塩吹臼 (しおふきうす)
昔話。海の水の塩辛い理由を説く物語。むかし,兄弟があった。ある正月弟が兄から魚をもらって帰ってくると,途中で老人が石臼と魚を交換しようという。それは望みの品物が出る宝の石臼である。弟は宝の石臼を得て幸運を約束される。それをうらやむ兄は,石臼を奪い海上に出て,呪文を唱えて塩を出す。しかし石臼を止める呪文を知らなかったので,止まることなく塩が出て兄は石臼とともに海中に没する。石臼は今も海底で塩を吹き出すので海水は塩辛い,と語る。この昔話は,かなり古い時代にユーラシア大陸から渡来したものとされる。国際的には〈魔法の石臼The magic mill〉に該当する。しかし日本のこの昔話は,打出の小槌や瓢簞から塩が出ると語られるなど,日本の民俗と融合した姿で定着している。兄弟の一方が富を得て,他が滅びると語られるのは,昔話における“二元論”としてよくみられる型である。
執筆者:野村 敬子
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塩吹臼
しおふきうす
日本の民話。海の水がなぜ塩辛いのかという素朴な疑問を,巧みに因果応報の物語と結びつけた起源説話の一つ。貧しい弟が年越しもできず,長者の兄のところへ米を借りに行くが,欲張りな兄はばかにして追返す。その帰途,出会った老人から知恵と麦饅頭を授かった弟は,その饅頭を森の小人の石臼と交換するが,この石臼がなんでも望みのものを生み出すものであったため,一夜にして長者となる。これをねたんだ兄は石臼を盗み出し,舟に乗せて海へ出ると,こっそり甘い物を出して食べ,次に塩を欲する。ところが,それを止めるまじないを知らなかったため,塩は舟いっぱいになっても止まらず,ついに舟は沈み兄はおぼれ死ぬが,石臼は海底へ沈み,いまでも塩を吹続けているという話。話に多少の異同はあるが類話は全国に分布し,また中国,朝鮮をはじめ東ヨーロッパや北ヨーロッパの諸国でもみられる。
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塩吹臼【しおふきうす】
日本の昔話。情深い兄が思いのままの物が出てくる臼をもらう。欲深い弟がそれを奪って舟で逃げ,臼をひいて塩を出すが,止め方を知らないので塩が舟にあふれて沈没。今も海底で臼が回り続けているので海の水はからいという。類話は日本のほか朝鮮,中国,東欧,北欧にも分布。
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