大鼓(読み)オオツヅミ

デジタル大辞泉 「大鼓」の意味・読み・例文・類語

おお‐つづみ〔おほ‐〕【大鼓】

能・長唄などの囃子はやしに用いる打楽器の一。大型で、左ひざの上に横たえて右手で打つ。おおかわ。大胴。→小鼓こつづみ

おお‐かわ〔おほかは〕【大鼓/大革】

おおつづみ

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精選版 日本国語大辞典 「大鼓」の意味・読み・例文・類語

おお‐つづみ おほ‥【大鼓】

〘名〙
① 大型の鼓。楽器としての用途ほかに、軍用として志気を励まし、また、命令を伝達するためにも用いた。〔二十巻本和名抄(934頃)〕
能楽などで、左の膝の上に横たえて打つ、はやし用の大型の鼓。兄鼓(えつづみ)。大革(おおかわ)。⇔小鼓(こつづみ)。〔新撰類聚往来(1492‐1521頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「大鼓」の意味・わかりやすい解説

大鼓 (おおつづみ)

日本の打楽器の一種。おおかわ(大鼓,大革),大(だい)ともいう。能,狂言,歌舞伎囃子などで使われる。中央が細くくびれた桜材の胴に,鉄輪に馬皮を張った表革・裏革計2枚をあて,麻の調緒(しらべお)で締める。調穴は6個。小鼓より大きく,胴の中央に鍔(つば)という飾り彫のあること,革に漆を塗らないことが小鼓と異なる。能楽や歌舞伎囃子では小鼓と対で用いる。能では小鼓に先がけて打ち,基本の拍を中心に刻み,囃子の進行のサインを打ち出す役目もする。演奏前に革を炭火で焙(ほう)じて乾燥させ,調緒でつよく締め上げ,さらに小締メという緒で調緒を締めて,上から化粧調(胴縄とも呼ぶ)という緒をかけて飾る。こうして小鼓と対照的な硬く烈しい音色が生まれる。打音に強弱の差はあるが,音色はのぞめない。それだけに打音の前の掛け声の変化が重視される。1時間以上かかるような曲では演能中に革が湿気を帯びるので,予備の鼓ととりかえる。左手で調緒を握って左膝にのせ,右手で表革を打つ。通常,手の保護のために指皮(和紙を固めたサック)を指にはめ,手のひらにも皮を当てる。革は消耗が激しく,10回くらいで廃物となる。
小鼓 →
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大鼓(革) (おおかわ)

大鼓(おおつづみ)

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百科事典マイペディア 「大鼓」の意味・わかりやすい解説

大鼓【おおつづみ】

日本の伝統的な打楽器。皮面の直径23cmぐらい,胴長約29cmのやや大型の(つづみ)。〈おおかわ〉とも。能楽や長唄の囃子(はやし),下座(げざ)音楽,民俗芸能などに小鼓とともに使用される。小鼓と組にして〈大小(だいしょう)〉ともいう。皮を締めている調緒(しらべお)を左手で握り左膝(ひざ)にのせ,右手で打つ。右手の人差し指と中指に,ときには薬指にも指皮をはめ,てのひらに当て皮を当てる。民俗芸能では細い桴(ばち)でたたくなど特殊な演奏法もある。
→関連項目四拍子

大鼓【だいこ】

中国古来の大きな樽型両面太鼓。中国語ではダーグー。4脚の架に膜面を上下にして吊し,上面を1本または2本のバチで打奏。打奏した瞬間にバチを膜面の中央にむかって動かして音色を変化させることができる。

