天狗の爪(読み)てんぐのつめ

精選版 日本国語大辞典 「天狗の爪」の意味・読み・例文・類語

てんぐ【天狗】 の=爪(つめ)[=爪石(つめいし)

(さめ)の歯の化石俗称
雲根志(1773‐1801)後三「俗に天狗(テング)の爪石(ツメイシ)といふ物形爪のごとく長さ壱弐寸」

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デジタル大辞泉 「天狗の爪」の意味・読み・例文・類語

てんぐ‐の‐つめ【天×狗の爪】

大きなサメの歯の化石のこと。第三系から産出

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改訂新版 世界大百科事典 「天狗の爪」の意味・わかりやすい解説

天狗の爪 (てんぐのつめ)

漸新世から現世にかけて生息しているホオジロザメ属などのサメの歯の化石。とくに漸新世から鮮新世にかけての地層から出るカルカロドン・メガロドンCarcharodon megalodonが有名である。ホオジロザメ属(カルカロドン)は軟骨魚綱板鰓(ばんさい)亜綱ネズミザメ科の1属である。大きな正三角形に近い形の歯をもち,最も獰猛(どうもう)なサメとされている。カルカロドン・メガロドンは巨大なサメで少なくとも全長15mはあったと考えられている。現生種のホオジロザメは世界の暖海に生息し,全長8m程度に達する。ホオジロザメ属は現生のものは1種であるが,化石としては中新世~鮮新世にかけてカルカロドン・スルキデンスC.sulcidens,カルカロドン・アングスティデンスC.angustidensなど数種が生息していたことがわかっている。〈天狗のつめ〉として神社仏閣などに奉納されているサメの歯にはホオジロザメ属のもののほかにアオザメ属,イタチザメ属,シロワニ属,ネズミザメ属などの歯もある。

 これらのサメの歯の化石が〈天狗のつめ〉とよばれるのは,歯冠が三角形で光沢があり,その感じが先のとがったつめに似ているからであろう。すでに江戸時代の《雲根志》にも出ており,各地宝物とされている。西洋においても〈舌石glossopetra〉といったり,海の怪獣の歯とみなされていたようである。日本では〈天狗のつめ〉なるサメの歯の化石は北海道から沖縄に至る各地から発見されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天狗の爪」の意味・わかりやすい解説

天狗の爪
てんぐのつめ

サメ類の歯の化石に対する日本におけるかつての呼称。日本の新生代古第三紀と新第三紀の地層からは多くのサメの歯の化石が産出するが、これらのうち、もっとも大きなカルカロドン・メガロドンは天狗の残したものと考えられていた。江戸時代の本草(ほんぞう)学者木内石亭(きうちせきてい)は『天狗爪石奇談』や『雲根誌』のなかで、これにまつわる多くの俗説を紹介している。藤沢の遊行(ゆぎょう)寺や江島(えのしま)弁天などではこの化石が「天狗の爪」として信仰の対象となっている。

[籔本美孝]


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百科事典マイペディア 「天狗の爪」の意味・わかりやすい解説

天狗の爪【てんぐのつめ】

サメの歯の化石の俗称。一般に青灰色の三角形で光沢がある。第三紀のカルカロドン(現在はカルカロクレスという)類のものが特に大きく,高さ15cmに及ぶ。

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