娘組(読み)むすめぐみ

精選版 日本国語大辞典 「娘組」の意味・読み・例文・類語

むすめ‐ぐみ【娘組】

〘名〙 村の未婚女性の年齢集団西南日本に多く、泊まり宿を持つものもある。
俳句世界(1954)〈山本健吉〉二「若者組・娘組などの、同じ年齢層による特別の附合ひもある」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「娘組」の意味・読み・例文・類語

むすめ‐ぐみ【娘組】

村落ごとに組織される未婚女子の集団娘宿に集まって夜なべ仕事などをする。→若者組

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「娘組」の意味・わかりやすい解説

娘組 (むすめぐみ)

かつて村落内に形成された若い女性の年齢集団。名称としては娘組のほか,娘仲間,女組,女の若仲,女子若衆(おなごわかいしゆ)などがある。娘宿をともなうものが多く,また研究者が,娘宿に集まる娘たちのことを娘組と呼称することもあるが,特定の娘宿をもたない娘組も存在した。娘は,数え年15歳前後に成女式(成年式)を済ますと娘組または娘宿へ参加し,通常は結婚を機会に脱退する。したがって娘組の多くは,その名称が示すように未婚者集団である。しかし,まれには既婚女性を含む形態もある。娘組は年長者によって統率されるが,組織だっておらず,年齢階梯制も発達していない。娘たちは夕食後,娘宿や仲間の家などへ寄り集まり,糸繰りや苧績(おうみ),粉ひき,草履作りなどを行うので,労働集団としての一面もあるが,主な機能は婚姻媒介にあった。つまり,その場を訪れる若者と交流することにより,配偶者の選択の機会となったからである。また男女の評価と交際法についての学習の場でもあった。しかし娘組は,概して村内の若者組の監督と庇護の下におかれ,行動は制約されていた。娘組や娘宿の分布は,西南日本の沿海地方に比較的集中していたが,子守女中奉公,あるいは女工としての村外移動が激しかったためであろうか,それらは若者組よりも早く衰微した。したがって,実態は必ずしも明らかでない。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「娘組」の意味・わかりやすい解説

娘組
むすめぐみ

未婚成年女子による年齢集団。男子の若者組にあたる。娘仲間、おなご組、おなご若衆などともいう。成女式をあげる13歳ごろから結婚までの娘が加わった。若者組と違い、加入・脱退の儀礼を欠き、役員や規約なども備えられないのが通例であった。つまり、若者組が定型的な組織なのに対して、娘組は不定型で、この点子供組に近く、実質的には娘仲間というべきものであった。集会や共同作業、さらに寝泊りのために娘宿や寝宿、泊り宿などをもっていた。宿に親しい友達同士が集まり、苧績(おう)み、糸繰り、針仕事、藁(わら)仕事などをした。宿は専用の建物ではなくて、民家の一室を借りる場合が多かった。一村内に娘組がいくつか存在することもあった。したがって、娘宿が数か所設けられることも珍しくなかった。宿で夜なべをしているところに若者たちが訪れてきて、仕事を手伝ったり、いっしょに歌を歌ったりして男女の交流が活発に行われた。そして娘宿を場に恋愛が生まれ、結婚へと進む者が多かった。この男女の交際は決して放縦なものではなく、それぞれ仲間同士内の相互規制が働き、また宿親も宿子に対して異性との交際に指導、助言を与えた。そして娘たちは、この交流を通じて男性をみる目を養うことができた。娘組は西日本、とくに沿海部に明治以後も濃く分布していた。しかし、その後新しく成立した処女会や女子青年団などは娘組の伝統をほとんど引き継がなかった。

[竹田 旦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「娘組」の意味・わかりやすい解説

娘組
むすめぐみ

集落または村ごとに組織された未婚女子の集団。成人の承認を受けると加入が許され,娘宿に集り,あるいは寝泊りして,結婚に関する知識を教えられたり,苧績 (おう) みなどの共同作業に従ったりする。西日本に主としてみられる組織であったが,北陸,東北地方にも,農閑期に共同の仕事をする仕事宿の類が広くあり,やはり娘組をつくっていた。明治以降は,村外婚の増加とともにこの習俗も衰えた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「娘組」の解説

娘組
むすめぐみ

娘仲間・女子若い衆とも。村落社会にみられた年齢集団の一つで,初潮を迎えたり,一定年齢に達した未婚女子の集団をさす。若者組のように一定の組織や加入儀礼などをもたず,気のあった仲間の社交機関のような存在で,娘宿を中心に活動した。宿に遊びにくる若者と語らって異性観を養い,将来の配偶者をみつけるなど,婚姻に関する一定の役割をもっていた点で,近代に作られた官製の処女会や女子青年団と性格を異にする。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

百科事典マイペディア 「娘組」の意味・わかりやすい解説

娘組【むすめぐみ】

若者組

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の娘組の言及

【年齢集団】より

…ヨーロッパではいまのところ,はっきりしたものは報告されていないが,ギリシアのスパルタには年齢集団があったといわれる。 日本では明治期の青年団以前に,全国各地に若者組や娘組がみられたが,ことに中部から西南日本の漁村社会の若者組が民俗学者によって早くから研究された。しかしこれらは広義の年齢集団としてとりあげられはしたが,年齢階梯制という理解には欠けていた点がある。…

※「娘組」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android