壱岐(市)(読み)いき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「壱岐(市)」の意味・わかりやすい解説

壱岐(市)
いき

長崎県北部の市。九州本土と対馬(つしま)との中間に位置する壱岐島および23の属島(有人島4)からなる。2004年(平成16)壱岐郡の郷ノ浦町(ごうのうらちょう)、勝本町芦辺町(あしべちょう)、石田町が合併、市制を施行して成立。壱岐は玄武岩からなる低平な台地上の島で、平地が多い。壱岐空港から長崎空港へ空の便があり、博多(はかた)港(福岡)、唐津東港(佐賀)へはフェリーが通じる。対馬とも船の便がある。島内を国道382号が走る。原の辻遺跡(はるのつじいせき)(国指定特別史跡)、カラカミ(加良香美(からかみ))遺跡などの弥生時代の遺跡が残り、古墳が散在する。古くは壱岐国とよばれ、対馬とともに朝鮮半島と日本を結ぶ交通の要地であった。近世平戸藩に属す。廃藩置県により平戸県となり、その後、長崎県に統合された。農業は米、葉タバコ、肉用牛の生産が盛んであるほか、イチゴなどのハウス栽培が伸びている。漁業はイカ、ブリ、タイなどの一本釣りが主体である。壱岐最高峰の岳ノ辻(213メートル)からは、対馬や九州本土が望める。北側の小島である辰ノ島(たつのしま)には海食崖(がい)の蛇ヶ谷(じゃがたに)や海水浴場があり、ハイビャクシンをはじめとする砂浜植物群落は国の天然記念物に指定されている。壱岐対馬国定公園を含み、赤瀬鼻(あかせばな)、左京(さきょう)鼻の海食崖や牧崎の海食洞、鬼(おに)の足跡などの自然景観に恵まれる。勝本の湯ノ本温泉は国民保養温泉地で、壱岐唯一の温泉地である。住吉神社(芦辺)などで奉奏される壱岐神楽は国指定重要無形民俗文化財、壱岐の船競漕(ふなきょうそう)行事は勝本浦などに伝わり国選択無形民俗文化財である。石田の松永記念館は、壱岐出身の松永安左ヱ門(まつながやすざえもん)の生家跡にあり、遺品などを展示している。面積139.42平方キロメートル、人口2万4948(2020)。

[編集部]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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