夕月夜(読み)ゆうづくよ

精選版 日本国語大辞典 「夕月夜」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐づくよ ゆふ‥【夕月夜】

[1] 夕暮に出ている月。陰暦一〇日頃までの夕方の時刻に、空に出ている上弦の月。また、その月の出ている夜。ゆうづきよ。⇔暁月夜。《季・秋》
万葉(8C後)七・一〇七三「玉垂小簾の間通し一人居て見る験なき夕月夜(ゆふづくよ)かも」
源氏(1001‐14頃)藤裏葉「七日の夕つく夜影ほのかなるに池の鏡のどかに澄み渡れり」
[2]
① 夕方から出ている月は夜中に沈んでしまって、明け方は月の無い闇になるところから、「暁闇(あかときやみ)」にかかる。
※万葉(8C後)一一・二六六四「暮月夜(ゆふづくよ)暁闇の朝影に吾が身はなりぬ汝を思ひかねて」
② 夕方のほのぐらいところから、「小暗(をぐら)し」と同音を含む地名小倉」にかかる。
古今(905‐914)秋下・三一二「ゆふづくよをぐらの山に鳴く鹿の声のうちにや秋はくるらん〈紀貫之〉」
夕月が入る、沈むの意で、「入(い)る」と同音・類音を含む地名「入佐(いるさ)の山」や「入野(いりの)」にかかる。
千載(1187)夏・一六三「ゆふ月夜いるさの山の木隠れにほのかに名のるほととぎすかな〈藤原宗家〉」

ゆう‐づきよ ゆふ‥【夕月夜】

〘名〙 =ゆうづくよ(夕月夜)(一)《季・秋》
※文明本節用集(室町中)「暮月夜 ユフヅキヨ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「夕月夜」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐づくよ〔ゆふ‐〕【夕月夜】

[名]ゆうづきよ」に同じ。
[枕]
がほの暗いことから、地名の「小倉をぐら」にかかる。
「―をぐらの山に鳴く鹿の」〈古今・秋下〉
夕月は夜中に沈み、暁は闇であることから、「暁闇あかときやみ」にかかる。
「―暁闇のおほほしく見し人故に恋ひ渡るかも」〈・三〇〇三〉
月が沈む意で、「いる」と同音・類音を含む地名「入佐いるさ」「入野いりの」にかかる。
「―いるさの山の木隠れに」〈千載・夏〉

ゆう‐づきよ〔ゆふ‐〕【夕月夜】

夕方に出る月。また、その月の出ている夜。ゆうづくよ。 秋》「―島山くずをうちまとひ/たかし
[類語]月夜おぼろ月夜朧夜星月夜雪月夜宵月夜薄月夜十三夜十五夜十六夜

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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