妊娠自体と直接関連のない肝疾患

内科学 第10版 の解説

妊娠自体と直接関連のない肝疾患(妊娠と肝障害)

(2)妊娠自体と直接関連のない肝疾患(表9-19-1)
a.妊娠前からの既存肝疾患
 活動性の低い慢性肝炎の妊娠は問題ないが,活動性の高い慢性肝炎および肝硬変の場合は妊娠の可否,継続を考慮する.なお,食道静脈瘤は妊娠により通常増悪する.妊娠期間中は一般に自己免疫性およびウイルス性の肝炎は沈静化するが,分娩数カ月後に急性増悪をきたす場合がある.
b.妊娠中に偶発する肝疾患
 妊娠中の黄疸の原因として最も多いのは急性ウイルス性肝炎の発症である.妊婦がウイルス性肝炎に罹患した場合でも,その臨床経過は非妊娠者と変わらない.ウイルス性肝炎に罹患しても通常,胎児への影響はみられないが,妊娠後期に罹患した場合は流産早産になりやすい.なお,妊娠後期では凝固亢進状態にあり静脈血栓症,Budd-Chiari症候群などを発症しやすい.また,妊娠は胆石の形成を促進する.[村脇義和]
■文献
Bacq Y: Liver diseases unique to pregnancy: A 2010 update. Clin Res Hepatol Gastroenterol, 35: 182-193, 2011.
Hay JE: Liver disease in pregnancy. Hepatology, 47: 1067-1076, 2008.
Joshi D, James A, et al: Liver disease in pregnancy. Lancet, 375: 594-605, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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