大坂城壁書(読み)おおさかじょうかべがき

精選版 日本国語大辞典 「大坂城壁書」の意味・読み・例文・類語

おおさかじょう‐かべがき おほさかジャウ‥【大坂城壁書】

文祿四年(一五九五豊臣秀吉が公布した掟(おきて)五大老連署で大坂城内に掲示。御掟五か条、同追加九か条。武家公家社寺統制基本を定めたもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「大坂城壁書」の意味・わかりやすい解説

大坂城壁書 (おおさかじょうかべがき)

文禄4年(1595)8月3日付け徳川・宇喜多・前田・毛利・小早川諸氏連署条目並びに同追加をいう。追加の署名には上杉景勝を加えて6名とするが,この人々は後のいわゆる豊臣氏五大老に当たるから,この条目は豊臣氏五大老の署名による大名・公家・門跡統制令ということができる。そしてこの条目は,豊臣秀頼の家督継承が確定し,同年7月いわゆる五大老・五奉行並びに在京諸大名が忠誠を誓ったその翌月発布されており,秀頼による豊臣政権の基本的法令とみなすことができる。条目5ヵ条追加9ヵ条計14条のうち前者の第1条では大名間通婚の制,第2条では大名間の私的誓約の禁止を定め,そして第3条では喧嘩口論に対する措置,第4条で無実の事件を訴訟した場合の措置,第5条で乗物に対する特権付与の制を定めている。これに対し後者の追加条目では教戒的項目を含み,まず第1~2条で公家門跡の家道精励,諸社諸寺の法規順守,学問勤行精進をすすめ,第4条で蓄妾の制限,第7条で菊桐紋の使用制限,第8条で飲酒制限,第9条で覆面往来の禁止など道徳的社会的規範を定めている。そして第3条で2対1の刈分率を規定したのは,従来行われていた領主対農民間の規定を確認したものであり,第6条の直訴の制は,裁判に対する五大老・五奉行の関与について規定したものである。これらの条目並びに追加条目はいずれも豊臣政権の基本的法令とみなすべきものであるが,この精神は徳川政権の基本的法令の中に継承され,武家諸法度,禁中並公家諸法度,および社寺に対する諸法度の条項の中に摂取された。大坂城壁書の本文は,浅野家文書,由比文書などを初め,諸写本に所収されているが,それぞれ辞句や形式に多少の相違がみられる。
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旺文社日本史事典 三訂版 「大坂城壁書」の解説

大坂城壁書
おおさかじょうかべがき

1595年,豊臣秀吉の制定した法度
五大老連署で大坂城内に掲示された5条の掟。追加9条。大名・公家・寺社統制の基本法で,江戸幕府の諸法度の源流となった。

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