天保水滸伝(読み)てんぽうすいこでん

精選版 日本国語大辞典 「天保水滸伝」の意味・読み・例文・類語

てんぽうすいこでん【天保水滸伝】

江戸末期の実録体小説。四編六〇巻。陽泉主人尾卦伝述。嘉永三年(一八五〇成立。当時下総一帯で起きた、博徒の二集団、飯岡助五郎一家と岩瀬笹川)繁蔵一家の争いをあつかったもの。写本で伝わり、合巻歌舞伎講談などに影響作がある。

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デジタル大辞泉 「天保水滸伝」の意味・読み・例文・類語

てんぽうすいこでん【天保水滸伝】

講談。笹川繁蔵ささがわのしげぞう飯岡助五郎いいおかのすけごろう確執勢力富五郎せいりきとみごろう自殺中心に、下総しもうさの利根川周辺の侠客の争いを描く。浪曲・歌舞伎などにも取り入れられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「天保水滸伝」の意味・わかりやすい解説

天保水滸伝
てんぽうすいこでん

講談。宝井琴凌(きんりょう)、5代伊東陵潮(りょうちょう)作。1844年(天保15)8月に実際に起こった飯岡助五郎(いいおかのすけごろう)一家と笹川繁蔵(ささがわのしげぞう)一家との大利根(おおとね)の決闘と、1849年(嘉永2)4月の勢力富五郎(せいりきのとみごろう)の自殺を中心とする、下総(しもうさ)の侠客(きょうかく)の争いを講談化したもの。1856年(安政3)、別個に取材した琴凌と陵潮がそれぞれ材料を提供しあって一つに仕上げ、琴凌が命名したという。しかし嘉永(かえい)3年(1850)の年記のある実録体小説の序文を信ずれば、このほうが先行する。河竹黙阿弥(もくあみ)によって『群清滝贔屓勢力(むれきよたきひいきのせいりき)』(1867)の題で劇化されてもいるが、近年では講談よりも、正岡容(いるる)脚色浪花節(なにわぶし)が2代玉川勝太郎の名調子によって著名である。助五郎を悪玉、繁蔵を善玉に描くのは、十手持ちであった助五郎が闇(やみ)打ちをかけ、長命を保ったためであろうが、実在の助五郎は網元として漁業振興に尽力したなどの擁護論もある。「笹川の花会(はながい)」の条は登場人物が多く華やかで好まれ、「平手の駈(か)けつけ」の条も、虚無的な剣客平手造酒(みき)(実在人物名平田深喜(みき))の個性が魅力的なため、よく読まれる。

[延広真治]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「天保水滸伝」の解説

天保水滸伝
てんぽう すいこでん

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
明治9.11(大阪・阪栄座)

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