塩化マンガン(読み)えんかまんがん(英語表記)manganese chloride

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化マンガン」の意味・わかりやすい解説

塩化マンガン
えんかまんがん
manganese chloride

マンガン塩素化合物。酸化数Ⅱ、Ⅲの化合物が普通に知られている。

(1)塩化マンガン(Ⅱ)(二塩化マンガン) 無水塩は、金属と塩素の反応や、金属、酸化物、炭酸塩に塩化水素を作用させて得られる。潮解性の淡赤色結晶。水100グラムに77.2グラム溶ける(25℃)。エタノールに溶ける。水溶液から淡赤色の四水和物MnCl2・4H2Oの結晶が得られる。四水和物は赤色結晶。比重2.01。水100グラムに256グラム溶ける(30℃)。エタノールに溶ける。四水和物は、塩素化の触媒ペンキ印刷インキ乾燥剤顔料、電池用二酸化マンガン原料などに用いられる。二価マンガンには種々のクロロ錯体(MnCl3-、MnCl42-、MnCl64-など)が知られている。

(2)塩化マンガン(Ⅲ)MnCl3は酢酸マンガン(Ⅲ)に-100℃で塩化水素を反応させて得られる黒色粉末で熱的に不安定。零下45℃を超えると分解する。塩化マンガン(Ⅱ)の濃塩酸溶液に塩素を通して得られる褐色溶液には三価マンガンのクロロ錯体(MnCl52-など)が含まれている。

[守永健一・中原勝儼]

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化学辞典 第2版 「塩化マンガン」の解説

塩化マンガン
エンカマンガン
manganese chloride

】塩化マンガン(Ⅱ):MnCl2(125.84).二塩化マンガンともいう.熱した金属マンガン,酸化マンガン(Ⅱ),炭酸マンガン(Ⅱ)などに塩化水素ガスを作用させて得られる.薄桃色の結晶(六方晶系).密度2.98 g cm-3.融点650 ℃,沸点1190 ℃.常磁性が強く,磁化率χ = 110.95×10-6 e.m.u..水に易溶,エタノールに可溶,エーテルに不溶.水溶液を58 ℃ 以下で濃縮すると四水和物が得られる.四水和物は薄桃色の結晶(単斜晶系)で,α形(安定),β形(不安定)の2変態がある.水に易溶,エタノールに可溶,エーテルに不溶.塩素化触媒,顔料,塗料染料,印刷インキの乾燥剤,フラックス,パッチテスト試薬などに用いられる.[CAS 7773-01-5:MnCl2][CAS 13446-34-9:MnCl2・4H2O]【】塩化マンガン(Ⅲ)および塩化マンガン(Ⅳ)は,いずれも二酸化マンガン塩化水素を低温のエーテル中で反応させて得られるが,不安定である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化マンガン」の意味・わかりやすい解説

塩化マンガン
えんかマンガン
manganese chloride

酸化数 2,3,4の化合物があるが,おもに塩化マンガン(II)MnCl2をさし,一般には二塩化マンガンという。無水物ほかに 2,4,6水和物が知られている。2水和物はやや潮解性のばら赤色の結晶。4水和物もばら赤色の結晶であるが,6水和物はほとんど無色の結晶である。無水和物,4水和物は水,アルコールに可溶。4水和物は染色,顔料,電池用二酸化マンガンの原料,亜麻仁油を使うペンキや印刷用インキの乾燥剤,有機物塩素化の触媒などに使われる。

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