塩化銅(読み)エンカドウ(英語表記)copper chloride

デジタル大辞泉 「塩化銅」の意味・読み・例文・類語

えんか‐どう〔エンクワ‐〕【塩化銅】

塩化銅(Ⅰ)。硫酸銅(Ⅱ)と塩化ナトリウムの混合水溶液二酸化硫黄などを作用させて還元して作る、無色の結晶。水・エタノールに溶けにくい。化学試薬に使用。化学式CuCl 塩化第一銅。
塩化銅(Ⅱ)。銅片を王水に溶かし真空中で加熱脱水して作る、黄色の吸湿性結晶。消毒剤や木材の保存剤に使用。化学式CuCl2 塩化第二銅。

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精選版 日本国語大辞典 「塩化銅」の意味・読み・例文・類語

えんか‐どう エンクヮ‥【塩化銅】

〘名〙 塩素と銅の化合物
① 塩化銅(I)。塩化第一銅。化学式 CuCl 無色の結晶。空気中で容易に酸化され、緑色になる。有毒。殺虫剤、触媒、一酸化炭素の分析用吸収剤などに用いられる。
② 塩化銅(II)。塩化第二銅。化学式 CuCl2 吸湿性のある黄褐色の結晶。銅粉を塩素中で加熱すると得られる。有毒。触媒、媒染剤、木材の防腐剤などに用いる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化銅」の意味・わかりやすい解説

塩化銅
えんかどう
copper chloride

銅と塩素の化合物。1価および2価の化合物が知られている。

(1)塩化銅(Ⅰ)(塩化第一銅) 硫酸銅(Ⅱ)水溶液に塩化ナトリウムを加え、二酸化硫黄(いおう)を通じて沈殿させる。無色の結晶。空気中では酸化されやすく、緑色となる。水、エタノール(エチルアルコール)に難溶。塩酸中では一酸化炭素を吸収してCuCl・CO・H2Oをつくる。濃塩酸、濃アンモニア水には溶ける。殺虫剤、化学試薬などとして用いられる。有毒。

(2)塩化銅(Ⅱ)(塩化第二銅) 無水和物と二水和物CuCl2・2H2Oが普通である。無水和物は銅粉を塩素中で熱するか、二水和物を塩化水素気流中で加熱脱水して得られる。無水和物は褐黄色結晶。熱すると993℃で分解して塩素と塩化銅(Ⅰ)となる。吸湿性が著しく、水によく溶ける。水溶液は濃いと褐色、薄いと緑色。水溶液からは二、三、四水和物などの結晶が得られる。炭酸銅(Ⅱ)を塩酸に溶かした溶液からも二、三、四水和物が得られる。二水和物は緑色の結晶。密度2.39。湿った空気中では潮解する。エタノール、アセトンピリジンなどにも溶ける。熱すると110℃で水を失うが、同時に分解する。アニリン染料酸化剤家畜伝染病に対する消毒剤などに用いられる。

[中原勝儼]

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改訂新版 世界大百科事典 「塩化銅」の意味・わかりやすい解説

塩化銅 (えんかどう)
copper chloride

塩化銅(Ⅰ)と塩化銅(Ⅱ)とがある。

化学式CuCl。白色固体,融点422℃,沸点1366℃。塩化銅(Ⅱ)の水溶液に還元剤(二酸化硫黄,金属銅,ヒドロキシルアミン等)を作用させると沈殿する。結晶構造はセン亜鉛鉱型で,銅と塩素のイオンが互いに四面体型にとり囲んでいる。気相では環状三量体Cu3Cl3および四量体Cu4Cl4を生成する。二量体の存在が推定されたこともあるが,明確な証拠はない。水にはほとんど溶けず,塩酸,アンモニア水にはそれぞれ[CuCl2]⁻,[Cu(NH32]⁺の錯イオンを生成して溶ける。塩酸溶液は一酸化炭素,アセチレンを吸収する。アセチレンとは[CuCl(C2H2)]を生成するが,これはアセチレンをビニルアセチレン,塩化ビニル,アクリロニトリルに変化させる触媒として作用する。塩化銅(I)はまたアミン類,シアン化アルキル等の有機溶媒にも溶ける。酸化されやすいが,酸素のない,乾燥した状態では長期間安定に保存できる。有毒。用途としては,銅フタロシアニンブルー,農薬の原料,塩素化触媒などがある。

