大腸炎
だいちょうえん
colitis
大腸の炎症性疾患の総称で、多種多様の疾患を含み、いろいろな分類法がある。(1)発病期間によって急性と慢性に分けられるが、区別はかならずしも明確でない。普通、数か月に及ぶものは急性大腸炎とはよばない。急性大腸炎の多くは感染性大腸炎であり、慢性大腸炎は潰瘍(かいよう)性大腸炎やクローン病など非特異性大腸炎の場合が多い。(2)部位や広がりによって、びまん性と限局性に分ける。びまん性大腸炎は潰瘍性大腸炎、限局性大腸炎はクローン病や腸結核がそれぞれ代表例である。(3)感染の有無からは、感染性と非感染性に分ける。感染性大腸炎は細菌性赤痢、腸チフス、サルモネラ腸炎など、細菌感染による急性大腸炎がほとんどであるが、腸結核やアメーバ症などでは慢性の経過をとる。(4)病因が明確であるかどうかによっては、特異性と非特異性に分けられる。特異性大腸炎は病因の明確なものの総称で、腸結核、細菌性赤痢、サルモネラ腸炎などが含まれる。非特異性大腸炎は病因が不明で、特発性大腸炎ともよばれ、潰瘍性大腸炎やクローン病が代表例である。(5)このほか、子宮癌(がん)の放射線治療後にみられる難治性の放射線性大腸炎、抗生物質投与による菌交代現象で生ずる大腸炎、動脈硬化症や糖尿病などに併発する虚血性大腸炎、食中毒による感染性大腸炎などがある。
主症状は下痢で、腹痛や発熱を伴うことが多い。糞便(ふんべん)の細菌学的検査、大腸内視鏡検査、注腸X線検査などで診断される。
[吉田 豊]
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大腸炎
だいちょうえん
colitis
大腸カタル。大腸の炎症で,部位によって盲腸炎,虫垂炎,S状結腸炎に区別される。細菌による感染性のもの,抗生物質で起るもの,大腸の血流障害によるものなど,原因はさまざま。症状は原因により異なるが,下痢と大腸に沿った圧痛があり,索状物を体外から触知できる。小腸炎との差は,便中に粘液が混じらないで表在する点にある。
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大腸炎
病変が主に大腸にある腸炎.下痢や下腹痛を起こすことがある.アメーバ性,細菌性,虚血性のものがあり,クローン病でも起こる.
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デジタル大辞泉
「大腸炎」の意味・読み・例文・類語
だいちょう‐えん〔ダイチヤウ‐〕【大腸炎】
大腸の炎症。急性と慢性とがあり、細菌性のものは急性の場合が多い。下痢・腹痛・粘血便などの症状がある。
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だいちょう‐えん ダイチャウ‥【大腸炎】
〘名〙 大腸に起こる炎症。主症状は下痢で、腹痛を伴うことがある。
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だいちょうえん【大腸炎 colitis】
大腸の炎症。外部からの刺激作用に対する生体の応答の表現で,いろいろな病気が含まれる。病理学的には,急性・慢性カタル性(この場合を大腸カタルという),出血性,壊死性,偽膜性,化膿性などの病変がある。消化管全般にわたる炎症の部分的な現象として現れたり,また独立して大腸に現れたりする。特異性大腸炎と原因不明の非特異性大腸炎に分けられ,特異性のものとしては,細菌性赤痢,粘膜侵入性大腸菌,腸管出血性大腸菌(O‐157),カンピロバクター腸炎,大腸結核症,淋菌性直腸炎,クラミジア直腸炎,大腸放線菌症,アメーバ赤痢,日本住血吸虫症,バランチジウム症などがあり,非特異性の大腸炎としては,潰瘍性大腸炎,大腸クローン病(肉芽腫性大腸炎),非特異性(単純性)結腸潰瘍,ベーチェット病,放射線照射性大腸炎,大腸憩室炎,虚血性大腸炎,偽膜性大腸炎,抗生物質惹起性大腸炎,尿毒症性大腸炎などがある。
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