大矢透(読み)オオヤトオル

デジタル大辞泉 「大矢透」の意味・読み・例文・類語

おおや‐とおる〔おほやとほる〕【大矢透】

[1851~1928]国語学者。新潟の生まれ。片仮名万葉仮名漢字音五十音図変遷研究多く業績を残した。著「仮名遣及仮名字体沿革史料」「仮名の研究」など。

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精選版 日本国語大辞典 「大矢透」の意味・読み・例文・類語

おおや‐とおる【大矢透】

国語国文学者。文学博士。文部省国語調査委員として仮名づかい、仮名字体の歴史的変遷の研究に業績を残す。著「仮名遣及仮名字体沿革史料」「仮名の研究」「仮名源流考」「韻鏡考」など。嘉永三~昭和三年(一八五〇‐一九二八

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改訂新版 世界大百科事典 「大矢透」の意味・わかりやすい解説

大矢透 (おおやとおる)
生没年:1850-1928(嘉永3-昭和3)

国語学者。片仮名,万葉仮名,漢字音の研究にそれぞれ卓越した業績を残した。新潟の人。新潟師範卒業。1902年国語調査委員会補助委員(のちに委員)となり,片仮名が平安時代初め(8世紀後期)作り出されて後,年代的に字形が変えられて現行の字形となる経過を,年代の確実な仏典漢籍傍訓によって明らかにし,《仮名遣及仮名字体沿革史料》(1909)を刊行した。その後も片仮名の源流を求めて推古時代(7世紀初めころ)の万葉仮名の研究にいたり,その万葉仮名の字音が中国周代(前1100ころ-前256)の古音にもとづくことを看取して古代シナ音の研究に没頭し,《仮名源流考》(1911),《周代古音考及韻徴》(1914),《韻鏡考》(1924)をまとめた。また,五十音図いろは歌の研究を行い,平安時代の初めにはア行の〈衣(エ)〉[e]とヤ行の〈江(エ)〉[je]との発音区別があり,仮名も書きわけられていたことを明らかにした。《音図及手習詞歌考》(1918),《古言衣延弁証補》(1907)のほかに,奈良正倉院の古経巻の訓点を調査した記録多数があり,《仮名の研究》によって1925年学位を得た。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大矢透」の意味・わかりやすい解説

大矢透
おおやとおる
(1850―1928)

国語学者。新潟県生まれ。1876年(明治9)新潟師範学校(現、新潟大学教育学部)を卒業。1885年文部省に入り、のち国語調査委員会委員となって、とくに仮名研究に専念して諸寺の古経巻を踏査、その資料を収集した。仮名字体、仮名遣いの変遷を帰納的に研究考証し、ア行のエと、ヤ行のエが延喜(えんぎ)(901~923)以前では区別のあったこと、古代の仮名が中国周代以前の古い漢字音と一致することなどを論証、また『五十音図』『いろは歌』などの起源や成立年代にも創見を示した。これに伴う周代古音の研究や『韻鏡』の解釈などに関する著述もあり、資料に基づく考証的学風で、国語史研究ことに訓点語学に寄与した功績は大きい。

[沖森卓也 2018年10月19日]

『『国語と国文学』大槻大矢両博士記念(1928年7月号・至文堂)』

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百科事典マイペディア 「大矢透」の意味・わかりやすい解説

大矢透【おおやとおる】

国語学者。越後の人。国語調査委員会の委員として多数の国語史料を調査し,片仮名万葉仮名漢字音の歴史的研究に業績が多く,国語史研究の基礎を築いた。主著《仮名遣及仮名字体沿革史料》《周代古音考》《音図及手習詞歌考》《成実論天長点》等。
→関連項目国語学

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大矢透」の意味・わかりやすい解説

大矢透
おおやとおる

[生]嘉永3(1850).12.3. 新潟
[没]1928.3.16. 東京
国語学者。 1875年新潟師範学校卒業。国語調査委員会委員。 1916年帝国学士院恩賜賞受賞。 25年文学博士。かなづかい・かな字体や音韻の研究により,訓点語学への道を開拓。『仮名遣及仮名字体沿革史料』 (1909) ,奥村栄実 (てるざね) の『古言衣延弁 (こげんええべん) 』を補った『古言衣延弁補考』 (浄清本脱稿 07年,32年『古言衣延弁証補』として公刊) ,『仮名源流考及証本写真』 (11) ,『音図及手習詞歌考 (おんずおよびてならいしかこう) 』 (18) などの著書がある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大矢透」の解説

大矢透 おおや-とおる

1851*-1928 明治-大正時代の国語学者。
嘉永(かえい)3年12月3日生まれ。明治42年文部省国語調査委員会委員となり,仮名の歴史的変遷や上代日本語の音韻の解明などで業績をのこした。大正5年学士院恩賜賞。昭和3年3月16日死去。79歳。越後(えちご)(新潟県)出身。新潟師範卒。号は蔦廼舎(つたのや)水斎。著作に「仮名遣及仮名字体沿革史料」「韻鏡考」など。

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世界大百科事典(旧版)内の大矢透の言及

【国語学】より

…この会は,その事業の目的として,国語問題の解決をうたったのであるが,世に送った調査報告の多くは,国語問題に寄与するところがとぼしかった。その代りに,それらは,その学術的価値においてはなはだすぐれ,明治から大正初期にいたる時代の,国語学の歴史を飾る不滅の業績となっている(《音韻調査報告書》《口語法調査報告書》,大矢透《仮名源流考》,山田孝雄《平家物語につきての研究》その他)。大正の初年に,国語調査委員会が廃止されてのち,少なくとも,表面的には,国語学は衰えたが,少数の優秀な学者は,その研究をつづけた。…

※「大矢透」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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