大麻(神道)(読み)おおぬさ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大麻(神道)」の意味・わかりやすい解説

大麻(神道)
おおぬさ

大幣とも書く。「ぬさ」とは『万葉集』や『古今集』に奴佐(ぬさ)、幣(ぬさ)とみえ、本居宣長(もとおりのりなが)が『古事記伝』に「奴佐は神に手向(たむけ)る物をも云(いう)、又祓(はらえ)に出す物をも云」と解したように、麻(あさ)や木綿(ゆう)などでつくった神に奉る供え物、また罪穢(つみけがれ)を祓う祓串(はらえぐし)や贖物(あがもの)を意味する。『古事記』の仲哀(ちゅうあい)天皇条に「国之大奴佐」をもって、生剥(いきはぎ)・逆剥(さかはぎ)・阿離(あはなち)などの罪ごとを清める国の大祓(おおはらい)をなすとある。大麻とは、不浄を清める祓麻(はらいぬさ)にこもる神霊の働きをとなえたもの。さらに大麻とは、伊勢の神宮大麻(じんぐうたいま)をさす。『吾妻鏡(あづまかがみ)』によれば、1180年(治承4)源頼朝(よりとも)が神宮祠官(しかん)に千度祈祷(きとう)を依頼したとある。そのように神宮の御師(おんし)が祈りを込めた御祓大麻(おはらいたいま)を全国の檀家(だんか)に配り歩く風俗は、江戸時代に最盛期を迎えた。しかし1872年(明治5)、神宮制度の変更に伴い従来の御祓大麻を神宮大麻と改称。広く全国の崇敬者に対して、伊勢神宮朝夕に礼拝するよりどころとなるように、神宮司庁から頒布(はんぷ)されている。

[中西正幸]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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