夷・蝦夷・戎(読み)えびす

精選版 日本国語大辞典 「夷・蝦夷・戎」の意味・読み・例文・類語

えびす【夷・蝦夷・戎】

〘名〙 (「えみし(蝦夷)」の変化した語)
① 古代のアイヌ。えぞ。えみし。
※月清集(1204頃)上「わが思ふ人だにすまばみちのくのえびすの里もうとき物かは」
② 都から遠く離れた未開人。野蛮人。異国人。
肥前風土記(732‐739頃)総記「遠く西の戎(えびす)を誅(つみな)ふに」
③ (おもに京都から東国をさして) 情趣を解しない田舎者。荒々しい武士。東蝦夷。
徒然草(1331頃)八〇「夷(えびす)は弓引く術(すべ)知らず」
④ 外国、未開の地。また、そこに住む人。蛮夷(ばんい)戎狄(じゅうてき)
※宇津保(970‐999頃)国譲下「えびすなりとも、わが宮をばとおぼしつつ」
今昔(1120頃か)九「勅を奉(うけたまはり)て夷域(えびすのさかひ)に行く」
[語誌](1)エミシ→エミス→エビス、と変化したもの。平安時代初期には既に「えびす」が一般的になっていたようである。
(2)坂上田村麻呂らの征討を経て、平安初期には、大和朝廷に敵対する勢力ではなくなったため、徐々に政治的意味あいが薄れて文化的な側面が強調されるようになった。
(3)①の意では平安中期以降、「えぞ」が用いられるようになる。
(4)江戸時代になると、「えびす」は、文語として意識され、「えびす男」「えびす心」等、複合語の中に残るか、または雅語的な表現の中にのみ用いられ、日常語ではなくなる。要因としては、今日同語源ともいわれる七福神の「えびす」との同音衝突が考えられる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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