大学改革(読み)だいがくかいかく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大学改革」の意味・わかりやすい解説

大学改革
だいがくかいかく

日本の大学大学院のあり方を見直すために行われている改革。1987年(昭和62)9月、当時の文部省に設置された大学審議会により、1991年(平成3)大学設置基準の改正が行われ、各大学・短期大学が自らの教育理念・目的に基づきカリキュラムを自由に編成できるようになった。一般教育科目、専門教育科目などの科目区分を廃止し、学生が修得すべき最低の総単位数だけを規定したため、各大学はユニークなカリキュラムを編成し、学生の学習の充実を図っている。授業計画の作成や公表、教育の教授内容・方法の改善向上へのファカルティ・ディベロップメント教員の研究・研修)、カリキュラム・ガイダンスの充実、情報処理能力や外国語能力の向上のための授業の充実、ティーチング・アシスタント(大学院学生などが学部学生などに対して行う補助)の活用、少人数教育、ゼミナール形式の授業など、多岐にわたる教育改善の具体化がみられる。その他、単位の計算方法、授業期間などの基準の弾力化、昼夜開講制の実施、大学以外の教育施設などでの学習成果の単位認定、科目等履修生制度の導入が活発である。

 大学院に対する期待は、1980年代後半からの学術研究の進展や急速な技術革新、社会・経済の高度化、複雑化、国際化、情報化などの変化に伴いますます大きなものとなった。21世紀において、大学院に求められることは、学術研究の高度化と優れた研究者の養成機能の強化、高度専門職業人の養成機能や社会人の再学習機能の強化、教育研究を通じた国際貢献などであり、この方向での大学院改革の具体化が進行している。たとえば、昼夜開講制・夜間大学院の実施、修士課程修業年限の弾力化、大学院教員資格の改正、修士課程における研究指導委託、リフレッシュ教育の充実、大学院入学資格の弾力化、学位制度の改善、従来の教育研究組織を母体とした研究科の重点化、編制、自己点検・評価システムの充実などが図られている。

 また、学術研究に対する条件整備・財政面での支援も活発化しつつあり、科学研究費補助金の拡充、高度化推進特別経費、大学院最先端設備費の増額、卓越した研究拠点(COE)の形成を支援する経費、特別研究費制度の充実、学術情報ネットワークの高度化、学内LAN(ラン)(キャンパス情報ネットワーク)の整備、データベースの整備充実、民間などとの共同研究制度、受託研究制度、日本学術振興会の産学協力、学術国際交流、外国人研究者受け入れ体制の充実、国際共同研究や発信型の学術国際交流推進の経費などと具体化している。

 また、21世紀初頭における大学改革の中心問題の一つに、国立大学の独立行政法人化の問題があった。国立大学の教育・研究の特殊性を踏まえ、自主性、自立性を確保しつつ、世界的水準の教育・研究を展開できるようにするという観点から、組織、運営、管理など基本的内容について検討が進められ、2004年(平成16)には独立行政法人の一形態である国立大学法人に移行した。なお、大学審議会は2001年1月の省庁再編により廃止されたが、その機能は文部科学省中央教育審議会大学分科会へと引き継がれた。

[武村重和・天野正輝]

『文部省高等教育局大学教育研究会監修『大学資料』139、146号(1998、2000・文教協会)』『大学審議会答申『21世紀の大学像と今後の改革方策について――競争的環境の中で個性が輝く大学』(1998・文部省)』

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