太平洋・島サミット(読み)たいへいようしまさみっと(英語表記)Pacific Islands Leaders Meeting

日本大百科全書(ニッポニカ) 「太平洋・島サミット」の意味・わかりやすい解説

太平洋・島サミット
たいへいようしまさみっと
Pacific Islands Leaders Meeting

日本太平洋諸島フォーラム(Pacific Islands Forum:PIF)に加盟する島嶼(とうしょ)国や地域の代表を招き、3年ごとに開催する首脳会議。正式名称は日本・太平洋諸島フォーラム首脳会議、略称PALM。1997年(平成9)に第1回会議が東京で開かれ、日本、オーストラリアニュージーランドが主要援助国となり、フィジーをはじめとした島嶼国と地域が開発途上国として参加した。

 1970年代、太平洋には多くの国家が誕生したが、これらの国々と日本の間には、太平洋を共有する国家や地域としての緊密な連携が生まれてこなかった。そこで日本は島嶼国の援助を通し、人的な交流や経済の振興、海域や地域の安定を図ることを目的とした太平洋・島サミットを開催した。日本は会議のたびに多くの支援策を打ち出している。

 2012年5月に沖縄県名護市で開かれた第6回会議は、太平洋島嶼国13か国1地域、日本、オーストラリア、ニュージーランドに加え、アメリカが初参加(17か国1地域)し、「沖縄キズナ宣言」とする首脳宣言を採択した。宣言では、防災協力の面において日本主導で「自然災害リスク保険」を創設し、地震や津波に備えた早期警報システムの整備を支援するなどの新たな援助策が盛り込まれた。一方、この会議は、中国の海洋覇権の拡大がアジア太平洋地域で問題となるなか、アジア太平洋地域の連携を重視しているアメリカが初参加するという微妙な状況下での開催となった。会議では、海洋問題が初めて議題となり、漁業や環境保護の分野での協力関係、領海規定などにおける国際法や海洋ルールについて国連海洋法条約の重要性が確認された。

[編集部]

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知恵蔵 「太平洋・島サミット」の解説

太平洋・島サミット

日本が太平洋島しょ国会議(PIF)加盟国の首脳を招待し、3年に1度日本で開催する首脳会議。日本、オーストラリア、ニュージーランドが援助供与国として、フィジーを筆頭に島しょ国から14カ国・地域が途上国として参加する。1997年の第1回首脳会議以来、定例化している。2006年5月に沖縄県で開かれた第4回首脳会議では、小泉首相とパプアニューギニアのマイケル・ソマレ首相が共同議長を務め、「より強く繁栄した太平洋地域のための沖縄パートナーシップ」という宣言を採択した。すべての島しょ国は日本の国連安全保障理事会常任理事国入りを支持する日本支持派で、日本外交にとって確実に票読みができるありがたい存在。しかし中国は06年4月、中国・太平洋島しょ国経済開発協力フォーラムをフィジーで開いて、存在感を急速に高めようとしており、日本の影響力は相対的に低下する可能性もある。このため日本政府は今後3年間で450億円の政府開発援助(ODA)を供与することを発表した。支援策の柱は感染症・防災対策、IT(情報技術)専門家や行政官の人材育成、青少年の交流などで、人材育成を日本の比較優位と位置づけ、中国との差別化を意識している。

(竹田いさみ 獨協大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「太平洋・島サミット」の解説

太平洋・島サミット

太平洋島嶼(とうしょ)国・地域の首脳級による会議。略称「PALM」。1997年、日本が太平洋島嶼国・地域との関係を強化する目的で創設し初開催され、以降3年毎に日本で行われている。2015年5月、福島県いわき市で開催された「第7回太平洋・島サミット(PALM7)」の参加国は、日本、ミクロネシア、パラオ、ナウル、マーシャル、キリバス、パプアニューギニア、ソロモン、バヌアツ、フィジー、サモア、トンガ、ツバル、クック、ニウエ(地域)、オーストラリア、ニュージーランド、米国(第6回より参加)の18カ国・地域。

(2015-5-25)

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