太極拳(読み)たいきょくけん

精選版 日本国語大辞典 「太極拳」の意味・読み・例文・類語

たいきょく‐けん【太極拳】

〘名〙 中国、宋代の張三峰を始祖とする拳法舞踊のように柔軟で、ゆるやかに円弧を描く動作が主で、現代では武術性よりも健康法や体力づくりのための医療体操として広く普及

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デジタル大辞泉 「太極拳」の意味・読み・例文・類語

たいきょく‐けん【太極拳】

中国で、明代末から清代初ごろに始められたという拳法。円を描くようなゆっくりした動作を深呼吸に合わせて行うのが特徴で、現在では武術としてよりも健康法として中国政府が奨励している。

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百科事典マイペディア 「太極拳」の意味・わかりやすい解説

太極拳【たいきょくけん】

中国武術の一つ。武術太極拳として行われると同時に,医療体操,健身術としても行われる。〈拳〉は武器を用いないで素手で闘う格闘技をさす。創始者については諸説があるが,明末・清初の武術家陳王廷(河南省温県陳家溝)とするもの,温県小留村の蒋発とするもの,山西省の王宗岳とするもの,道家が気功法を利用してつくったとするものなどがその主なものである。太極拳には,古典の太極陰陽学説,東洋医学の経絡理論,養生法の導引・吐納がとり入れられており,王宗岳の《太極拳論》が基本的な理論書となったことから,太極拳という名称が用いられるようになった。陳式,楊式,呉式,武式,孫式など多く流派があるが,源流とされるのは陳式である。陳式は纏糸(てんし)(らせん状のひねり)と発勁(はっけい)(瞬間的な激しい突きや蹴(け)り)を特徴とする。楊式は,陳家溝で陳式を学んだ楊露禅が始め,その孫楊澄甫が型を定めて一派をなした。動作はのびのびとして大きく,ゆるやかであるため,最も広く普及した。1949年中華人民共和国成立後体育活動の奨励政策の一環として1956年,国家体育運動委員会は伝統太極拳を蒐集(しゅうしゅう)整理し,制定太極拳を編集した。その一つが簡化24式太極拳である。その後,88式,48式などが相次いで発表された。1987年に第1回アジア武術選手権大会(横浜),1990年に第11回アジア競技大会(北京),1991年に第1回世界武術選手権大会(北京)の正式種目として競技化され,競技武術としても国際化が進められている。→拳法
→関連項目アジア競技大会体操

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改訂新版 世界大百科事典 「太極拳」の意味・わかりやすい解説

太極拳 (たいきょくけん)

中国武術の四大門(太極拳,形意拳,八卦掌(はつけしよう),少林拳)の一つで,長い伝統をもち多くの強剛を輩出した拳法。静かで柔らかな,円を描く動きを特色とする。創始者についてはいくつか説があり,明末・清初の武術家河南省温県陳家溝の陳王延とするもの,温県小留村の将発とするもの,あるいは山西省の王宗岳とするもの,道家の気功法を利用してつくったとするものなどである。いずれにしても太極拳には,古典哲学の陰陽説,漢方医学の経絡説,養生法の導引・吐納がとり入れられ,王宗岳の《太極拳》が基本的理論書となったために,太極拳という名称が確立した。都市部に普及するにつれいくつかの流派が形成されたが,源流とみなされるのは陳式である。らせん状の動きが特徴で,激しい突き蹴りを含み,1928年陳発科が北京に伝えた。陳家溝で陳式を学んだ楊露禅が1850年代に北京に伝え,その孫楊澄甫が型を定めて一派をなしたのが楊式で,動作はのびのびとして大きく,ゆるやかであるため,最も広く普及した。他に呉式,武式,孫式などがある。1956年中国国家体育運動委員会で楊式をもとに制定された簡化24式太極拳は,初心者の入門の型をつくり,健康・体育のために大きな貢献をし,日本への普及にも核となった。制定拳はその後,88式,48式,32式拳など相次いで発表され,また陳式36,38などもつくられている。武術としては,意を用いて力を用いず,あるいは全身のエネルギーを集中する発勁を身につけることが必要とされるなど,長い修練を要する高度な拳法である。
拳法
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「太極拳」の意味・わかりやすい解説

