奈落(読み)ナラク

デジタル大辞泉 「奈落」の意味・読み・例文・類語

ならく【奈落/那落/×捺落】

《〈梵〉naraka音写奈落迦」の転》
地獄。また、地獄に落ちること。「―の苦しみを味わう」
物事最後の所。どん底。特に、これ以上はない、ひどい境遇。「―に沈む」
(奈落)劇場で、舞台花道床下地下室となっていて、回り舞台やせり出しの装置があり、通路にもなる。
[類語]地獄煉獄の世のちの世後世ごせ後生ごしょう来世冥土冥府冥界幽冥幽界黄泉こうせん黄泉よみ霊界草葉の陰泉下

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「奈落」の意味・わかりやすい解説

奈落
ならく

地獄の意。サンスクリットのナラカnarakaの音訳語で、那落迦、捺落迦、那羅柯とも記す。漢訳では地獄のほか、悪道、不可楽、不可救済、非行、闇冥(あんみょう)と訳す。同義語にニラヤniraya(泥犂、泥黎耶)がある。生前に悪業(あくごう)をなした者が、死後その報いとして呵責(かしゃく)を受け罪を償う地下牢獄(ろうごく)をいう。転じて、物事のどん底、どん詰まりの意に用い、また、劇場の舞台や花道の下に設けられた地下部分をもいう。

[丸山孝雄]

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改訂新版 世界大百科事典 「奈落」の意味・わかりやすい解説

奈落 (ならく)

劇場用語。舞台や花道の床下の総称。大正初期までの劇場は床下が4,5尺で,暗くて地獄の奈落の底のようであったことから,この称がある。回り舞台,セリスッポンなどの発達により床下も深さが必要となり,現在では動力機構装置が能率的に設置され,明るい地下室になっている。大道具製作場,各種倉庫,電気室などとして利用するところもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奈落」の意味・わかりやすい解説

奈落
ならく

劇場用語。舞台下の地下室で,舞台機構の機械などが置いてある場所。照明の不備だった江戸時代は真暗で地獄のようだというので名づけられた。今日では観客席の下まで広がり,明るくなっている。

奈落
ならく

仏教用語。サンスクリット語 narakaの音写で,地下にあるとされる世界。地獄と同一視される。言葉としては古く,ベーダ文献に現れている。

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普及版 字通 「奈落」の読み・字形・画数・意味

【奈落】ならく

地獄。

字通「奈」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の奈落の言及

【地獄】より

極楽地蔵【山折 哲雄】
【インド】
 〈地獄〉の語は元来サンスクリットのナラカnarakaまたはニラヤnirayaの訳で,地下にある牢獄を意味する。奈落(ならく)または泥犂(ないり)は音訳。仏教の世界観によると,贍部洲(せんぶしゆう)(われわれの住む大陸)の地下に種々の地獄がある。…

※「奈落」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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