外来語(読み)がいらいご

精選版 日本国語大辞典 「外来語」の意味・読み・例文・類語

がいらい‐ご グヮイライ‥【外来語】

〘名〙 ある国語に、外国語から取り入れられて、本来の国語の一部として用いられるようになった語。日本では、主として室町時代以降、漢字文化圏以外の国からはいってきた語をいう。ただし、近代、現代の中国語からのもの、例えば、「一(イー)」「高粱(コーリャン)」「餃子(ギョーザ)」などは含める場合もある。なお、「オールドミス」「ナイター」など、一般に和製英語と呼ばれるもの(この辞典では「洋語」と表示)もいう。梵語(サンスクリット)の古い音訳語、例えば「涅槃(ねはん)」「阿闍梨(あじゃり)」などは漢字で書かれることもあって、普通は除かれる。
※国語のため(1895)〈上田万年〉言語学者としての新井白石「采覧異言西洋紀聞とは、外来語研究上の資料になるもので」

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デジタル大辞泉 「外来語」の意味・読み・例文・類語

がいらい‐ご〔グワイライ‐〕【外来語】

他の言語から借用し、自国語と同様に使用するようになった語。借用語日本語では、広義には漢語も含まれるが、狭義には、主として欧米諸国から入ってきた語をいう。現在では一般に片仮名で表記される。→和語漢語
[補説]外来語と外国語との区別は主観的なもので、個人によって異なることがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「外来語」の意味・わかりやすい解説

外来語
がいらいご

日本語のなかに入ってきた外国語の単語。中国語から入った漢語も本来は外来語であるが、日本では主としてヨーロッパ語から入ったものをさしていう。

[石綿敏雄]

外来語と訳語

外国語の単語を取り入れるとき、二つの方法がある。一つは、外国語の語形を日本語のなかに入れたものである。英語のinformationをインフォメーションの形で取り入れるもので、これが外来語である(カタカナで表記するものが多い)。もう一つは、外国語の意味を日本語に訳すもので、訳語とよばれる。informationの訳語は「情報」である。

[石綿敏雄]

外来語を取り入れる動機

おもなものは次の2種である。(1)新しい事物や新しい考え方を取り入れるとき。ハイウェーhighway、キャッシュ・ディスペンサーcash dispenser(銀行の現金自動支払機)などの新しい事物や、プレートテクトニクスplate tectonics(海洋底拡大説)、リサイクリングrecycling(産業廃棄物の資源再利用)のような考え方を取り入れるとき、それに伴って用語を取り入れるものである。この類には、自然科学、社会科学、服飾、スポーツなどの専門分野の用語が多い。(2)物は古くからあるが、新しい感じをもたせようとするとき。若い人をヤングyoung、豪華なことをデラックスdeluxe、家づくりをハウジングhousingというなど。明治初年に「あいびき」といったものを、昭和初年にランデブーrendez-vousと表現し、戦後デートdateに変わった。新しい感じを求めて次から次へと更新されることがある。

[石綿敏雄]

外来語の歴史

中世の末期にポルトガル語から入ったもの(キリシタンchristão、バテレンpadre、ラシャraxa、タバコtabacoなど)、江戸時代にオランダ語から入ったもの(ズックdoek、ガラスglas、ガスgas、アルコールalcoholなど)もあるが、外来語の大部分は明治以後に入っている。そのうち、ドイツ語は医学(ガーゼGaze、ノイローゼNeurose)、哲学(アウフヘーベンAufheben、ザインSein)などの分野、フランス語は服飾・美容(シュミーズchemise、ルージュrouge)、芸術(デッサンdessin、ジャンルgenre)、イタリア語は音楽(アルトalto、フィナーレfinale)などの分野に偏在する。外来語の大部分は英語からきたもので、英語系の外来語は現代の外来語の80%以上を占め、分野的にも偏りなく広く用いられている。

[石綿敏雄]

