多毛症(読み)たもうしょう(英語表記)Hirsutism

精選版 日本国語大辞典 「多毛症」の意味・読み・例文・類語

たもう‐しょう ‥シャウ【多毛症】

〘名〙 うぶ毛にまじって硬毛が多数発生する症状
美容美髪(1927)〈高橋毅一郎〉多毛症の療法「多毛症(タマウシャウ)には、人の知る通り先天性のものと後天性のものと、全身性のものと局所性のものとある」

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デジタル大辞泉 「多毛症」の意味・読み・例文・類語

たもう‐しょう〔‐シヤウ〕【多毛症】

うぶ毛が生える所に多数の硬毛を生じる状態。部分的なものと全身的なもの、先天的なものと後天的なものとがある。

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六訂版 家庭医学大全科 「多毛症」の解説

多毛症
たもうしょう
Hirsutism
(皮膚の病気)

どんな病気か

 多毛症とは、軟毛(なんもう)硬毛(こうもう)に変化することであり、毛の数が増えるわけではありません。軟毛は色が薄く、軟らかく、短く、細い毛です。硬毛は長く硬い毛で、色素を多く含んでいます。頭の毛、眉毛まつ毛、成人の陰毛・腋毛(えきもう)は硬毛です。成人男性の(ひげ)も硬毛です。多毛症では女性や小児に成人男性のような硬毛の分布がみられます。

原因は何か

 多毛症は男性ホルモンが過剰に作られたり、男性ホルモンに対する反応性が高まって発症します。女性の場合は男性ホルモンは卵巣副腎(ふくじん)でつくられるので、卵巣あるいは副腎の疾患で多毛症になります。女性の多毛症では多嚢胞性(たのうほうせい)卵巣症候群が最も多い原因です。

 薬剤により多毛になることがあります。全身投与する副腎皮質(ふくじんひしつ)ステロイド薬、免疫抑制薬のシクロスポリンなどが、全身の多毛の原因になります。ステロイド外用薬を外用すると、外用した部位が多毛になります。緑内障(りょくないしょう)治療薬であるイソプロピルウノプロストンを点眼するとまつ毛が太く、長くなります。

症状の現れ方

 女性でも、男性ホルモンが過剰な場合は口のまわりの毛が太くなり、男性の髭のようになります。胸毛、腕、大腿、下腿の毛も太い硬毛になります。陰毛は男性のようにへそに向かって硬毛が生えます。多毛以外にもにきび壮年性脱毛症月経異常、声が低くなるなどの症状が現れます。多嚢胞性卵巣症候群では、性早熟、肥満などの症状も伴っています。

検査と診断

 毛の濃さには個人差があります。多毛以外の症状の有無、薬剤内服の有無などをよく調べます。血中の男性ホルモン量の測定や染色体分析を行います。超音波断層法、CTMRIなどの画像診断法を用いて、卵巣、副腎の腫大腫瘍の有無を検査します。

治療の方法

 卵巣、副腎、下垂体(かすいたい)などに原因となる疾患がある時はその治療を行います。これらの疾患の治療を行っても多毛が残っている場合や、とくに原因となる疾患がない特発性多毛の場合は、レーザー脱毛治療を行います。

病気に気づいたらどうする

 多毛はいろいろな内分泌疾患の一症状として現れることがあります。一方、多毛の程度には大きな個人差があります。皮膚科を受診して早期に正確に診断することが大切です。

嵯峨 賢次

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「多毛症」の意味・わかりやすい解説

多毛症
たもうしょう

毛髪過多症ともいい、男性型多毛症と生毛性多毛症がある。思春期以降の男性の身体には、ひげやわきげ、陰毛のほかに、四肢、前胸部、ときには下腹部や上背部にも硬毛が生え、その程度は先天的、体質的に個人差がある。女性で顔面や腕、すねに男性のような硬毛が生える場合が男性型多毛症という。男性型多毛症の原因としては体質的なものもあるが、卵巣アンドロゲンの分泌過剰による男性化をもたらす卵巣腫瘍(しゅよう)や、無月経に伴う軽度の男性化をもたらすクッシング症候群、および副腎(ふくじん)アンドロゲンの分泌過剰による男性化をもたらす副腎性器症候群などの内分泌疾患のほか、男性ホルモンやタンパク同化ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、経口避妊薬などの注射や内服による薬剤性のものがある。生毛性多毛症は、胎生期のうぶ毛が生後も残るもので、顔や全身が長いうぶ毛で覆われる。後天的に軟毛がうぶ毛に戻る場合もあり、ときに気管支癌(がん)の合併があるので注意を要する。

[齋藤公子]

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家庭医学館 「多毛症」の解説

たもうしょう【多毛症 Hypertrichosis】

[どんな病気か]
 性ホルモンの影響を受けている毛を性毛(せいもう)といい、わき毛、陰毛(いんもう)がそうです。また、男性ホルモンのアンドロゲンは、ひげ、胸毛、前腕、下腿(かたい)の毛などの発育に影響を与えています。多毛症は、うぶ毛(軟毛(なんもう))が肥大するか、通常みられる毛(硬毛(こうもう))に変化したもので、毛の数が増加したものではありません。
[治療]
 毛を化学的に分解する除毛クリーム、フォーム、物理的に脱毛を行なう脱毛テープ、クリーム、ゼリー、多毛を目立たなくさせる脱色素剤などを使用します。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「多毛症」の意味・わかりやすい解説

多毛症
たもうしょう
hirsutism; hypertrichosis

毛髪過多症ともいう。全身性と限局性とがある。 (1) 全身性多毛症 毛の数の増加ではなく,太くなることによって多毛のような印象を与える状態をいう。先天性多毛症には先祖返りとみなされる毛人がある。後天性多毛症には,副腎や卵巣の腫瘍によるもの,ホルモン剤などの薬剤によるものがある。 (2) 限局性多毛症 生理的多毛症のほかに色素性母斑における硬毛発生,潜在性脊椎披裂における仙骨部硬毛巣,ホルモン剤外用による局所性多毛などがある。

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百科事典マイペディア 「多毛症」の意味・わかりやすい解説

多毛症【たもうしょう】

毛髪過多症とも。毳毛(ぜいもう)(うぶげ)部に硬毛が全身性または局所性に過剰発毛したもの。遺伝や内分泌疾患のほか,ホルモン剤の使用等でも起こるが,原因不明のものが多い。治療は漂白や脱毛による。

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