化学式CuCl2。褐色固体,融点633℃。比重3.054。結晶構造は塩化カドミウム型に似ているが,Cuに配位している6個のClのうち,同一平面上にある4個のCu-Cl原子間距離が2.30Åであるのに対して,それに垂直方向にある2個のCu-Cl原子間距離が2.90Åと長くなっている点が異なる。水,アルコール類によく溶ける。溶解度44g/100g飽和溶液(25℃),50g/100mlエチルアルコール(20℃)。アセトンは塩化銅(Ⅰ)に還元する。濃厚水溶液は褐色だが,うすめると緑から淡青色となる。触媒および媒染剤に用いられる。

 2水塩CuCl2・2H2Oは,塩化銅(Ⅱ)の水溶液を濃縮して得られる青緑色の結晶である。これはエチルアルコール,アセトン,酢酸エチル等によく溶ける。110℃に加熱すると結晶水を失い無水物となる。
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化学辞典 第2版 「塩化銅」の解説

塩化銅
エンカドウ
copper chloride

】塩化銅(Ⅰ):CuCl(99.00).塩化銅(Ⅱ)塩酸水溶液に金属銅を加え,加熱すると得られる.白色の粉末.せん亜鉛鉱型構造.融点422 ℃,沸点1366 ℃.密度4.14 g cm-3.水に難溶.濃アンモニア水,濃塩酸にそれぞれ錯イオン [Cu(NH3)2],[CuCl2] を生じて溶ける.塩化銅(Ⅰ)の塩酸水溶液は一酸化炭素ガスをよく吸収するので,その定量に用いられる.農薬原料,塩素化触媒として用いられる.有毒.[CAS 7758-89-6]【】塩化銅(Ⅱ):CuCl2(134.45).無水物は銅を塩素中で加熱すると得られる.黄褐色の吸湿性の結晶.融点498 ℃.993 ℃ で分解し塩化銅(Ⅰ)となる.水,エタノール,メタノールに易溶.二水和物は水酸化銅(Ⅱ)または炭酸銅(Ⅱ)と塩酸の反応生成物を濃縮すると析出する.青緑色の結晶.密度2.39 g cm-3.媒染剤,銅の精錬,銅触媒の製造,プリント基板のエッチング液などに用いられる.[CAS 7447-39-4:CuCl2][CAS 10125-13-0:CuCl2・2H2O]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化銅」の意味・わかりやすい解説

塩化銅
えんかどう
copper chloride

(1) 塩化銅 (I) ,塩化第一銅  CuCl 。天然にはナントカイトとして産出する。無色結晶質の粉末ないし立方体の結晶。湿った空気中では緑変し,特に光にさらすと青ないし褐色に変る。水,アルコール,アセトンに難溶,濃塩酸,濃アンモニア水には錯イオン [CuCl2]- または [Cu(NH3)2]+ となって溶ける。融点 430℃。有機反応の触媒,殺虫剤の製造に,その他石油工業で脱色,脱硫剤,実験室で一酸化炭素の吸収剤としてガス分析に使われる。 (2) 塩化銅 (II) ,塩化第二銅  CuCl2 。黄ないし褐色の潮解性微結晶質粉末。水,アルコール,アセトン,酢酸エチルなどに可溶。融点は 620℃。空気中では,CuCl2・2H2O になる。触媒,石油精製の脱臭,脱硫剤,染色における媒染剤,アニリン系色素の酸化剤などに用いられるほか,鉱石からの水銀の回収,メッキ,写真,ガラス着色用顔料,木材防腐剤,消毒剤などに広く利用される。

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