太極拳
たいきょくけん / タイチーチュワン

太極拳は、中国の明(みん)朝末から清(しん)朝初のころ(17世紀)に、河南省に居住する陳(ちん)姓の一族の間で創始された拳法の一種(陳式太極拳)である。その変幻無窮の技法を、古代思想の「太極説」(陰陽理論)によって説き、拳法の名称としたのである。

 陳式太極拳には、大架(だいか)(架は姿勢・動作)と小架、老架(古伝の型)と新架(新しい型)の種類があり、のちに楊(よう)式、呉(ご)式、武(ぶ)式(郝(かく)式)、孫(そん)式などを派生した。

 各派の太極拳は80前後の技法動作が連結されている拳法の型(套路(とうろ))であり、源流の陳式を除き、一様にゆっくりとした深長呼吸にあわせて、緩やかに円形運動を行うのが大きな特徴であり、意識・呼吸・動作の協調運動である。

 源流の陳式は、本来、実戦武術として考案されたものであり、柔軟で緩やかな動作のなかに、激しく力強い動作を含み、円形動作には螺旋(らせん)状のひねり(纏絲(てんし))を伴い、打撃には発勁動作(瞬発力を打ち出す)のが特徴である。

 太極拳は、治病と健身に効果が認められることから、近年では健康法として多くの人に行われ、1956年に中国の国家体育運動委員会は、もっとも広く普及している楊式太極拳の型を縮小(重複動作を省略)し、動作を左右均等にした簡化(かんか)太極拳を制定し、「治病健身体操」として国民に奨励している。

[松田隆智]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「太極拳」の意味・わかりやすい解説

太極拳
たいきょくけん

中国の伝統武術。柔軟な動作が老人,虚弱者の鍛練に適しているので,日本でも広く健康法として人気がある。特に高血圧,心臓病,慢性気管支炎などの慢性病に対し,治療と予防の効果があるといわれる。いくつかの流派があり,それぞれに特色を有するが,以下の5派に大別される。 (1) 陳式太極拳 創始者・陳王廷 (明末清初) 。 (2) 楊式太極拳 創始者・楊露禅 (1800~73) 。 (3) 武式太極拳 創始者・武禹襄 (1812~80) 。 (4) 孫式太極拳 創始者・孫禄堂 (1861~1932) 。 (5) 呉式太極拳 創始者・呉鑑泉 (1870~1942) 。なお近年は,伝統的な太極拳を改編した「簡化太極拳」がつくられている。

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知恵蔵 「太極拳」の解説

太極拳

中国武術の1つ。その起源は数千年前に遡るといわれ、伸びやかで大きく、ゆったりとした動作が特徴。やわらかい動きで相手の力を外し、そのバランスを崩して倒す。日本では1970年頃から、健康法として普及。愛好者は100万人といわれる。伝統的な太極拳には陳式、楊式、呉式、孫式などがあり、現在は広く普及するために定められた規定太極拳(24式、48式、88式)が最も広く行われている。競技用には総合太極拳(42式)が定められている。国際大会は5分以上6分以内の演武で、姿勢と動作の正しさ、精神の表現などについて5人の審判員が10点満点で採点。

(安藤嘉浩 朝日新聞記者 / 2007年)

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世界大百科事典(旧版)内の太極拳の言及

【拳法】より

…また拳法を技の性質からみると,内家(ないか)拳と外家(がいか)拳に区別できる。内家拳とはその威力が内に隠れている拳法のことで,柔拳ともいい,太極拳,形意拳,八卦掌(はつけしよう)などがある。力を抜いて体を柔らかくし,動作も呼吸と合わせて緩慢に行う。…

※「太極拳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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