多額納税議員(読み)たがくのうぜいぎいん

改訂新版 世界大百科事典 「多額納税議員」の意味・わかりやすい解説

多額納税議員 (たがくのうぜいぎいん)

道府県上位15人の直接国税納入者の互選によって1名選出された貴族院議員。総計45名。北海道沖縄県は第5回総選挙(1918)から施行。任期7年。被選挙資格は満30歳以上の男子。選出方法は単記記名。貴族院内ではもっとも発言力の弱い議員で,1897年に結成された多額納税議員だけの院内団体丁酉会も,勅選議員らの圧力で1904年には解散させられた。加藤高明内閣の下での貴族院令改正(1925)で三府一道と大県は2名選出となり,互選者も議員1名につき上位100人の納税者と拡大したが,院内における地位には大きな変化はなかった。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「多額納税議員」の解説

多額納税議員
たがくのうぜいぎいん

貴族院議員の構成要素の一つ。各府県を一選挙区とし,各選挙区の直接国税の多額納税者上位15人で1人を互選。被選挙資格は満30歳以上の男子で,任期7年。1890年(明治23)の第1回互選時で45人。1918年(大正7)北海道・沖縄が加わる。25年,道府県の定員人口に応じ1~2人と定めて総数66人に増加し,選挙人も議員1人当り100人に拡大した。貴族院議員の1割強を占めたが,独自の会派活動はほとんどみられなかった。

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世界大百科事典(旧版)内の多額納税議員の言及

【帝国議会】より

…また,議会の開会,閉会,停会などは天皇大権に属し,さらに特定案件の下では緊急勅令を制定し,大権事項にもとづく歳出項目について政府の同意なしに議会が廃除・削減することはできず,議会が予算案を否決した場合に,政府は前年度予算を施行できることなどが憲法に規定されており,議会独自の権能である立法権,予算審議権を大きく制約するものであった。貴族院は,皇族・華族議員と勅任議員からなるが,勅任議員は国家に勲労あり学識ある者という規準で官僚,軍人,財界人などから勅任したいわゆる勅選議員と,各府県の多額納税者上位15人から1人を互選する多額納税議員とに区分される。さらに衆議院は,当初直接国税15円以上を納付する満25歳以上の男子を有権者とする制限選挙で,それ以後,衆議院議員選挙法を2度改正して選挙資格が緩和され,1925年に男子のみの普通選挙制に移行した。…

※「多額納税議員」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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