大鼓【おおかわ】

大鼓(おおつづみ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大鼓」の意味・わかりやすい解説

大鼓
おおつづみ

日本楽器の一種。打楽器。鼓の大型のもの。「おおかわ」ともいう。胴の長さ約 28cm,両端部の直径約 12cm,革面の直径約 23cmで,胴の両端に鉄製の輪に馬皮を縫いつけた表革と裏革を当て,6ヵ所の調孔に縦調べを交互に通して締め,これを小締めで固く締めつけたのち,装飾的に胴縄を掛ける。演奏の前に革を乾燥緊張させるため,表革,裏革を炭火で 30分ほどあぶる。大鼓は左膝の上に構えて,指革,当て革をつけた右の長い指3本で3種類の音「頭 (かしら) 」「甲 (かん) 」「乙 (おつ) 」を打ち分ける。能や歌舞伎の出囃子で松羽目物「勧進帳」のような大曲の場合には床几 (しょうぎ) に腰掛けても奏するが,そのほかは正座して奏する。能関係の流派には葛野流,高安流,大倉流,石井流,観世流などがあり,譜は異なるが奏法には大差がない。歌舞伎,長唄関係では特に太鼓を専業とする流派はなく,田中,望月,竪田,藤舎などの諸派より太鼓奏者を輩出している。

大鼓
おおかわ

大鼓」のページをご覧ください。

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音楽用語ダス 「大鼓」の解説

大鼓

“おおかわ”とも呼ぶ。小鼓とペアで用いられ、小鼓同様ひもで締められ、砂時計のように胴がくびれている。能楽などでは楽器を右膝に乗せ、左手でひもを握って固定し、指皮などをはめた右手で打つ。小鼓のような音高・音色の変化はないが、非常に乾いた硬質な音がする。また、大鼓奏者の掛け声は小鼓や太鼓奏者らのそれより重要とされ、大鼓奏者が全体のリズムを統制している。

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世界大百科事典(旧版)内の大鼓の言及

【鼓詞】より

…作品は賈鳧西(かふせい)《木皮散人鼓詞》などがある。また元・明時代の詞話とその系統を引くもの,さらに現在は大鼓及びその歌詞を指す。大鼓はおもに北方各地で民衆に親しまれ,小説や音楽と密接に結びついて発展し,芝居にも影響を与えた。…

【堂鼓】より

…木製の胴の両面に牛革を張り,木架上に設置して,2本の木槌で上から打奏する。大小の別があり,形が大きく音高が低いものを大堂鼓,南堂鼓,大鼓とも称し,形が小さく音高が高いものを京堂鼓,戦鼓,小鼓とも言う。大鼓は,鼓面の面積が大きく,音量や音色の変化も豊富で,主に十番鼓(10種の楽器を使っての合奏),吹打等の鑼鼓(らこ)()を中心とする各地の民間器楽合奏で用いられる。…

【太鼓】より

…世界各地の太鼓の音色は,その地域の気候・風土の影響を大きく受けており,乾燥した西南アジアと高音多湿の東南アジアの太鼓の音色との基本的な相違は,その明らかな表れである。特殊な例としては,日本の小鼓と大鼓(おおつづみ)があげられよう。小鼓の革は適度な湿りけが必要なため,奏者はつねに息をかけたり調紙(しらべがみ)(調子紙ともいい,つばでぬらした和紙を革にはる)をはったりして,小鼓独特の丸みある音色を保つことに努める。…

【鼓】より

…正倉院蔵の〈弾弓散楽図〉には鼓を桴や手で打つようすが描かれている。こうしたさまざまな鼓が中国から伝来し使われ,やがて小鼓,大鼓(おおつづみ)が日本で成立した。小鼓は壱鼓を祖とし,民間芸能で曲芸的に扱われてきたが,右肩上に定置され,猿楽の楽器となった。…

【能】より

…構造面では能本(のうほん)の詞章やその小段(しようだん)構成など,技法面では謡の美を息扱いとリズムの細かな変化に求めることなどがそれである。なお,囃子は,世阿弥のころすでに笛,鼓(つづみ),太鼓(たいこ)が用いられていたが,小鼓(こつづみ),大鼓(おおつづみ)の区別があった確証はなく,現在の囃子の楽型が確認できる資料は,江戸時代初頭のものまでしかさかのぼれない。狂言猿楽
【能本】
 能の脚本を古くは能本と呼んだ。…

※「大鼓」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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