外来語と原語のずれ

外来語が日本語化するとき、原語との間にずれが生ずることが多い。発音は日本語化され、外国語での発音上の区別が失われるものがある。right(右)とlight(照明)はともにライトになる。マスコミmass communication、インフレinflationなど、語形を省略したものもある。バックネット(英語でbackstop)、デコレーションケーキ(英語でfancy cake)、プレイガイド(英語でticket agency)など、外国語にないことばをつくることもある。意味がずれることもある。家具などのカバーは日本語でも英語でも共通だが、英語で本のcoverは表紙を意味するのに対し、日本語のカバーは表紙を覆うもの(英語ではjacket, wrapper)をいう。これらのずれは外国語学習や外国語使用時に妨げとなることがある。

[石綿敏雄]

『楳垣実著『日本外来語の研究』(1963・研究社)』『あらかわ・そおべえ著『角川外来語辞典』第2版(1977・角川書店)』『吉沢典男・石綿敏雄著『外来語の語源』(1979・角川書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「外来語」の意味・わかりやすい解説

外来語 (がいらいご)

〈外〉の言語から,文化の一部として,自国語の体系内に入り込んだ単語。借用語ともいう。まだ自国語の体系内に入りきらない〈外国語〉と区別される。1984年現在の日本において,〈ラジオ〉は外来語であり,〈レイディオradio〉は外国語である。二つの言語社会が接触すると,一方が関心をもった他方のある分野から,単語が借用される。借用は必ずしも一方的ではなく,相互に行われることもある。明治維新まで続いた中国語から日本語への借用は明治維新後少なくなり,逆に中国語が日本語から借用することが多くなった(〈社会〉〈科学〉〈法律〉など)。英語と日本語の関係は,英語から日本語への一方的な借用関係のように見えるが,16世紀以降,〈bonze(坊主)〉〈shogun(将軍)〉〈mikado(帝)〉〈geisha(芸者)〉〈kamikaze(神風)〉〈nemawashi(根回し)〉など少数ながら日本語が英語の体系内に入っている。明治維新までの中国語からの借用語はふつう〈漢語〉といって外来語とはいわない。朝鮮語からの借用語(〈チョンガー〉),アイヌ語からの借用語(〈ラッコ〉)も外来語とはいわない。外来語とはふつう欧米語からの借用語で,いわば〈舶来語〉のことである。

 外来語の流入に伴って新しい音素や音節をふやすことがある。日本語の拗音(ようおん),促音,撥音(はつおん),二重母音は中国語からの借用語の影響で生じた。現代日本語では,英語の影響でti,di,tu,du;fa,fi;va,vi;siなどの音節が徐々に定着しようとしている。また,語彙の面では,類義語(〈線〉に対する〈ライン〉,〈お客様〉に対する〈ゲスト〉)や同音語(〈景気〉に対する〈ケーキcake〉)や類似表記(〈ビルヂング〉に対する〈ビルデイング〉〈ビルディング〉)を生み出す。これは,一方で,語彙を豊かにすることであり,一方で混乱させることでもある。明治維新後に,在来の漢語をまねて大量の〈和製漢語〉をつくり出したように,いまさかんに〈和製英語〉(または〈和製洋語〉)がつくられつつある(〈テーブル・スピーチ〉〈ベッドタウン〉〈バックミラー〉〈ナイター〉など)。外来語は自国語の単語と同様の扱いを受けるので,在来語との複合も外来語どうしの複合も行われる(〈テーブル掛け〉〈二段ベッド〉〈バックシャン〉など)。

 外来語は文化の一部として取り入れるので,時代と分野によって,どこの外来語が入ってくるか,どの分野の外来語が入ってくるかが左右される。16~17世紀のポルトガルとの通商によってポルトガル語が外来語として入って来て,衣食関係の語彙で今日まで定着したものが多い(〈襦袢gibão〉〈タバコtabaco〉〈パンpão〉〈かるたcarta〉など)。また17~19世紀のオランダとの貿易によって近代科学関係の語彙が入って来た(〈メスmes〉〈コンパスkompas〉〈ポンプpomp〉など)。明治維新後は,英語を主としてフランス語,ドイツ語などから入って来た。英語はあらゆる分野から流入したが,フランス語からは,軍隊関係(〈ゲートルguêtres〉),芸術関係(〈アトリエatelier〉),料理関係(〈グラタンgratin〉),服飾関係(〈ブラジャーbrassière〉)の語彙が,ドイツ語からは医療関係(〈ガーゼGaze〉),学術関係(〈アルバイトArbeit〉),登山関係(〈ピッケルPickel〉)の語彙が入って来た。戦後は,アメリカとの政治的・経済的・文化的関係から,もっぱらアメリカ英語からの借用がおびただしい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外来語」の意味・わかりやすい解説

