大同(読み)ダイドウ(英語表記)Dà tóng

デジタル大辞泉 「大同」の意味・読み・例文・類語

だい‐どう【大同】

だいたい同じであること。「小異を捨てて大同につく」
一つの目的のために多くの者が一つにまとまること。
[類語]団結大同団結結束一致合致符合吻合揃う暗合整合

だいどう【大同】[年号]

平安初期、平城へいぜい天皇嵯峨天皇の時の年号。806年5月18日~810年9月19日。

だいどう【大同】[地名]

中国山西省北部の炭鉱・工業都市。近郊に雲崗石窟うんこうせっくつがある。人口、行政区153万(2000)。タートン

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「大同」の意味・読み・例文・類語

だい‐どう【大同】

[1] 〘名〙
① だいたい同じであること。
※史記抄(1477)一〇「此に善隣国宝集を引たは、前の官務の説に合せんためなり。其内に小異もあれども大同ぞ」 〔後漢書‐董卓伝〕
② 世の中が天地の大道と同化すること。天下が平和に栄えること。また、その世。
※懐風藻(751)秋日於長王宅宴新羅客〈背奈王行文〉「嘉賓韻小雅、設席嘉大同
※集義外書(1709)三「又実に道を尊て少は行といへども、聖賢の跡のみ見て、其故をしらず、時・処・位の至善を弁へず、人情・時変に通ぜず。一流とはなるべきか、大同の基本ならず、これをなん浅とはいふべからむ」 〔礼記‐礼運〕
③ 多くの者が一つにまとまること。
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉一二「公正にして偏頗ならず、衆異を合せて大同となし」
[2]
[一] 平安時代、平城(へいぜい)・嵯峨両天皇の代の年号。延暦二五年(八〇六)五月一八日に天皇即位により改元、大同五年(八一〇)九月一九日弘仁元年となる。出典は「書経‐洪範」の「汝則従、亀従筮従、卿士従、庶民従、是之謂大同」。
[二] 中国、山西省北部の商工業都市。河北、山西両省と内モンゴル自治区を結ぶ交通の要地を占め、古来遊牧民族に対する防衛の拠点で、北辺屈指の軍事都市であった。西郊に雲崗の石窟、南西に炭田がある。タートン。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「大同」の意味・わかりやすい解説

大同 (だいどう)
Dà tóng

中国,華北地区,山西省北部の鉱工業都市。省直轄市だが雁北地区の行政機関所在地でもあり,大同県ほか6県を管轄する。人口153万(2000)。北は外長城線を境に内モンゴル自治区に接し,海河水系の永定河の上流である桑乾河(そうかんが)の支流の御河に沿う。周辺は中国有数の大炭田で,京包(北京~包頭),同蒲(大同~孟),大秦(大同~秦皇島)の3鉄路が通じる。歴史的都市でもあり,古来,北方の遊牧民族に対する防衛拠点で,軍事上の要地として知られていた。秦代平城県がおかれ,北魏の国都となったのち,唐代雲中県となり,雲州の州治があった。遼代大同県を分置,大同府の府治となり,西京がおかれた。元代雲中県を廃し,大同県に統一。元代大同路の治所,明代以降大同府治となった。この時代,モンゴルに対する防御線として,遼東,薊州などとともに九辺鎮の一つに数えられた。1949年に大同県の市街地を大同市とし,1954年大同・懐仁2県を合併して大仁県となったが,58年これを廃止,旧大同県は大同市域に編入された。ただし64年大同県は市から再び分離している。市域には炭鉱のほか,機械,化学,製薬材料,皮革等の工業が発達し,大型の火力発電所の増設が計画されている。文化財もきわめて多く,雲岡石窟は市の西16kmの武周山南麓にあり,東西1kmにわたって現存する53の洞窟内には5万をこえる仏像が残る。また観音堂,善化寺なども重要な歴史的建造物で,後者は遼・金時代の建築も残っている。
執筆者:

同市北郊にあった北魏の旧都。北魏は猗盧(いろ)の時(310-314年の代公時代)盛楽(内モンゴル自治区和林格爾)を北都,平城を南都とした。盛楽は漢の定襄郡成楽県城である。398年(天興1),拓跋珪が都を平城に定め,帝位に就いた。423年,拓跋燾(とう)が世祖太武帝となり,この時期に中国の北半を完全に平定した。439年(太延5)沮渠(そきよ)氏の北涼を攻め,その都,涼州の民を平城に移し,446年(太平真君7),長安を攻め,その技術者2000家を平城に移している。その後,献文帝は469年(皇興3)山東を征服し,同地の名望崔道固を平城の近くに住まわせた。この時,ともに移された人々のひとり蔣少游は機巧に秀で,平城および雲岡石窟などの築成に努力したと考えられる。

