奈半利川(読み)なはりがわ

日本歴史地名大系 「奈半利川」の解説

奈半利川
なはりがわ

徳島県境にある甚吉森じんきちがもり(一四二三・三メートル)と、その南側一帯の山間から流れ出る西にし川・なか川やひがし川の水を魚梁瀬やなせ貯水池に集めて魚梁瀬ダムより放流、途中曲流しつつも向きを南西に転じて土佐湾に注ぐ。延長五三キロ。安芸郡第一の河川で流域面積は三〇〇平方キロ余。上流は馬路うまじ魚梁瀬中流には北川きたがわ村、下流には東岸に奈半利町西岸田野たの町がある。支流は東岸に大谷おおたに川・小川こがわ川・野川のがわ川、西岸には西谷にしだに川などがある。急流で両岸に断崖が多く、古くは上・中流域には立入ることが困難であったため、山岳修行者には格好の修行場となったらしい。流域には平安時代の開基と伝える寺院がある。また隠れ里様相も呈し、上流の村々には平家落人伝説が伝えられる。

流域の年間降水量は三〇〇〇ミリを超え、魚梁瀬杉に代表される山林資源を育ててきた。この地の良材は社寺城郭の用材に望まれ、長宗我部元親以来中央政権への貢献品とされた。また御用商人の手で搬出されて藩庫を潤した。河口の港を挟んで奈半利と田野が繁栄を競ったのも、奈半利川がそうした木材や保佐木を流送するルートになったからである。

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改訂新版 世界大百科事典 「奈半利川」の意味・わかりやすい解説

奈半利川 (なはりがわ)

高知県東部を流れる川。安芸郡馬路村の徳島県境にある甚吉森(1423m)に源を発し,穿入(せんにゆう)蛇行しながら南西流し,北川村を経て,河口付近では奈半利町,田野町境界をなし,土佐湾に注ぐ。流長53km。流域面積311km2。流域は年間降水量3000mmを超える多雨地で,美林で知られる魚梁瀬(やなせ)など山林資源にめぐまれる。この地の良材は古くから奈半利川を通じて河口に運ばれた。明治末から昭和30年代まで森林鉄道による材木の搬出もみたが,現在は林道がとって代わった。第2次大戦後,電源開発も進み,長山,二又,魚梁瀬の発電所や久木ダム,魚梁瀬ダムなどがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「奈半利川」の意味・わかりやすい解説

奈半利川
なはりがわ

高知県南東部の安芸(あき)山地を南下して土佐湾に注ぐ川。延長55キロメートル。源流は馬路(うまじ)村魚梁瀬(やなせ)の千本山付近で、上・中流は曲流峡谷を形成。流域は年降水量3000~4000ミリメートルの多雨地で、林業地として知られる。近世には藩政林、近代には国有林が集積し、魚梁瀬スギの産地で有名。木材の搬出方法も筏(いかだ)流し、森林鉄道からトラック輸送とかわった。流量の多い急流で、第二次世界大戦後、電源開発も進み、魚梁瀬をはじめ多くのダムが建設された。流域の人口減少も著しいが、ユズの栽培なども盛んである。北川森林センターなどの保養施設や千本山の天然すぎ学術保護林もある。

[大脇保彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奈半利川」の意味・わかりやすい解説

奈半利川
なはりがわ

高知県東部,土佐湾南東岸に注ぐ川。全長 53km。高知,徳島の県境の甚吉森 (1423m) に発し,ほぼ南流する。上流域の魚梁瀬 (やなせ) 森林は国有林で,天然スギ林などで知られ,上・中流域では魚梁瀬ダム,平鍋ダムなどによる電源開発が進められている。また,下流域では野菜の施設園芸が行われる。

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