壁代(読み)カベシロ

デジタル大辞泉 「壁代」の意味・読み・例文・類語

かべ‐しろ【壁代】

宮殿などで、母屋もやひさしとの間を隔てるため、壁の代わりに長押なげしから御簾みす内側に垂らす絹・綾などのとばり
壁下地かべしたじ

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精選版 日本国語大辞典 「壁代」の意味・読み・例文・類語

かべ‐しろ【壁代】

〘名〙 (壁の代わりのものの意)
① 宮殿・寺院吹放しの室内の臨時の間仕切りとして用いる、布帛または筵(むしろ)による帳(とばり)。上の長押(なげし)から下の長押まで、かけ垂らしておく。〔皇太神宮儀式帳(804)〕
※栄花(1028‐92頃)煙の後「唐綾の小文のかべしろ、絵などかきて懸けめぐらかさせ給へり」
乃嬬手(1851)上(古事類苑・居処一七)「かべくさ 壁草也。壁代といふに同じ。草をかりてやをかこみて、風をふせぐなるべし」
③ 禁中などの蹴鞠(けまり)の会で、地下(じげ)の者を参加させる方法。身分の高い者を形式的に参加させ、実際は、鞠の上手な地下に行なわせること。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「壁代」の意味・わかりやすい解説

壁代
かべしろ

公家調度で屏障具(へいしょうぐ)の一種。寝殿造母屋(もや)と廂(ひさし)の境に長押(なげし)より垂らす。表面に御簾(みす)をかけ、そのすぐ裏にかけて、人目を遮るためや寒さを防ぐ目的に用いた。冬は練った白平絹(ひらぎぬ)か白綾(しらあや)、夏は生の白平絹か白綾に朽木(くちき)型を摺(す)り、冬は練り白平絹、夏は生白平絹の裏をつける。五幅(いつの)か七幅で製し、各幅の中央に野筋(のすじ)とよぶ幅9センチメートルほどの平絹の絎(く)け紐(ひも)をつけて垂らす。これには黒一色のものと、濃紅(こきべに)と蘇芳(すおう)色の平絹を中央ではぎ合わせたものがある。『源氏物語絵巻』(「柏木(かしわぎ)」)には表地が白桜花文の綾に描き絵がなされ、緂(だん)(だんだら)の野筋を垂らした五幅の壁代が、同じく「横笛」には表地が白三重襷文(たすきもん)の綾、黒三重襷文綾の野筋をつけた壁代が描かれている。壁代を巻き上げるときは木端(こは)といって、薄い板を芯(しん)にしていっしょに巻き上げ、野筋で結ぶ。

[高田倭男]

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「壁代」の解説

かべしろ【壁代】

平安時代寝殿造り住居などで、壁の代用として御簾(みす)の内側にかけた布。絹織物を数枚縫い合わせた帳(とばり)を用いて、視線をさえぎったり寒さを防ぐために用いた。
壁土を塗るときの、細く割った竹などで作った骨組み。◇「壁下地」ともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の壁代の言及

【帳】より

…壁代(かべしろ),引帷(ひきもの),几帳(きちよう),斗帳(とちよう),軟障(ぜじよう),幌(とばり)など室内で屛障用に用いられる帷(かたびら)の総称。〈とばり〉ともよむ。…

※「壁代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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