷「平凡‐五九」〕のように、性的な魅力の面が強調されるようになる。
(4)なお、本来アタと発音されていた「仇」が、近世中期以降濁音化してアダとなったので、「婀娜」の意味に「仇」の字が用いられることが少なくない。
(2)近世後期になると、特に女性の色っぽくつやめかしいさまを表わすようになった。為永春水などの手になる人情本は、婀娜の世界を基調とする戯作と言われ、二〇歳代半ばも過ぎ、苦労人としての人情の機微を十分に弁え、垢抜けした色っぽさを湛えた「年増女」がその典型であった。
(3)「婀娜」と「いき」は意味的に重なっているが、「いき」を特に視覚面からとらえた美意識が「婀娜」である。近代に入ると、「美しいといふよりは仇っぽくて、男殺しといふのは斯ういふ人を謂ふのかと思はれた」〔二葉亭四迷「平凡‐五九」〕のように、性的な魅力の面が強調されるようになる。
(4)なお、本来アタと発音されていた「仇」が、近世中期以降濁音化してアダとなったので、「婀娜」の意味に「仇」の字が用いられることが少なくない。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報