塩析(読み)エンセキ

デジタル大辞泉 「塩析」の意味・読み・例文・類語

えん‐せき【塩析】

主に有機質溶液に、可溶性塩類を加えて、溶けていた物質析出させること。石鹸せっけん溶液に食塩を加え、石鹸を析出させるなど。

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精選版 日本国語大辞典 「塩析」の意味・読み・例文・類語

えん‐せき【塩析】

〘名〙 ある物質の水溶液に他の無機塩類を加え、溶けていた物質を析出させること。たとえば、石鹸水に多量の食塩を加えると、石鹸が析出する。一般に、コロイド溶液に無機塩類を加えて、高分子化合物を析出させることをいう。豆腐などの製造応用

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化学辞典 第2版 「塩析」の解説

塩析
エンセキ
salting out

】親液ゾルに大量の電解質添加したとき,分散質が沈殿する現象.いったん沈殿した分散質は,電解質を除去すれば可逆的にもとのゾルに戻る.電解質には硫酸アンモニウム硫酸マグネシウムなどがしばしば用いられる.タンパク質分離精製,せっけんの製造などに利用される.【溶媒抽出において抽出系に無機塩類を添加することにより目的物の抽出率が増加する現象をいう.主としてイオン対抽出系に見られる現象であるが,たとえば硝酸ウラニルのエーテル抽出に際して,硝酸カルシウム硝酸アンモニウムなど硝酸塩の添加とともにウラン分配比が大きくなる現象が知られている.この例のように,錯形成イオンの濃度を増大する効果のほかに,塩析剤の添加は水相中の水の活量の減少,あるいは溶存化学種の活量に変化をもたらし,目的物の分配比を増加させる.このような目的には水和しやすいアルミニウム(Ⅲ)やリチウム(Ⅰ)などの塩が用いられることが多い.

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改訂新版 世界大百科事典 「塩析」の意味・わかりやすい解説

塩析 (えんせき)
salting out

ある物質の溶液に適当な塩類を加えると,その物質の溶解度が減少して析出する現象。塩類が溶けるときにはイオンが溶媒と結合(溶媒和)するために自由な溶媒の量が減少し,その結果,問題の物質の溶解度が低下するものと考えられる。この現象を応用して,たとえばタンパク質やセッケンなどを溶液中から析出させることができる。この場合,加える塩類には,前者では硫酸アンモニウム,後者では塩化ナトリウムが用いられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩析」の意味・わかりやすい解説

塩析
えんせき
salting out

ある物質の水溶液に多量の無機塩を溶解させてその物質を析出させること。たとえば、タンパク質の水溶液に硫酸アンモニウム(NH4)2SO4を加えるとタンパク質が析出し、せっけんの水溶液に多量の塩化ナトリウムNaClを加えるとせっけんが析出する。一般に、有機物の水溶液から有機物を分離する化学操作として、生化学や工業化学の分野で利用されることが多く、せっけんの製造における重要な工程になっている。

 無機塩を多量に加えると溶液のイオン強度が変化し、有機物に作用していた水和水が減少するので、有機物の溶解度が著しく低下するのが原因と考えられている。

[岩本振武]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩析」の意味・わかりやすい解説

塩析
えんせき
salting out

主として有機物の水溶液に可溶性の塩類を溶解させて,溶質を析出させること。この現象は,加えられた塩類が水分子と水和して,溶質と水和している水分子を奪い取る (脱水効果) か,あるいは溶質粒子の表面が荷電しているときは,その電荷を塩類のもつ反対電荷で中和したり (中和効果) して,溶質の溶解度を減少させることにより起る。水分子をよくひきつけて安定化している親水コロイドの場合によくみられる。石鹸水溶液に多量に食塩を溶かしこんで,石鹸を析出させたり,蛋白質の水溶液に硫酸アンモニウムを溶かして蛋白質を析出させるなど,物質の分離に利用される。 (→コロイド )

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百科事典マイペディア 「塩析」の意味・わかりやすい解説

塩析【えんせき】

ある物質の溶液に無機塩類などを加えて,溶けていた物質を析出させること。たとえばセッケン水溶液に多量の食塩を加えるとセッケンが沈殿する。セッケン,タンパク質,酵素などの分離,精製に利用される。
→関連項目カリセッケン(石鹸)透析

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栄養・生化学辞典 「塩析」の解説

塩析

 例えばタンパク質などは溶液に食塩や硫酸アンモニウムなどの電解質を加えることによって,溶解度が下がって析出してくる.この現象.セッケンも同様で,塩析することができる.

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世界大百科事典(旧版)内の塩析の言及

【コロイド】より

…これらの親水性分子コロイドが安定なのは分子表面が強く水和しているためで,多量の電解質を加え水和水を奪うことによって沈殿させることができる。これを塩析という。塩析効果はイオンの水和力の順になり,次の系列が知られている。…

※「塩析」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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