大尉の娘(読み)タイイノムスメ(英語表記)Капитанская дочка/Kapitanskaya dochka

デジタル大辞泉 「大尉の娘」の意味・読み・例文・類語

たいいのむすめ〔タイヰのむすめ〕【大尉の娘】

原題、〈ロシアKapitanskaya dochkaプーシキン歴史小説。1836年刊。プガチョフ反乱背景に、司令官の娘マリアと士官グリニョフとの恋など、さまざまな事件を、グリニョフの手記かたちで描く。

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精選版 日本国語大辞典 「大尉の娘」の意味・読み・例文・類語

たいいのむすめ タイヰのむすめ【大尉の娘】

(原題はKapitanskaja dočka) 中編歴史小説。プーシキン作。一八三六年発表。辺境の要塞(ようさい)に赴任した少尉補グリニョフとミロノフ大尉の娘マリヤとの恋を、プガチョフの叛乱を背景に描く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「大尉の娘」の意味・わかりやすい解説

大尉の娘
たいいのむすめ
Капитанская дочка/Kapitanskaya dochka

ロシアの詩人プーシキンの完成された唯一の中編歴史小説。1836年発表。プーシキンは18世紀に起こったプガチョフの反乱(1773~75)に深い関心を抱いて熱心に研究したが、その研究の文学的成果がこの作品である。プガチョフ事件を背景に、要塞(ようさい)司令官ミロノフ大尉の娘マリヤ、士官グリニョフとシバーブリン、そして当のプガチョフらをめぐるさまざまの事件がグリニョフの手記の形で描かれる。イギリスの作家W・スコット流の歴史小説と近代的な家庭小説とがみごとに融合している。文体は簡潔かつ正確で、プーシキンの散文作品の代表作の名に恥じない。また、プガチョフを極悪人としてでなく、きわめて人間的な、多分に同情に値する人間として描いたことも特筆される。

木村彰一

『『大尉の娘』(中村白葉訳・新潮文庫/神西清訳・岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大尉の娘」の意味・わかりやすい解説

大尉の娘
たいいのむすめ
Kapitanskaya dochka

ロシアの作家 A.プーシキンの小説。 1833~36年執筆,36年発表。僻遠の地キルギスの要塞に派遣された青年士官グリニョフは,司令官ミローノフ大尉の娘マリヤと愛し合う。時あたかもロシア全土を震撼させたプガチョーフの反乱が起り,彼は捕虜となり,マリヤは孤児となるが,以前ある旅宿でうさぎの皮衣を与えたことが機縁となって,プガチョーフと奇妙に親しい間柄となる。この間の描写を通してそれまで略奪者とされてきたプガチョーフの人間味が反乱の残忍性との対比において照し出され,著者の歴史的関心の所在を示していると同時に,民衆の素朴な姿を従来の形式性を脱した現代口語で叙述することにより,リアリズム文学の開花をもたらした。

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