変態設立(読み)へんたいせつりつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「変態設立」の意味・わかりやすい解説

変態設立
へんたいせつりつ

株式会社設立に際して、ある特定事項については(会社法28条)とくに定款に記載して、裁判所選任の検査役の調査(同法33条)、そして、その内容が不当なときは定款記載内容の変更が要求されるなどの特別の手続が要求されているが、このような手続による設立を変態設立という。このような手続が要求されている事項(変態設立事項)とは、会社財産を危うくし、株主・会社債権者を害するおそれが大きいもので、具体的には、設立の企画者たる発起人に会社が与える特別の利益や、会社がその成立後に財産を譲り受けることを約束した場合の契約(財産引受けという)や、発起人が設立手続のために立て替え払いをしていた費用設立費用という)の会社への求償についてや、発起人への報酬などをいう。

[永井和之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変態設立」の意味・わかりやすい解説

変態設立
へんたいせつりつ
qualifizierte Gründung

物的会社の設立において,財産的基礎を危うくするおそれのある一定の約束を伴う設立方法。この危険な約束を変態設立事項といい,株式会社では,その過大な評価により資本充実の原則に反するおそれのある現物出資財産引受けのほか,発起人が受けるべき報酬,特別利益,会社の負担に帰する設立費用を,変態設立事項として定める(会社法28)。これらは定款の相対的記載事項であり,原則として裁判所選任の検査役の調査を受けねばならず,またその報告に基づき裁判所の決定や創立総会決議によって変更されることもある(33,96条)。発起人および設立時の取締役は財産価格填補責任を負わねばならない(52条1項)。資本増加(→資本金額の増加)に際しても同様の規定がある(213条1項,286条1項)。

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百科事典マイペディア 「変態設立」の意味・わかりやすい解説

変態設立【へんたいせつりつ】

会社法28条所定の変態設立事項(発起人の報酬・特別利益,現物出資財産引受け,会社が負担する設立費用)のある会社の設立。濫用の危険が大きいため,これらは定款に記載することを要し,裁判所の選任する検査役の調査を受け,その結果裁判所・創立総会が不当であると判断した場合,その内容を変更することができる。現物出資・財産引受けの目的物の価額少額である場合,有価証券不動産である場合は調査は免除される。
→関連項目発起設立

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