大首絵(読み)おおくびえ

精選版 日本国語大辞典 「大首絵」の意味・読み・例文・類語

おおくび‐え おほくびヱ【大首絵】

〘名〙 浮世絵版画一つ役者美人などの顔を強調して大きく描いた一枚摺り。歌川豊国東洲斎写楽作品が有名。大首

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デジタル大辞泉 「大首絵」の意味・読み・例文・類語

おおくび‐え〔おほくびヱ〕【大首絵】

浮世絵版画の一形式。人物上半身を大きく、その表情を特に強調して描いたもの。写楽役者絵歌麿美人画などが有名。

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百科事典マイペディア 「大首絵」の意味・わかりやすい解説

大首絵【おおくびえ】

半身像または顔を主に描いた浮世絵。顔だけのものは大顔絵ともいう。局限された描写対象の中に,理想女性美俳優性格描写が追求された。歌麿写楽の出た寛政初頭(1800年ころ)が全盛時代。
→関連項目喜多川歌麿雲母摺東洲斎写楽

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大首絵」の意味・わかりやすい解説

大首絵
おおくびえ

浮世絵の用語。美人や役者などの人物を胸像構図で描いた作品。とくに顔面だけを大きく描いたものを区別して、大顔絵(おおがおえ)とよぶ説もある。その初期は、錦絵(にしきえ)が完成される以前の享保(きょうほう)年間(1716~17
36)ごろとされるが、作例はきわめて少ない。多くみられるようになるのは安永(あんえい)年間(1772~1781)ごろからで、浮世絵終焉(しゅうえん)期の明治年代に至るまで多くの絵師によって描かれた。そのなかでも、役者絵では、勝川春草(かつかわしゅんそう)をはじめとする勝川派の絵師や東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)、歌川豊国(とよくに)、歌川国政(くにまさ)などが知られ、美人画では喜多川歌麿(うたまろ)、細田栄之(えいし)、栄松斎長喜(えいしょうさいちょうき)などが名作を残している。

[永田生慈]


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「大首絵」の解説

大首絵
おおくびえ

浮世絵版画の一種で,人物の上半身または顔面のみを大写したものの総称。役者絵を専門とした鳥居派の作品中にすでに萌芽がみられたが,役者の個性の表現を求める時代の流れに呼応してか,安永・天明頃,勝川春章・一筆斎文調(いっぴつさいぶんちょう)らが大首絵の役者似顔絵を完成した。寛政期の喜多川歌麿の美人画と,ほぼ同時期の東洲斎写楽の役者絵は,大首絵の頂点をきわめたものとして評価が高い。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大首絵」の意味・わかりやすい解説

大首絵
おおくびえ

浮世絵のうち,美人や役者の上半身や顔を大きく描写した絵。人物表現の極致として現れ,東洲斎写楽喜多川歌麿など中期浮世絵師の作品に多い。

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旺文社日本史事典 三訂版 「大首絵」の解説

大首絵
おおくびえ

人物画の手法の一つ
美人画・役者絵などで,容貌を中心にして画面構成されたものをいう。江戸後期の浮世絵で喜多川歌麿は美人画に,東洲斎写楽は役者絵にこれを用いて有名。

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世界大百科事典(旧版)内の大首絵の言及

【浮世絵】より

…清長の美人画像は八頭身の理想的なプロポーションをとり,大判二枚続,三枚続の大画面に展開され,開放的な野外風景の中で,群像として知的に構成される。ついで寛政年間(1789‐1801)には喜多川歌麿が,現実の遊女や町娘,あるいは身分,性状を特定された女性を半身像(大首絵(おおくびえ))に描き,微妙な心理や感情の表現に新風を開いている。浮世絵美人画は,これら春信,清長,歌麿の3巨匠によって成熟の頂点に達した感があり,その余の画家は3者の個性的な様式にわずかな変容を加えたにすぎない。…

【喜多川歌麿】より

…1791年(寛政3)幕府の風俗粛正策により,蔦重も山東京伝の洒落本出版の科で身上半減の刑を受ける。その痛手回復に選ばれたのが歌麿であり,美人の半身像を描いた〈大首絵(おおくびえ)〉シリーズであった。その目論見は図に当たり,俗流観相学と絡ませた《婦女人相十品》《婦人相学拾躰》《歌撰恋之部》の試みは,従来の美人画を一変させるほどの人気を博し,歌麿の声価も定まった。…

【役者絵】より

…勝川春章と一筆斎文調がその功績者であり,両者合作の《絵本舞台扇(ぶたいおうぎ)》(1770)は記念碑的作例として知られる。さらに春章門下の勝川春好,勝川春英(勝川派)らにより,大判錦絵の役者半身像〈大首絵(おおくびえ)〉形式が考案され,その延長線上に鬼才東洲斎写楽が登場する。 写楽は,1794年(寛政6)の夏狂言に取材して28枚の役者大首絵を発表,彗星のように浮世絵界にデビューするが,翌年初春の作品を最後に消息を絶ってしまった〈謎の浮世絵師〉である。…

※「大首絵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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