太鼓踊(読み)タイコオドリ

デジタル大辞泉 「太鼓踊」の意味・読み・例文・類語

たいこ‐おどり〔‐をどり〕【太鼓踊(り)】

腹に太鼓や羯鼓かっこをつけて打ちながら踊る、風流ふりゅう系の民俗芸能かんこ踊り・臼太鼓うすだいこ踊り・風流獅子舞など各地に分布する。

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精選版 日本国語大辞典 「太鼓踊」の意味・読み・例文・類語

たいこ‐おどり ‥をどり【太鼓踊】

〘名〙 風流(ふりゅう)系の郷土芸能の一つ。中部地方西半から西日本一帯に広く行なわれ、羯鼓(かっこ)踊、臼太鼓踊ざんざか踊など名称多い。腹に太鼓や羯鼓をつけ、背に飾りをつけた一群中心に、大勢陣形を変えて踊るもので、雨乞いのときに踊る地方も多い。
諸国風俗問状答(19C前)大和国高取領風俗問状答「安芸にて、雨乞の願満踊を太鼓踊又は華笠踊ともいふ」

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改訂新版 世界大百科事典 「太鼓踊」の意味・わかりやすい解説

太鼓踊 (たいこおどり)

太鼓を打ちながら踊る芸能。東日本の一人立ちの獅子舞に対し,西日本の太鼓踊といわれ,西日本一帯に分布しており,種類も多い。盆の供養,害虫の駆除疫病の流行を除く目的などで踊るが,災厄を鎮送する祭りに踊られるものに華やかなものが多い。鹿児島県姶良(あいら)市の旧加治木町の太鼓踊は,17世紀初めに成立したもので,背に矢旗を負い締(しめ)太鼓を胸につけた大勢の太鼓打ちが,横1列に並ぶ4人の鉦(かね)打ちとともに,さまざまに陣形を変えてリズミカルに踊る。背に神籬(ひもろぎ)をつけたり,笠や冑をいただいたりした者が,胸や腹につけた太鼓や羯鼓(かつこ)を打ちつつ踊るものは,楽(がく)打ち,臼太鼓踊,羯鼓踊カンコ踊ともいい,各地に分布している。鹿児島県いちき串木野市の旧市来(いちき)町の七夕踊の太鼓踊は,風流の笠をつけた太鼓打ちが,小さめの太鼓を左手に持ち,右手のばちで打ちつつ踊る。熊本県天草市の旧栖本町の太鼓踊は,1基の大太鼓を12人の踊り手が順番に両手のばちで打つ踊りを見せる。太鼓の音は雷鳴をおもわせるので,福岡県豊前市山田町の大富神社の楽打ちのように,雨乞いに用いられることも多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太鼓踊」の意味・わかりやすい解説

太鼓踊
たいこおどり

太鼓を打ち鳴らしながら踊る民俗芸能。太鼓はもともと神を降ろすための呪具(じゅぐ)であったところから、太鼓を神聖視するところは多く、災厄(さいやく)を払うとされてきた。害虫の駆除や疫病送りには大掛りで華やかな行列を組み、村々の祭りには列を組んで道行をし、盆には供養踊として家々を巡る。供養のための太鼓踊には念仏踊の要素も入っており、また古くからある田植の際の田楽踊(でんがくおどり)が風流(ふりゅう)化したものも多い。太鼓の音が雷鳴を思わせるところから雨乞(あまご)いにも用いられる。

 一般的には、踊り子が各自胸または腰に太鼓をかけ、それを打ちながら集団で踊る西日本に多く分布する踊りをさす。かんこ踊、ざんざか踊、チャンココ、臼(うす)太鼓踊、楽(がく)、楽打(がくうち)、浮立(ふりゅう)などといい、花笠(はながさ)や神籬(ひもろぎ)を背につけて踊るもので、風流系である。一方、東日本に分布する鹿(しし)踊や角兵衛獅子(かくべえじし)といった一人立(だち)の獅子(しし)踊は、西日本の太鼓踊をもとに、頭に獅子頭(がしら)(鹿(かのしし)、猪(いのしし)、竜を含む)をいただいたものとみることができる。また、広義には中央に大太鼓を据えて、その周りを数人が踊り回りながら太鼓を打つ、東京都西多摩郡の鳳凰(ほうおう)の舞や京都府福知山市のまわり太鼓など、あるいはとくに選ばれた1人が打つ佐賀県の天衝舞(てんつくみゃー)浮立なども太鼓踊ということもできる。このように太鼓踊の機能と種類は多岐にわたり、日本の民俗芸能の大きな特色の一つを形成している。

