塩化白金(読み)えんかはっきん(英語表記)platinum chloride

改訂新版 世界大百科事典 「塩化白金」の意味・わかりやすい解説

塩化白金 (えんかはっきん)
platinum chloride

白金(Ⅱ)塩と白金(Ⅳ)塩とがよく知られている。

化学式PtCl2。緑褐色粉末。熱すると白金と塩素に分解する。水に溶けないが,塩酸には主としてテトラクロロ白金(Ⅱ)酸H2[PtCl4]を生成して溶ける。溶液アンモニアを加えるとテトラアンミン錯塩[Pt(NH34]Cl2となって沈殿を生ずる。

化学式PtCl4。無水和物のほかに5水和物などの水和物が知られている。無水和物は赤褐色結晶で,潮解性があり空気中で水分を吸収して5水和物(黄色)になる。水,アセトンに溶けるがエチルアルコールに溶けにくい。水溶液はH2[PtCl4OH2]が生成するために酸性を示す。塩酸に溶けてヘキサクロロ白金(Ⅳ)酸H2[PtCl6]を生成する。

塩化白金(Ⅱ)はH2[PtCl6]・6H2Oを空気を通しながら熱して分解させ,塩化白金(Ⅳ)は同じ6水和物を塩素ガスを通しながら熱して分解させて得る。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化白金」の意味・わかりやすい解説

塩化白金
えんかはっきん
platinum chloride

白金と塩素の化合物。酸化数ⅡおよびⅣの化合物と、ⅡとⅣとが共存する化合物が知られている。

(1)塩化白金(Ⅱ)(塩化第一白金) 白金海綿を塩素中で435℃から581℃にわたって加熱すると得られる。灰緑色固体。塩化白金(Ⅳ)を350℃以上に加熱しても得られるが、これは結晶形が異なっている。塩酸と温めると溶け、テトラクロロ白金(Ⅱ)酸H2PtCl4になる。このとき一部は不均化をおこしヘキサクロロ白金(Ⅳ)酸H2PtCl6と白金を生ずる。

(2)塩化白金(Ⅳ)(塩化第二白金) ヘキサクロロ白金(Ⅳ)酸六水和物を塩素中で300℃に加熱すると得られる。赤褐色の扁平な結晶で、空気中で徐々に水分を吸収して水和物となり、しだいに変質する。水溶液は水素によって還元される。エタノール(エチルアルコール)、アセトンにも溶ける。なお、塩化白金酸のことを塩化白金ということもある。

[鳥居泰男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「塩化白金」の解説

塩化白金
エンカハッキン
platinum chloride

】塩化白金(Ⅱ):PtCl2(265.99).二塩化白金ともいう.白金海綿を塩素と反応させると得られる.密度5.87 g cm-3.緑色を帯びた固体で水に溶けず,加熱すると白金と塩素に解離する.塩酸にテトラクロロ白金(Ⅱ)酸となって溶ける.白金(Ⅱ)塩の製造に用いられる.[CAS 10025-65-7]【】塩化白金(Ⅳ):PtCl4(336.89).四塩化白金ともいう.無水物は赤褐色の結晶で,空気中では水を吸収して一水和物,五水和物となる.無水物は密度4.03 g cm-3.260 ℃ まで安定である.水,エタノール,アセトンに可溶.塩酸に溶けてヘキサクロロ白金酸を生じる.分析試薬,炭化水素の改質触媒,白金(Ⅳ)塩,塩化白金酸塩白金触媒の製造などに用いられる.[CAS 37773-49-2:PtCl4][CAS 13454-96-1:PtCl4・5H2O]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化白金」の意味・わかりやすい解説

塩化白金
えんかはっきん
platinum chloride

(1) 塩化白金 (II) ,塩化第一白金  PtCl2 。塩化白金 (IV) に 400℃で塩素を反応させると生成する。灰緑色ないし暗緑色の粉末。水,アルコール,エーテルに不溶,塩酸に可溶。 (2) 塩化白金 (IV) ,塩化第二白金  PtCl4白金を王水に溶かし,塩酸と水とで交互に蒸発乾固して得られる。無水塩は赤褐色あるいは褐色の扁平な結晶で,水,アルコール,アセトンに易溶,エーテルに不溶。含水塩は1,4,5,7,8水和物が知られている。このうち,最も普通には5水塩で,その構造は H2[Pt(OH)2Cl4]・3H2O 。

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