 北魏の平城は現在の大同市街の北寄りにあり,1939年より原田淑人によって調査された。北魏の宮垣の双闕址は土壇だけが残り,玉河に近い建築址が北魏の宮殿址であろうと推定された。ここには,砂岩の礎石があり,付近から多くの瓦当や土器が出土した。なお70年には平城と関連があると思われる北魏の遺跡が2ヵ所発見されている。東側の遺跡からは,側面に雲竜,朱雀,魚をくわえた水鳥などを浮彫にした方形の石硯が出土し,西側の遺跡からは,鍍金銅製の高足坏やササン朝ペルシア風の植物や人物をあらわした銀碗が出土した。
執筆者:

大同市内に鉱区がある。面積は約2200km2である。南東部は褶曲のため大きく湾曲し正断層が発達している。内帯部は地層の傾斜が一般に20度で断層が少ない。北西部は黄土層と玄武岩層が非常に厚く構造はいまだ明らかでない。夾炭層は石炭紀上部の太原層群,ジュラ紀中・下部の大同層群に介在し,とくに大同層群では30枚の炭層が確認され,その総炭厚は12.5~26mである。個々の炭層は互いに間隔13~20mをおいて分布し,炭厚の厚いものは5~6mに達する。炭質は歴青炭で良質の一般炭であり,埋蔵量は400億t以上といわれている。現在政府直轄の大同炭鉱をはじめ多くの地方炭鉱が稼行し,中国最大の炭田となっており,94年には国有の15炭鉱で3702万tの出炭をしている。中国は12億t(1994)の世界最大の産炭国であり,そのうち山西省で3億tを出炭している。
執筆者: 大同付近は古くより〈石炭の海〉と称せられ,北魏の時代すでに採炭されたと伝えられる。下って元,明の時代にも採炭された記録が残る。しかし現在の鉱床を本格的に採炭しはじめたのは辛亥革命後の1911年以降のことである。日中戦争以前には保晋公司が所有していた大同炭田は,戦時になって満鉄に経営が依託されていた。39年12月蒙疆連合自治政府は大同煤鉱公司法を公布し,40年1月に設立(資本金4000万円),その経営に当たらせた。同公司は蒙疆政府(出資金2000万円),満鉄(出資金1000万円),華北開発株式会社(出資金1000万円)の出資による特殊法人である。華北開発株式会社は1938年日本政府の批准をえて設立され,総裁賀屋興宣が就いた。その設立意見書には〈日中共存共栄の精神に基き,華北経済の開発を促進し,統合と調整をおこなうのを使命とする国策会社〉とあり,日本の〈国防資源〉確保のために設立されたものであった。また40年,石炭を販売する目的で蒙疆鉱産販売公司も設立された。日中戦争後,大同炭田は国民党政府に接収されたが,49年5月,人民解放軍により解放され,今日に至っている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大同」の意味・わかりやすい解説

大同
だいどう / タートン

中国、山西(さんせい)省北部の地級市。管轄下に同名の県もある。永定河(えいていが)の上流桑乾河(そうかんが)や、その支流御河(ぎょか)が黄土高原を侵食してつくる盆地(桑乾盆地、大同盆地)の北西部に位置する。4市轄区、7県を管轄する(2016年時点)。人口339万2000(2014)。市の北は万里の長城を境にして内モンゴル自治区と接する。

 モンゴル高原の遊牧民族の産する皮革、羊毛などの物産の集積地として発展し、現在も北京(ペキン)、太原(たいげん)、内モンゴルをつなぐ京包線(北京―パオトウ)、同蒲(どうほ)線(大同―華山(かざん))の交差点にあるほか、京原線(北京―原平(げんへい))も通るなど、交通の中心地である。また、大同県には2006年開港の大同雲崗(うんこう)空港がある。中華人民共和国の成立以後は山西省の石炭生産の中心地となり、全国でも有数の産出量を誇る。優良な炭質と豊富な埋蔵量が特長で、世界最大の石炭取扱量を誇る秦皇島(しんこうとう)港との間に石炭輸送鉄道の大秦線も敷かれており、石炭輸送の拠点となっている。そのほか石炭関連工業や食品工業が発展しており、山西省第二の工業都市である。

[秋山元秀・編集部 2017年10月19日]

歴史

古来、北方遊牧民族と漢民族との接触地帯にある要衝の地で、漢民族の勢力が安定しているときは、中原(ちゅうげん)や華北の地を守る最前線の拠点となったが、国内が乱れると、まず北方民族が侵入し、彼らの拠点をつくる地となった。この性格を示すように、万里の長城も大同の北を走る外長城と別に、南にもう1本、内長城(前者を辺墻(へんしょう)、後者を次墻(じしょう)とも称する)が築かれている。

