壱越(読み)いちこつ

精選版 日本国語大辞典 「壱越」の意味・読み・例文・類語

いち‐こつ【壱越】

〘名〙 (「いちこつちょう(壱越調)」の略)
仮名草子・尤双紙(1632)上「ひくき物之品々〈略〉いちこつの地声、しのび寝の睦ごと」
浄瑠璃舎利(1683)二「時に俊一越(コツ)を上(あげ)、『〈略〉急々に去れ去れ』と払子を以て丁ど打(うつ)

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デジタル大辞泉 「壱越」の意味・読み・例文・類語

いち‐こつ【壱越】

日本音楽十二律の一。十二律の基音で、中国の十二律の黄鐘こうしょう洋楽のニ音にあたる。

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改訂新版 世界大百科事典 「壱越」の意味・わかりやすい解説

壱越 (いちこつ)

日本音楽の用語。十二律の基音(第1律)で,洋楽のd(ニ音)とほぼ同じ高さの音。雅楽でこの音を主音とする調子壱越調といい,六調子の一つ(りよ)に属するとされる。
十二律 →六調子
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世界大百科事典(旧版)内の壱越の言及

【五声】より

…すなわち,ニ・ホ・ト・イ・ロという音程関係を宮・商・角・徴・羽にあてはめたもので,中国の徴調の五声に相当し,同じ形が後に律の五声と呼んだものにみられる。つまり唐俗楽二十八調中,日本に伝来した調の主音は,壱越(いちこつ)(ニ),平調(ひようぢよう)(ホ),双調(そうぢよう)(ト),黄鐘(おうしき)(イ),盤渉(ばんしき)(ロ)の五つであり,壱越は唐の古律の太簇(たいそう)であるが,俗律の黄鐘(こうしよう)とも考えられたので,日本ではこれを基準音とみなし,これを宮として以下4声を順次並べて徴調の五声音程の新五声(徴・羽・宮・商・角を宮・商・角・徴・羽と呼びかえたもの)を生じた。そののち鎌倉時代の声明家の間でしばしば論争が行われたが,結局,五声を説く場合,雅楽でも声明でも(りよ)は中国理論のままの宮調型五声,は徴調型の五声を述べるのがならわしとなった。…

※「壱越」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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