外来語
がいらいご
loanword

外国語から借り入れられて自国語(→国語)の体系に同化し,社会的に使用が承認された単語。日本語のなかの「ラジオ」のように,本来は外国語であったと意識されるものも多いが,ポルトガル語から入った「合羽(かっぱ)」や「かるた」のように,一般には外来語と認識されないものもある。日本語における漢語は特にこの外来語意識が希薄なので,狭義には外来語から除外される。一般に,外来語は自国語の音韻体系(→音素)に収まるように変形される。たとえば,英語の strikeが「ストライキ」あるいは「ストライク」となるように,日本語に借用された外来語にはもともとなかった母音が入る。フランス語の garage[ɡarɑːʒ]は,英語に入って[ɡæridʒ]などと発音されるようになった。また「ビルディング」の「ディ」のように新しい表記法が考案され,従来その国語に存在しなかった音声が生ずることもある。文法的にも自国語の体系に合わせる工夫がなされることがあり,たとえば英語の形容詞 smartは日本に入って「スマートな」となった。また,元の意味との間に多少のずれが現れることが多い。外来語は文化の接触によって生じ,文化交流史の一つの資料となる。

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百科事典マイペディア 「外来語」の意味・わかりやすい解説

外来語【がいらいご】

自国語に取り入れられた他国語。借用語とも。原音に忠実で,その同化が社会的に承認されないものは,区別して外国語と呼ばれる。語彙(ごい)の借用がほとんどで,音韻,文法は入りにくい。政治的・文化的に優位な国からの借用が普通。日本語の場合,古くから取り入れられている漢語が量的にも最も多いが,ふつうはこれを外来語とはいわない。明治以後盛んに輸入されるようになった英語起源の語がそれに次ぎ,代表的な外来語となっている。時代と分野によってどの外国語のどの分野の語彙が入ってくるかが左右される。ほとんどが名詞として,ときに形容動詞として,ごくまれには動詞として用いられる。日本語の音韻体系によって変更を受けるが,逆に日本語の音韻体系にも影響を与え,拗音,促音,撥音,二重母音が生じた。また,現代では英語の影響で,ti,di,tu,du,fa,fi,va,vi,siなどの音節が定着しつつある。
→関連項目日本語

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世界大百科事典(旧版)内の外来語の言及

【新語】より

…新語はもっぱら名詞であり,しかも普通名詞に限られる。新しい外来語はすべて新語である。在来語の体系内に入り込めば新語でなくなる。…

【正書法】より

…aの字が[æ](例,cat),[ei](例,cake),[ɑː](例,father),[ɔ](例,want),[ɔː](例,water),[e](例,many),[ə](例,about),[i](例,orange)のように8種の母音に対応する。正書法が問題になるのは,対応関係を正す必要が,印刷,教育,マスコミ,公用文などの分野で起こるときや,外来語のつづり字の混乱を収めようというときである。言語は絶えず音声変化をしており,また外来語の流入をくいとめることはできないのだから,正書法の問題は絶えず起こるはずのものである。…

【同義語】より

…〈大きい〉と〈でっかい〉,〈非常に〉と〈とても〉などがそれだが,その関係は〈あした〉と〈明日〉,〈戦い〉と〈戦争〉のような対にも見いだされる。〈ピンポン〉と〈卓球〉,〈ラーメン〉と〈中華そば〉などでは,これらの外来語と日本語はほとんど差別がない。英語のように多くの借用語(外来語)を過去に受け入れた言語でも,同じような現象がみられる。…

※「外来語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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