大船渡市(読み)オオフナトシ

デジタル大辞泉 「大船渡市」の意味・読み・例文・類語

おおふなと‐し〔おほふなと‐〕【大船渡市】

大船渡

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本歴史地名大系 「大船渡市」の解説

大船渡市
おおふなとし

面積:一八六・四〇平方キロ

県南東部に位置し、西は陸前高田りくぜんたかた市、北は気仙けせん住田すみた町、東は釜石市・気仙郡三陸町に接し、南東は大船渡湾、南端は門之浜かどのはま湾に面する。中央部を五葉ごよう(一三四一・三メートル)に源を発するさかり川が南東流して大船渡湾に注ぎ、流域沿いに平坦部が開ける。大船渡湾に設けられた大船渡港は三陸沿岸南部の漁業基地で重要港湾、開場港の指定を受ける県内有数の工業港でもある。沿岸部には南西部の末崎まつさき町にある碁石ごいし海岸など陸中海岸国立公園南部の代表的景勝も多く、南・中部陸中海岸の基点都市ともなっている。ほぼ南北に国道四五号が通り、中心部盛町で北西へ国道一〇七号が分岐する。盛町にはJR大船渡線盛駅が設けられており、同地から東へ三陸鉄道南リアス線、北西へ岩手開発鉄道が走る。市域はかつて気仙郡に属した。

〔原始・古代〕

穏やかな大船渡湾が古くから恵まれた漁労環境を育て、盛川が形成した河岸段丘・沖積地と海岸段丘が人の居住地を提供した。北上高地系ではごくわずかである旧石器時代の遺跡の一が、末崎町碁石海岸にある碁石遺跡である。多くの敲石と台石が出土したことから石器製造跡と注目され、その時期は旧石器時代後期初頭と推定されている。縄文時代はまだ海退が進まず、現海岸線より内陸部寄りに遺跡がみられ、遺跡数の約半数が貝塚であるところに、この地方の特色がある。早期の遺跡には日頃市ひころいち町の県指定史跡関谷せきや洞窟住居跡があり、早期以降も住居として使用され、晩期の地層から人骨も出土している。前期・中期では遺跡数も増加し、赤崎あかさき蛸の浦たこのうら貝塚をはじめ、良好な貝層をもつ同町清水しず貝塚、猪川いかわ長谷堂はせんどう貝塚がある。蛸の浦貝塚・清水貝塚から人骨が出土したほか、どの貝塚からも多量の土器・石器・貝輪、釣針骨針・ペンダントなどの骨角器・牙器、自然遺物が多量に出土している。後期・晩期になると大船渡町下船渡しもふなと貝塚・赤崎町大洞おおぼら貝塚が代表的なもの。下船渡貝塚からは多量の土器と埋葬された犬骨が出土し注目された。大洞貝塚は発掘地点によって文様の異なる土器が出土し、晩期大洞式土器(B式・BC式・C1式・C2式・A式・A′式)の標式遺跡となっている。弥生時代の遺跡としては、長谷堂貝塚から沿岸部唯一の住居跡が検出され、遺物のみの出土遺跡としては下船渡貝塚・関谷洞窟住居跡・大洞貝塚などがある。古墳時代以降の遺跡は大船渡町地の森じのもり遺跡から土師器とともに蕨手刀・小玉が、猪川町殿位とのくらい遺跡から須恵器・土師器・蕨手刀が出土。

大船渡市
おおふなとし

2001年11月15日:大船渡市が気仙郡三陸町を編入
【三陸町】岩手県:気仙郡
【大船渡市】岩手県

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大船渡市」の意味・わかりやすい解説

大船渡〔市〕
おおふなと

岩手県南東部,太平洋に臨む市。五葉山を源とし,大船渡湾に注ぐ盛川(さかりがわ)流域に平坦地が開け,河口近くに市の中心市街地である盛町が広がる。1952年大船渡町,盛町の 2町と赤崎村,日頃市村猪川村,立根村,末崎村の 5村が合体し,市制施行。2001年東隣の三陸町を編入した。市名は港の意で中世以来の地名。仙台藩時代から盛七郷(さかりななごう)と称した。大船渡湾口一帯は 1953年に北上特定地域総合開発計画に基づき臨海工業モデル地区に,さらに 1959年には大船渡港が重要港湾に指定され,1万t岸壁と防波堤が完成した。後背地では石灰岩蛇紋岩を産出,セメント工場をはじめとする工業団地がある。漁業基地としても重要で,漁港,魚市場を中心に冷凍加工や缶詰の工場などが建つ。海岸一帯は三陸復興国立公園に,また北西部の住田町,北部の釜石市の境にある五葉山一帯は五葉山県立自然公園にそれぞれ属する。西部の樋口沢は,日本で初めてシルル紀ゴトランド紀ともいう)の化石が発見され,国指定天然記念物「樋口沢ゴトランド紀化石産地」として知られている。末崎半島東南端は碁石海岸と呼ばれる海岸景勝地で,国の名勝および天然記念物に指定。大船渡湾の中央に浮かぶ珊琥島は国指定名勝。小正月行事として伝わる吉浜のスネカが国の重要無形民俗文化財に指定されるほか,縄文~弥生時代の貝塚が市内に点在する。2011年,東北地方太平洋沖地震に伴う津波により大きな被害を受けた。国道45号線,107号線,397号線,JR大船渡線,三陸鉄道南リアス線が通る。面積 322.51km2(境界未定)。人口 3万4728(2020)。

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