[萩原秀三郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太鼓踊」の意味・わかりやすい解説

太鼓踊
たいこおどり

太鼓を打鳴らして踊る風流踊 (ふりゅうおどり) の一種。太鼓や羯鼓 (かっこ) を胸につけ,花笠をかぶり,神籬 (ひもろぎ) を背負って踊る。全国的に分布し,雨ごいに踊られることが多い。羯鼓踊,諫鼓 (かんこ) 踊,臼太鼓踊,ざんざか踊,雨乞踊などとも呼ばれ,東日本にみられる1人立ち獅子舞も同種の芸系とみられる。

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百科事典マイペディア 「太鼓踊」の意味・わかりやすい解説

太鼓踊【たいこおどり】

民俗芸能。風流踊の一種。太鼓あるいは羯鼓(かっこ)を腹あるいは背につけ神籬(ひもろぎ)を負った一団のものを中心に,さまざまに陣形を変えて踊る。羯鼓踊,臼(うす)太鼓踊,ざんざか踊,楽打ちなどともいい,雨乞いに踊られることも多い。

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世界大百科事典(旧版)内の太鼓踊の言及

【カンコ踊】より

…羯鼓踊とも書く。風流(ふりゆう)の太鼓踊の一つ。三重,石川,福井県に分布し,盆や地蔵盆,災厄退散・雨乞の祈願などに,胸に吊り下げた羯鼓(かつこ)(カンコと通称する締太鼓)を打ち鳴らして踊る。…

【ざんざか踊】より

…兵庫県養父(やぶ),宍粟(しそう),朝来(あさご),美方(みかた)の各郡などで盂蘭盆会(うらぼんえ)を中心に村の繁栄を祈願して踊られる太鼓踊の一種。太鼓の口唱歌(くちしようが)で〈ザンザカザットウ〉と言うのに名前は由来するが,〈ザンザコ踊〉〈鬼踊〉〈姫踊〉〈チャンチャコ踊〉などともいう。…

【風流】より

…室町時代後期の風流踊を支えた層と,当時の能・狂言を享受した層とは共通で,風流踊の趣向には能の曲が転用され,その入破(いりは)(キリ)が踊りの中で演じられたことも多い。
[民俗芸能の風流]
 京都の祇園会の山鉾,日立市神峰神社の〈日立の風流物〉に代表される作り物の風流はもとより,風流踊の系譜を引く太鼓踊・羯鼓踊(かつこおどり)・花踊・雨乞踊,囃子物の伝統である鷺舞などの動物仮装風流,胸に羯鼓をつけた一人立ちの獅子舞鹿踊(ししおどり)をはじめ,念仏踊(踊念仏)や盆踊など,全国の民俗芸能には風流の精神を受け継いだ芸能が多い。民俗芸能を分類する場合,それらを一括して〈風流系芸能〉と称するが,その芸態は一様ではない。…

【民俗芸能】より

… こうした信仰的機能が民俗芸能伝承の第1とするなら,第2は各地域社会の成人教育に果たした教育的機能である。すなわち,昔の村落では,子供組,若者組と年齢に応じたグループを組織して身心の鍛練に努めたが,そのとき教科に当てられたのが獅子舞,神楽,太鼓踊などの芸能で,祭りを迎えるまでの一定期間,宿に籠って先輩から厳しい稽古(けいこ)を受ける。その訓練を通じて一人前の人間としての精神と肉体をつくり上げるのであるが,その期間の先輩・後輩の交流を通じて,後輩は村と芸能の歴史を知り,また村落の構成員としての連帯感を強くもつ。…

※「太鼓踊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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