墨染桜(読み)すみぞめざくら

精選版 日本国語大辞典 「墨染桜」の意味・読み・例文・類語

すみぞめ‐ざくら【墨染桜】

[1] 〘名〙
サトザクラの園芸品種。花は葉より早く咲き、単弁で大きく径三・五センチメートルぐらいで芳香に富む。花色はかすかに紅色を帯びた白色。花芽は緑色。観賞用に栽植される。《季・春》
※大観本謡曲墨染桜(室町末)「契り少なき花衣、墨染桜こずゑに残る」
京都市伏見区深草墨染町の墨染寺(通称、桜寺)の境内にある桜。藤原基経の死を悼んで上野峯雄(かみつけのみねお)が「深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは墨染に咲け」と詠んだところ、墨染色に咲いたという。
※平仮名古活字三巻本宝物集(1179頃)中「今にふか草のすみぞめざくらとてあり」
[2] 謡曲。三番目物。金剛流。作者未詳。古名「岑雄(みねお)」。深草院の崩御を悲しんで出家した峯雄が、深草山御陵を訪れ、院がいつもご覧になっていた桜を見て「深草の野辺の桜し心あらばこの春ばかり墨染に咲け」と詠むと、里の女が現われて「春ばかり」を「春よりは」と変えるように頼む。その夜、僧の夢に墨染桜の精が現われて舞を舞う。「古今和歌集」「遍昭集」による。

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デジタル大辞泉 「墨染桜」の意味・読み・例文・類語

すみぞめ‐ざくら【墨染桜】

桜の一品種。花は白色で単弁。
京都の伏見墨染にあったという伝説上の桜。上野岑雄かみつけのみねおの「深草の野辺の桜し心あらば今年ばかりは墨染めに咲け」という「古今集哀傷和歌にちなんだもの。

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