好事(読み)こうじ

精選版 日本国語大辞典 「好事」の意味・読み・例文・類語

こう‐じ カウ‥【好事】

〘名〙
① よいこと。都合のよいこと。結構なこと。
正法眼蔵随聞記(1235‐38)二「好事をば譲他人悪事をば向己志気有るべき也」
② よい行ない。善事。善行
正法眼蔵(1231‐53)法華転法華「ただ鬢髪をそるなほ好事なり」 〔五代史‐唐明宗紀〕
菅家文草(900頃)二「傷巨三郎、寄北堂諸好事
※詩序集(1133頃)感懐詩序〈藤原明衡〉「洛陽好事、可五六輩
仏事法事
江戸繁昌記(1832‐36)五「棺材を買、好事(〈注〉ホウジ)を修する」

いい‐こと【好事】

[1] 〘名〙
① よいこと。おもしろいこと。楽しいこと。特に男女事柄についていう。
洒落本辰巳之園(1770)「忠五久しいの。いい事でもあるか」
② よいめぐりあわせ。好運。
③ (「に」を伴って) 口実にして付け込むこと。よい機会。好都合
人情本・孝女二葉錦(1829)初「某(わたし)がずるけると、またいい事にして、若いものもずるけますし」
[2] 〘感動〙 相手に念を押す時に用いる女性語。おもに同等以下の相手にいう。→こと(事)(二)③(ハ)。「いいこと。あの角を右にまがるのよ」

こう‐ず カウ‥【好事】

〘名〙 (形動)
① めずらしいことや変わったことに興味を持つこと。また、風流を愛すること。こうじ
連理秘抄(1349)「好事之倫、各正其志詠性情者、可思無邪之一助焉」
仮名草子浮世物語(1665頃)二・六「京・大坂の好事(カウズ)の者潮干の遊に集り」

すき‐ごと【好事】

〘名〙
色好み行為。また、色恋のことば。すきわざ。
伊勢物語(10C前)七一「かの宮にすきごといひける女」
② 物好きなこと。
※竹取(9C末‐10C初)「『たつのくびの玉取りえずは、帰り来な』とのたまへば、〈略〉かかるすき事をしたまふ事とそしりあへり」

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デジタル大辞泉 「好事」の意味・読み・例文・類語

こう‐じ〔カウ‐〕【好事】

よいこと。喜ばしいこと。
よい行い。
こうず(好事)
[類語]吉事慶事おめでた寿ことぶききちめでたい喜ばしい慶賀恭賀謹賀奉賀奉祝慶祝大慶同慶御慶ぎょけい慶福祝賀祝着しゅうちゃく祝福祝勝喜ぶ大吉祝い事晴れの日賀する祝う祝することほぐ佳日吉日恐悦

こう‐ず〔カウ‐〕【好事】

珍しい変わった物事を好むこと。また、風流を好むこと。物好き。こうじ。
「余裕ある人に共通な―を道楽にしている」〈漱石

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普及版 字通 「好事」の読み・字形・画数・意味

【好事】こう(かう)じ・こう(かう)ず

よいこと。〔北夢瑣言、六〕晉の相和凝、少年の時好んで曲子詞を爲(つく)る。~丹(きつたん)夷門に入り、號して曲子相と爲す。謂(いはゆる)好事門を出でず、惡事千里に行くなり。

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