 漢代には辺縁の雁門(がんもん)郡に属し平城(へいじょう)県が置かれた。しかし後漢(ごかん)末に国内が乱れると、北方民族の一つである鮮卑(せんぴ)の占拠するところとなり、晋(しん)の永嘉(えいか)年間(307~312)に鮮卑の一部族である拓跋(たくばつ)部がここに南方侵入の拠点をつくってしだいに勢力を拡大した。やがて国名を魏(ぎ)(北魏)とし、盛楽(せいらく)(現在の内モンゴル自治区ホリンゴル付近)を北都、平城を南都として華北一帯の諸部族国家を併合し、398年平城を国都(代都)と定め、他地方から多くの住民を移住させ付近の開発に努めた。以後、孝文帝が494年に洛陽(らくよう)へ都を移すまで、中国北部の政治の中心地であった。その後もしばしば南下を図る北方異民族の跳梁(ちょうりょう)する地となり、とくに北京に都が置かれた時代には西北防御の要(かなめ)であった。明(みん)代には大同五衛などの軍事施設が設けられて、大同はその中心となり、前述の二重構造の長城が築かれたのもこのころである。市街も明代に増築され強固な城壁に囲まれている。

 北魏の都であったとき、市の西、武周(ぶしゅう)山の山麓に開削された雲崗石窟(せっくつ)は、中国三大石窟の一つとして有名で、2001年世界遺産の文化遺産に登録された(世界文化遺産)。そのほか遼(りょう)・金(きん)時代の華厳宗(けごんしゅう)の中心であった華厳寺、唐代創建の善化寺、北魏時代に建てられた懸空(けんくう)寺などがある。

[秋山元秀 2017年10月19日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

普及版 字通 「大同」の読み・字形・画数・意味

【大同】だいどう

太古。平等の世。〔礼記、礼運〕大の行はるるや、天下をと爲し、賢をび能に與(くみ)し、信をじ睦を修む。故に人は獨り其の親を親とせず、獨り其の子を子とせず。~謀閉ぢて興らず、盜竊亂も作(おこ)らず。~是れを大同と謂ふ。

字通「大」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本の元号がわかる事典 「大同」の解説

だいどう【大同】

日本の元号(年号)。平安時代の806年から810年まで、平城(へいぜい)天皇、嵯峨(さが)天皇の代の元号。前元号は延暦(えんりゃく)。次元号は弘仁(こうにん)。806年(延暦25)5月18日改元。平城天皇の即位にともない行われた(代始改元)。平城天皇は桓武(かんむ)天皇の皇子で、廃太子された叔父の早良(さわら)親王(桓武の弟)に代わって皇太子となり、桓武の崩御にともない即位した。天皇は朝廷の政治・財政改革に取り組んだが、在位3年目の809年(大同4)、病気のため弟の嵯峨天皇に譲位して太上天皇(上皇)となり、旧都・平城京に移り住んだ。しかし、嵯峨天皇との対立が起こって朝廷が分裂し、翌810年(弘仁1)には薬子(くすこ)の変(平城太上天皇の変)へと発展した。

出典 講談社日本の元号がわかる事典について 情報

百科事典マイペディア 「大同」の意味・わかりやすい解説

大同【だいどう】

中国,山西省北部の都市。長城近くにあって,中国本土と内モンゴル各地との交易の中心,京包(北京〜パオトウ)・同蒲(大同〜孟【げん】)両鉄路が交差し,古来軍事・交通・経済の要地として栄えた。付近の農畜産品を集散し,特にフェルトは著名。南西に大同炭田地帯をひかえ,解放後は近代工業の発達が著しい。北魏の古都で史跡に富み,西方15kmに雲岡(うんこう)石窟がある。156万人(2014)。
→関連項目炭田

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「大同」の解説

大同
だいどう
Dàtóng

中国山西省北部にある鉱工業都市
漢代以来,平城と呼ばれた。4世紀末に北魏 (ほくぎ) の道武帝がここに都して以後,約100年間,北魏の首都となった。五代の後晋 (こうしん) の時代に燕雲 (えんうん) 十六州の1つとして遼 (りよう) の領有に帰してから金代にかけて大同県が置かれ,西京大同府と呼ばれた。元代には大同路の治所となり,明・清代に大同府となったが,明代は北辺防衛の軍事都市として発達した。雲崗の石窟寺院はその西郊にある。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大同」の解説

大同 だいどう

1731-1786 江戸時代中期の僧。
享保(きょうほう)16年生まれ。浄土真宗。僧樸にまなび,道心ふかく,その行儀は真宗律とよばれる。本願寺派の筑前(ちくぜん)(福岡県)教法寺の住職となり,筑前学派をきずく。詩文をよくし,亀井南冥(なんめい)らとまじわった。天明6年4月死去。56歳。筑前出身。号は玄澥。著作に「陳善院僧樸年譜」「玄澥余稿」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android