天然ガス鉱業(読み)てんねんがすこうぎょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「天然ガス鉱業」の意味・わかりやすい解説

天然ガス鉱業
てんねんがすこうぎょう

天然ガス鉱業は、地下に埋蔵されている可燃性の天然ガスを採取する産業である。対象となる天然ガスには、油田ないしその周辺の含油地層にある油田ガス炭田の夾炭(きょうたん)層にある炭田ガス石油石炭を含まない地層にある水溶性ガス(ガス田ガス)の3種類がある。

 天然ガスの採取は、19世紀後半以降本格化し、20世紀前半はおもにアメリカ合衆国とソ連の2か国で生産が大規模に行われてきた。しかし、第二次世界大戦後西ヨーロッパ諸国でもガス田の開発が盛んとなり、ポー川流域(イタリア)、ラック(フランス)、フローニンゲンオランダ)、北海イギリスノルウェー)などがおもな産地となった。さらに、天然ガスの液化技術の開発によって、LNG液化天然ガス)の海上遠距離輸送が可能となり、従来油田で燃やされるだけであった天然ガスも商品化され、中東インドネシアベネズエラ、メキシコ、アラスカなど産油国の天然ガス生産が急増した。

 1996年、世界の天然ガス生産は約2兆2000億立方メートルに達し、おもな生産地は、CIS(独立国家共同体、バルト三国を除く旧ソ連地域)32.3%、アメリカ25.2%、イギリス・オランダ・ノルウェーの北海沿岸諸国8.7%、カナダ8.1%、中東6.4%、インドネシア・マレーシア・ブルネイ4.5%などであった。2005年の統計では、世界の天然ガス生産は約2兆7630億立方メートルとなり、おもな生産地と産出量は、ロシア5980億立方メートル、アメリカ5257億立方メートル、カナダ1855億立方メートル、イギリス880億立方メートル、イラン878億立方メートル、アルジェリア870億立方メートル、ノルウェー850億立方メートル、インドネシア760億立方メートル、オランダ695億立方メートル、サウジアラビア629億立方メートルなどである。地域別の割合では、北米27%、中南米5%、ロシア・ヨーロッパ・CIS諸国38%、中東11%、アフリカ6%、アジア太平洋13%となっている。

 生産の担い手は、産油国、および一部のヨーロッパ諸国では国営企業が、アメリカその他の諸国では主として石油会社となっている。先進国では、発電用燃料、都市ガス、化学工業用原料として使用されている。

 わが国では、たとえば1996年度(平成8)の国内天然ガス生産量は、22億立方メートルであったのに対し、輸入液化天然ガスは4651万トンで、輸入依存度は実に96.5%であった。天然ガスは、石炭や石油に比較して炭酸ガス発生量が少ないことから地球に優しいエネルギーとしての評価が高く、液化天然ガスの輸入は増加傾向にある。1996年度のおもな輸入先は、インドネシア39%、マレーシア20%、ブルネイ12%、オーストラリア16%と、東南アジアおよびオーストラリアからであり、ほかにアブ・ダビ、アラスカなどからの輸入もあった。2005年(平成17)の国内天然ガス生産量は、約30億立方メートル(日本の消費量の約4%に相当)であるのに対し、輸入液化天然ガスは約5801万4000トンで、輸入依存度は約96%となっている。おもな輸入先は、インドネシア24.6%、マレーシア23.4%、オーストラリア17.5%、カタール10.9%、ブルネイ10.8%、アラブ首長国連邦(UAE)8.8%、アメリカ2.2%、オマーン1.7%、その他0.1%と、東南アジアおよびオーストラリア、中東に集中している。

 国内の天然ガス生産の中心は、新潟ガス田(片貝(かたがい)、南長岡(みなみながおか)、東新潟・阿賀(あが)沖、東柏崎(ひがしかしわざき))、千葉ガス田(茂原(もばら)・東金(とうがね))、磐城(いわき)沖、北海道の勇払(ゆうふつ)などである。新潟・千葉県では天然ガスを利用した化学工業が発達しているとともに、家庭用燃料としても利用されている。2004年度の統計では、国内天然ガス生産量は29億5700万立方メートル、生産量の多いガス田としては、南長岡ガス田7億7600万立方メートル(国内生産の26.3%)、勇払ガス田3億5100万立方メートル(同11.9%)、片貝ガス田3億1300万立方メートル(同10.6%)、磐城沖ガス田2億3900万立方メートル(同8.1%)、東新潟ガス田2億3400万立方メートル(同7.9%)、吉井ガス田2億0700万立方メートル(同7.0%)、茂原ガス田1億8600万立方メートル(6.3%)などがある。

 わが国の一次エネルギー供給に占める割合は、国内天然ガスの生産はわずか0.4%であるのに対し、輸入LNGは11%に上っている(1996年度)。政府は、石油の代替エネルギーの中心の一つとしてLNGの輸入を重視している。2004年度のわが国の一次エネルギー供給における天然ガスの割合は、約13%であるが、その多くを輸入に依存しており、国内天然ガスの生産は総供給量の3.5%となっている。

[矢田俊文]

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