大前(読み)おおまえ

精選版 日本国語大辞典 「大前」の意味・読み・例文・類語

おお‐まえ おほまへ【大前】

〘名〙
① 神または天皇の前の意を尊んでいう語。御前(みまえ)。広前(ひろまえ)
書紀(720)雄略四年八月・歌謡「大和のをむらの嶽(たけ)に獣(しし)伏すと 誰かこの事 飫裒磨陛(オホマヘ)に申す」
② 射芸で、的を射る時の最初に射る人。⇔落(おち)。〔随筆・古老茶話(1741頃)〕
③ ずっと以前のこと。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)三「布初━大まへの事ぞ」
④ 江戸時代、一般の百姓小前(こまえ)というのに対して、持地の多い農民層を諏訪藩などでいう。
⑤ 資産のある家。たいけ。
※人情本・孝女二葉錦(1829)初「どんな大(オホ)めへな所へ往ても、亭主が悪いと苦労もおほし」
気前がよいこと。ごうせい
※売卜先生安楽伝授(1796)下「遊所にては大まへに銀をよう遣ふ」
⑦ 大型和船の中棚の船首部の名称。伊勢、関東、東北にかけて多く用いられる呼称。一般には四通(よとおり)、大継(おおつぎ)という。〔今西氏家舶縄墨私記(1813)〕

おお‐さき おほ‥【大前】

〘名〙 さきばらいのものが、人払いの声を長くひくこと。⇔小前(こさき)
※枕(10C終)七八左衛門の陣にまゐり給ふ上達部の前駆(さき)ども、殿上人のは短ければ、おほさき、こさきとつけて聞きさわぐ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「大前」の意味・読み・例文・類語

おお‐まえ〔おほまへ〕【大前】

神や天皇の前を敬っていう語。みまえ。
「天照大御神の―にまをさく」〈祝詞祈年祭
数人で弓を射るとき、最初に射る射手
「総射手の前に射る故―と云ふは」〈貞丈雑記一二

おお‐さき〔おほ‐〕【大前/大前駆】

先払いの声を長く引くこと。
「殿上人のは短ければ、―小前こさきとつけて聞きさわぐ」〈・七八〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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